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第50話

ギルドに行くことを決めてから、ギルドまでは特に問題もなく、たどり着いた。

もっとも、このぐらいの距離で問題があったら、これから採取に向かう先までは、

どんだけ波乱万丈の旅になってしまうことやら……


何はともあれ、セオリー通り、依頼掲示板に向かう。


姉弟はともかく、マリアもセオリーを覚えていてちょっとホッとしたのは内緒だ。


さて、依頼掲示板だが――――


うん、やっぱり幾つか光っている依頼があるな。


えーと、あそこが一番光が強いようだ。

どれどれ、どんな依頼だ―――


幸い、移動しなくても見えるとこにある。


あれっ、何か紙が複数重なっているな。

何でだ?


まあ、いい。

とりあえず一番上の紙を読んでみよう。



「 どうかお願いします。


  『融合剤』各色3本ずつの18本セット 単品不可 

   品質B以上などと無理はいいません。C……いや、DでもEでもいいです。

   でも、なるべくいい品質でお願いします。

   

  同一人物が錬成した18本セットのみ(すみません、どうしてもこれだけは譲れないのです)

                :大銀貨25枚


  期限がマジでヤバイです。

  期限前に納品してくれれば、最終期限から計算して1日毎に、大銀貨1枚を報酬に上乗せさせていただきます。

  もう生意気な事は言いません。

  どうか、どうか宜しくお願い致します。


  私を助けて下さい。

 

 期限:5の月3日まで


 依頼人:ナーリ・ア・ガーリ準男爵  」



何だこりゃ。


依頼としては、もの凄く美味しいが、

一体、何があったんだ。


もしかして、下の紙と何か関係があるのだろうか?


「マリア、その目の前の、紙が重ねてある依頼の下の紙の依頼がどうなっているか気になるので、

 ちょっとめくってみてくれないか?」


「えっ、紙が重なっている―――

 あっ、これね。

 ええ~!

 これメチャクチャ美味しい依頼じゃない!!

 『センセー』ってば、あっという間に、いい依頼を見つけるの得意だよね~」


「それは、とりあえず置いておいて。

 ちょっと、下の紙に何が書いてあるのか気になる。

 早くめくってみてくれ」


「そうだね~、私も気になるわ。

 一番下から見てみよう」


そういって、依頼の紙をマリアがめくる。

そこには――――


「 持って来い!


  『融合剤』各色3本ずつの18本セット 単品不可 品質はB以上に限る

   

  同一人物が錬成した18本セットのみ :大銀貨5枚 もあれば庶民には十分であろう


  可及的速やかに持参するがよい。

  3の月より前に持ってくれば、この準男爵である我より、

  直々に感謝の言葉をくれてやろう。

 

 期限:最終期限は5の月3日までであるが、そんなには待てんぞ


 依頼人:ナーリ・ア・ガーリ準男爵  」



何だこりゃ。


開いた口が塞がらん。

メガネ(オレ)に口はないけどな。


「なあ、マリア、この依頼人の名前は、

 ナーリ・ア・ガーリ準男爵

 と書いてあるように見えるが、

 これはスラングで 馬鹿 という意味か?

 或いは 愚か者 という意味だろうか?」


「いや、言いたい事はわからなくもないけど、

 そんな意味はないよ『センセー』」


「だって、品質B以上の『融合剤』だぞ!

 1本だって大銀貨5枚で渡すやつなんかいないぞ!

 それを18本って、正気を疑うぞ」


「その辺を誰かに指摘されたから、2枚目に依頼を変えたんじゃないの?

 まあ、次を読んで見ようよ『センセー』」


「そうだな」


「じゃあ、2枚目ね」


「そう面と向かって言われると、わかってはいても照れるな」


「………………」


「………………」


「………………」


「…………ヲレが悪かった」


「解ればいいわ。

 確かにレンズは2枚だけどね。

 メガネが二枚目かどうかは、解らないわ」


「……もう、勘弁してください」


オレがそう言うと、マリアが下から2枚目の紙を見られるようにする。


どれどれ。

 

「 とっとと、持って来い!


  『融合剤』各色3本ずつの18本セット 単品不可 品質はC以上で勘弁してやる

   

  同一人物が錬成した18本セットのみ :大銀貨10枚 払ってやろう


  品質を下げてやった上に、報酬まで倍にしてやったんだ、

  速やかに、持ってくるがよい。

  もう3の月になってしまっている。急げ!

 

 期限:最終期限は5の月3日までであるが、3の月の内に持って来なさい


 依頼人:ナーリ・ア・ガーリ準男爵  」



「………………」


「………………」


「なあ、マリア。

 やっぱり

 ナーリ・ア・ガーリ

 と書いて、大馬鹿者 とか 愚者 という意味があるんじゃないか?」


「……無い…筈よ。

 ちょっと自信がなくなってきたけど…」


「いや、ひょっとすると、俺達は新しい言葉の誕生の瞬間に立ち会っているのかもしれないな。

 例えば、

 何だ、お前はこんな問題も解らないのか、この大馬鹿者(ナーリ・ア・ガーリ)

 ってな感じで、今後は使う事になるんだよ」


「…完全に否定することができないのが、何かちょっと悔しい……かも?」


「まあ、いい。

 最後の1枚を読んで見るとしよう」


「そうね」


というと、マリアが上から2番目の紙を見えるようにする。



「 求む!


  『融合剤』各色3本ずつの18本セット 単品不可 品質はDが入っても良い

   

  同一人物が錬成した18本セットのみ :大銀貨15枚 


  少々の品質の悪さは目を瞑る、

  もう4の月が近づいている。

  急いでくれ!

   

 期限:最終期限は5の月3日まで


 依頼人:ナーリ・ア・ガーリ準男爵  」



「ちょっとはましになったか?」


「そうね、最初からこの依頼なら、有り…かなぁ?」


「微妙なところだけど、まあ許容範囲内ではあるな。

 ただ、前2つの依頼を見ていると、正直受ける気が失せるな」


「そうよね、私も同感。

 でも、何で前の依頼が貼ったままなんだろう?

 普通、依頼を更新する時は、前の依頼を剥がして新しく貼るものよね?」


「そうだと思うが、俺にはわからん。

 依頼を受けるついでに聞いてみろ」


「…そうね。

 多分、これより好条件は無いと思うけれど、

 他もちょっと見てみて、依頼を受けることにするわ」


「そうだな、それがいい」


「………」



――――結局、それ以上の好条件の依頼は無かったので、俺達はこの依頼を受けることにした。


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