第4話
俺は今、思いっきり泣いている10歳の女の子の前で、全裸で佇んでいる。
いや、スマホを取り出す必要はないぞ。
ましてや 1・1・ とボタンをタッチし始めるとか…
時報でも聞くつもりか?
白と黒のパンダカラーの車?
おいおい、彼らも忙しいんだから、いたずら電話はダメだぞ。
俺は変態でもなければ、犯罪者でもない。
……多分。
少なくとも、今回の件には無関係だ。
女の子が泣いているのは死んでしまった父親を思い出しての事だし、
全裸でいても逮捕されたりしない。
何故なら、
今、俺は『メガネ』だから。
いや、再びスマホを取り出さなくていいから。
1・1・9 って、何処かで火事でもあったのか?
えっ、いい精神病院を知っている?
そうか、お前ってば情報通なんだな。
でも、俺は精神病院に幼児…もとい用事はないぞ。
――はっ、あまりのショックについつい『脳内友達』との会話に逃避してしまっていた。
最近では、ペットに服を着せることも珍しくないらしいが、
流石に、メガネに服を着せるような奇特な人はいない……いないよね。
つまり、現在進行形でメガネである俺は『マッ裸』である。
いや、『裸』であることを強調したい訳ではなく『服を着ていない』でも語弊があるな…
ようするに「ポケットに入れておいた装置が無いのだ」と言いたいのである。
服がなければ、当然ポケットもない。
俺は有袋類ではないからな。
そのポケットに入っていた装置も当然ない。
そもそも、俺の元の身体はどうなっているんだ?
う~ん、また謎が増えてしまった。
いや、それも元の世界に戻れば解決する…筈だ。
つまり、元の世界に戻りさえすれば全て解決……と思いこもう。
よ~し、現状確認。
元の世界に戻れば問題は全て解決する(筈…)
元の世界に戻る装置は用意してあったが、現状手元に存在しない。
よって今すぐに元の世界に戻るのは不可能。
……絶望的状況だな。
俺が常人だったら、今頃現実逃避するために『脳内友達』とお茶会でも始めるところだったろう。
しかし、俺は臨機応変な男 (あれ、なんかデジャヴュ?)
俺の数少ない友達にもよく言われていた。
「お前って、困難に直面すると思いもよらない解決方法を思いつくよな」
そう俺はまさかの事態にも対応できる、機転の利く男。
(あれ、ますますデジャヴュ? でも、この流れは何か悪い流れのような…)
昔、偉い人が言った
「パンがなければケーキ…」――じゃなくて
「必要こそが発明の母である」 (父は何なのだろう?)
そう、無ければ作ればいいのである。
幸い部品等はこのゲームの世界でも手に入れることができる。
ちょっと調達が厄介かもしれないが、な~に何処に行けば手に入るかは全て解っている。
赤子の手を捻るより簡単だ。
――って今のヲレ
「赤子の手すら捻れないじゃん!」
俺の数少ない友達もよ~く言っていた。
「でもって、その解決方法が実行不可能なことばっかりなんだよな」
そう、ヲレは役に立たないヲトコ…デス。