第46話
「あと調べていないのは、この部屋だけだよ姉さん」
「せやな、でも他の所を見た感じ、侵入者がいた形跡や、争った形跡は無かった。
とりま、一安心やな」
「そうだね。でも、ちょっと気になるんだよね」
「何が?」
「部屋を見回して気にならないの、姉さんは?
あきらかに部屋が散らかされている。
まるで、泥棒が金目の物がないかそこら中を手当たり次第に探したかのように…」
「そう言われれば、そやな」
「……いや、言われなくてもわかるよね、普通。
少なくとも、僕らが昨日帰るときには、こんなに散らかっていなかった。
何かあった可能性は捨てきれないよ」
「何にせよ、この扉を開けてみな、しゃ~ないなぁ」
「そうだね、姉さん慎重にね」
「わ~ってるって―――――あかん!」
「どうしたの?姉さん?
また、扉が開かないの?」
「う~ん。扉が開かんのはその通りなんやけど、
そもそも、開け方がわからん!」
「??どういうこと?」
「言うた通りや
この扉どうやって開けたらええのん?」
「鍵がかかっていて開かないのかな?」
「いや、そうやなくて……
言うより見たほうがはやい、見てみぃ」
「そうだね、見てみるよ」
「どや?」
「う~ん。わからないなぁ~。
確かに鍵がかかっているようだけど、鍵穴もないし……
どういう仕組みなんだろう?
…………
だめだ、解らない。
僕の手には負えないよ」
「そっか。でも、そないな扉っちゅうんなら、
中は大丈夫と考えてええんちゃうか?」
「そうだね、絶対とは言えないけれど、生半可な人物ではこの扉を開けられないと思うよ。
二人(?)が中にいたのなら、例えここまで何者かが侵入したとしても、無事なんじゃないかな」
「つまり、この中に侵入者がいる可能性は限りなくゼロに近いっちゅうこっちゃな
ほな、普通に声をかければええな?」
「いいんじゃないかな。
でも、け
「警戒は怠るな!やろ?」
「………そういうこと」
という会話はずっとこちらに聞こえていた。
って所で、こっち(部屋の中)で、
「『センセー』準備できたわよ!」
この部屋の奥にあるトイレと水道(例の『どこでも蛇口』だ)で準備を終えたマリアが戻ってきた。
昨晩から本日未明にかけて、準備した諸々も一緒に用意し、すでにいつでも出発できるようになっている。
「マリア~!『ベルメさん』!おるか~!
ウチや~!カレンや!
無事か~?!」
そこに、カレンの声が聞こえてくる。
「あれっ、カレン!?
もう来てたの?
うそっ!
ごめ~ん!
もう準備できたから、すぐ行くよ!」
返事をしながら、俺に近づき、俺を手に取り、
「もうっ!カレン達が既に来ているなら、それをちゃんと伝えておいてよね!
『センセー』ってば、必要の無い事はいっぱい言うくせに、
大事なことは、いっつも言わないんだから」
と俺に文句を言いながら、俺をかける。
いつの間にやら、その仕草がもの凄く自然になっている。
正直、色々と反論したいのは山々だが、とりあえず黙っておいた。
なにせ、この後、カレンとレオンに散々叱られるだろうからな。
―――ちなみに、この後、
部屋から出てきた、マリア(プラス俺)が無事だったことを喜ぶ2人に、
マリアが事情を説明すると、それから約10分ほど説教タイムになった。
何・故・か、俺まで一緒に説教されてしまった。
理不尽だ!
納得いかない!
俺は悪くないよね?
ね?