第44話
途方に暮れるオレであったが、
ここである事に気がつく。
「あれ、何で姉弟の声が聞こえるんだ?」
最初のカレンの声は、こちらに届かせようと大きめの声であったので聞こえてもおかしくない………かもしれない。
しかし、その後の姉弟の会話は、玄関の扉、更にこの部屋の扉を超えて聞こえるような音量で話す会話ではない筈。
それなのに、はっきりと会話の内容が聞き取れた。
もしかして、インターホン的な何かがあるのだろうか?
魔改造されている、この家ならもしかしてあるのかもしれない。
「お~い、カレン!レオン!
俺の声がきこえるか~?」
ものは試しだ、こちらから声をかけてみる。
「う~ん、全然返事がないなぁ~」
「もしかして、まだ寝ているのかもしれないよ。姉さん」
「せやけど、マリアだけならともかく、『ベルメさん』は睡眠が必要ないんやろ?」
「あ~、そういえばそうだったね」
………どうやら、こっちの声は届いていない様だ。
そして、何故か向こうからの声はこちらに届くと。
少しだけ、この家の事がわかったが、現状の問題解決には何の役にも立たない事もわかった。
「裏口か何かから、入れんかな?」
「そうだね、ちょっと家の周りをみて、どっかから中に入れないか探してみようか?」
おっ、それは好都合。
いいぞ、お前ら。
普通なら、あまり褒められた行為ではないが、今だけは褒めてやる。
無駄だとは思うが、一応試してみてくれ。
「じゃあ、僕は、こっち側から見て回るから、姉さんは、あっち側をお願い」
「オッケーや」
そして、マツコと――もとい、待つ事数分後。
「あ~、こっちは全然あかんかった。
そっちはどやった?」
「う~ん、こっちもダメだったよ。
っていうか、今まで全く気にもしていなかったけれど、
この家って、玄関以外からは侵入しづらい、
というか、侵入できない造りになっているみたいだね」
「ふ~ん、あんたがそう言うんなら、そうなんやろうな」
ほぉ~、見る人が見ればすぐにわかるもんなんだな。
やっぱり玄関以外からの侵入は無理か。
「こうなったら、しゃ~ない。
あの手を使うか?」
「えっ、でも…」
「考えてみぃ、確かにマリアが寝坊している可能性はある。
せやけど、睡眠の必要がない『ベルメさん』が寝坊している可能性はものごっつぅ~低い。
ましてや、玄関先でこれだけ五月蠅くしているのに、『ベルメさん』からの返事がないのはおかしないか?」
「うっ、言われて見れば確かに」
「せやろ。
せやから、ここは緊急事態っつぅ~ことで、
あの手や」
「………しょうがないね。
気は進まないけど………やるよ」
おおっ、その手があったか。
それならば、この部屋まで入れるかはともかく、
家の中には入れるだろう。
その設定をすっかり忘れていたよ。
少し間が空いて、道具を取り出す、ガサガサという音が聞こえた。
玄関のドアの向こうの、こんな小さな音が聞こえるということは、
やっぱり、外の音をこちらに届ける装置?があるんだろうな。
「…じゃあ、…やるよ、姉さん」
「頼んだで、大丈夫や、これは悪いことやあらへん。
人助けや」
「……わかったよ。……ありがとう、姉さん」
そして、何やらカチャカチャいう音が聞こえてきたと思ったら、
突然、
物凄い音量で、
サイレン?警告音が鳴り出した。
何なんだこれは?