第43話
翌日の朝にして、採取に出発予定の朝。
あれから、準備に色々とあったが、どうにか無事(?)おわり、
こうして採取に出かける朝を、むかえる事ができた。
……………のは、いいのだが、
「…す~ぅ、す~ぴぃ~、すぅ~、すぴぃ~」
と寝息を立てる10歳の女の子をどうすればいいのでしょうか?
誰か教えてくれないだろうか?
うん、「YES,ロリータ、NO,タッチ」ですぞと
変態紳士の諸兄からの声が聞こえてきそうだが、
安心してくれ、この身体ではタッチは出来ない。
もっとも、その気はないがな。
その気は、全く無いからな。
無いと言ったらないんだい!!
大事な事だから3度も言ってしまった。
とりあえず、酷いイビキをかいていたり、歯軋りの音が不快である、
とかはなくてよかったのかもしれないが、それはマリアにとっては(ヒロイン的な意味で)救いなのかもしれないが、
俺には一ミリの救いにもなっていない。
どうせなら、定番の「もう、食べられない~ 」的な台詞でも言ってくれれば、
それはそれでおいしいのだが、寝言を言う気配は全くない。
(色々な意味で)困った奴だ。
えっ、起こせばいいだろうって?
逆に訊こう!
どうやって起こせというのだ?
メガネに何ができるというのだ?
大声を出せばいいだろうって?
そんなのは、既に試している。
全く起きる気配もない。
メガネを掛けているなら、声もより届きやすいのだろうが、
寝るときにメガネをかける人は、いないとは言わないが、少数派であろう。
そして、マリアも寝るときにはメガネを外している。
ほら手詰まりだ。
メガネには手が無いけどな。
って言っている、場合ではないな。
う~ん、どうするか。
よし決めた、あの手でいこう。
作戦名『あきらめる』を実行。
―――姉弟が迎えに来るのを、待つ事にした………
そして、作戦を実行して20分ぐらい経過しただろうか、
遂に作戦が動き出した。
いや、マリアは相変わらず熟睡中だ。
つまりは、姉弟がやって来たのだ。
「マリア~、『ベルメさん』、きたでぇ~!」
カレンの声が聞こえてきた。
しかし、ここに至り、俺はこの作戦の致命的ミスに気付いた。
姉弟がやってくるのは、ある意味作戦(?)通り。
そして、その2人に、マリアを起こしてもらえばいいだけ。
イージーなミッションだ。
そんな風に考えていた、20分程前の自分を殴ってやりたい。
二重の意味で不可能だけどな。
考えてみれば当たり前の事だ。
ある意味当たり前すぎて、すっかり失念していた。
「あれ、返事があらへんな?
まぁ、中に入ってしまってかまへんよな?
っていうか入るでぇ~」
「そうだね、中で待たせて貰おう」
普通、玄関には鍵をかけるという事を。
「あれ、あかん」
「何があかんの?、姉さん?」
「いや、な、ドアが、開かんねん」
「どれ、どれって、普通に鍵がかかってるね」
「今日の予定は、ウチらが、宿を引き払って、マリア『ベルメさん』と合流。
ほんで、ギルドに寄って依頼を見つくろって、採取に出発で間違ってへんよな?」
「そうだね、ぼ――私もそう聞いているから間違いないと思うよ」
「ほな、なんであかんの?」
「いや、ぼ――私に言われても………」
そして、姉弟に合鍵を渡す理由が………別に無いよね。
実際、合鍵など渡していないし。
要するに、姉弟には、この家に入る手段が無いのだ。
そして、家に入らなければ、マリアを起こす事ができない。
つまり、ミッション失敗確定だ。
さて、どうするか………