第41話
「うぉっほん。――ともかくだ、今日の分の買い取りをすませてしまおう」
「あ~『ベルメさん』あからさまに話題をそらしたぁ~
結局あの3人何者やったん?」
「知りたいのか?」
「そら、やっぱり気になるやん」
「世の中には知らない方が幸せな事が多々ある。
そして、一度知ってしまったら、今後は知らなかったでは済まなくなる。
知るということは、今後あの3人に関わる事になる。
もう一度聞く。
よく考えて返答しろよ。
あの3人が何者か知・り・た・い・か?」
「っう、そこまで言われるとちょっと怖なってきた。
レオンどうする?」
「って、そこでぼ――私にふる?
個人的には、正直関わりたくないタイプかなぁ」
「そか、レオンがそこまで言うならしゃ~ない。
ウチはホント―は聞きたくて、聞きたくて、しょうがないんやけど、
レオンがそこまで言うなら諦めるわ」
あっ、こいつレオンの所為にする気だな。
よ~し。
「では、カレンだけに教える事にしようか?」
「えっ!いやそれは困る…やなくてぇ~
そう、ウチとレオンは一心同体やから、
ウチだけ知るっていうのは、ほら、アレや」
おっ、慌ててる慌ててる。
よし、もうちょっといってみるか
「ちょっと『センセー』カレンをからかってないで、
こっちに集中してよ!
自分で買い取りをすませようと言いだしたんだから。
それに、私だって明日からの準備をしなければならないんだから!」
「おおっ。そうだったな。
いや~、カレンの反応が面白かったもんだから」
「まったく。『センセー』ってば。
それはそうと、今日は少なめなのね?」
「ええ。『メガネさん』から明日からは採取に出かけるから、
少なめでと言われていたので…
その分他の依頼を多めに受けさせてもらいました。
もっとも、その所為でこんなに遅くなってしまいましたけれど…」
「って、もう査定も済まして、お金の用意までしてあるじゃないか。
これだけの量なら、その金額で妥当だろう。
別に俺が見る必要なかったじゃん。
レオンもこの金額で問題ないだろう?」
「ええ。もちろん。
むしろ、こっちが貰いすぎな気もしますが…」
恐縮しながらも、しっかりとお金を受け取るレオン。
「そっちも、こっちも納得している金額なんだから、問題ないっしょ。
ねぇ『センセー』?」
「そうだな」
「せや、せや、依頼主様に逆らったらあかんで、レオン」
「……、まったく、姉さんは…」
「そんなことより、明日からの準備はできているのか2人共?
明日からの、採取の護衛は日帰りではないから、野営の準備、
ある程度は現地調達できるが、食料の準備など、することはいっぱいあるぞ」
「わかってるってば、『ベルメさん』
ほ~んと、おかんみたいやわ~」
「だれが、お棺か?
まだ死んでいないから、棺は必要ないわ!
それに、
「「「メガネに棺は必要ない」」」
くそっ、こいつら本当に息が合って来たな。
俺の決め台詞(?)がすっかり奪われてしまったぜ。
「べっ、別に、悔しくなんかないんだからね!」
「「「はい、はい」」」
ホント―に、意気投合しやがって。
べっ、別に疎外感とか感じているんじゃないんだからね…………
うむ、ツンデレなメガネ(メガネキャラに非ず)―――どこにも需要はないな、
万が一需要があるようなら、以下のアドレスまで毒電波を送ってくれ。
「 」
尚、アドレスはSAN値が残っている人には読めないのであしからず。
あっ、そこのお兄さん、反転しても無駄だからやめときな。
億が一、俺が受信できたら、変身――じゃなくて返信を試みてやる。
閑話休題
「あと、解っていると思うが、宿屋は今日の宿泊で明日からは引き払う事を伝えておけよ。
無駄な宿代を払う事はない。
万が一預かって欲しい荷物があるようなら、ここに置いていってもかまわない」
「あっ、そうか、しばらくはこっちに帰ってこないんだから―――
危なかったよ、忘れる所だった。
ありがとうございます『メガネさん』」
「なんや、そんなことにも気づいとらんかったかいな?
まだまだやな~」
「そう言う姉さんは気付いていたっていうの?」
「…あ、当たり前やぁ。気付いとぅたでぇ~」
「じゃあ、何で言ってくれなかったんだよ!」
「そ、それは……、あんたがいつ気付くか試しとったんよ」
「あ~ぁ、もう、姉弟でじゃれ合うんなら、外でやってもらえますぅ~。
私も明日からの準備で忙しいんでぇ~」
終わりの見えない姉弟のやり取りに、あきれたマリアが口をはさむ。
「「じゃれ合ってへん!」ません!」
うん、言葉は若干違うけれど、息はぴったりだ。
「マリアの言うとおりだ。
今日はいつもより帰りが遅くなっているんだから、
とっとと、依頼の達成報告をすませて、明日の準備に取り掛かれ!
明日の出発は早いぞ。
遅刻するなよ!」
「はい、はい、わかりました。
ほ~んま、おかんみたいやで『ベルメさん』」
「『はい』は3回だ!」
「えっ、そこは、『はい』は1回だ! って言う所ちゃうん?」
「そんな普通な事言って、楽しいか?」
「いや、『メガネさん』楽しいかどうかの問題じゃ……」
「せやな、流石は『ベルメさん』や。
そや、そや。
楽しいかどうかは重要やでぇ~」
「そうね、カレン。
さっき、私が何て言ったかを思い出してもらえると、私も楽しい気持ちになれると思うのだけれど…
ねぇ『セ・ン・セー』?」
メガネからはマリアの表情は窺えないが、カレンの焦った表情と、マリアの口調から推測はできる。
これはヤバイやつだ。
「ほら、レオンぐずぐずしとらんと、早い所ギルドにいくで。
てきぱき行動せなあかんで、ほんま」
あっ、危険を察知してカレンが逃げを打ちやがった。
相変わらず、危険には敏感だなコイツ。
「ほな、マリア、『ベルメさん』また明日な」
って、もう出て行った。
本当に逃げ足は速いな。
さて、俺はどうするかが問題だ………