第37話
「お~~~ほっ、ほっ、ほっ、ほ!
偉大な『錬金術師』とはいえ、所詮平民。
粗末な馬小屋です事。
さあ、早く母屋に案内しなさい、セバスチャン」
入ってくるなり、いきなりタカ笑い。
そしてこのセリフ。
典型的なお嬢様キャラ。
金髪、縦ロール、高そうなドレス、片手に羽根の扇子、みんな想像できたかな?
そして年齢は、確かマリアと同じだから10歳。
そして、これまた典型的な老執事。
想像できるね?
そう、2人ともその想像した外見で正解だ。
「アンジェラお嬢様、ここが母屋でございます。
平民とはこのような狭い家に住む習性があります」
さらっと、毒を吐くね、この老執事。
「な、何と、この粗末な建物が母屋だと言うのか。
妾の家の玄関よりも狭いではないか?
こんなに狭くては、ベッドも置けないではないか
平民はいったいどのようにして眠るのか?」
そうだねぇ~、あなたが使っている、天蓋付きのキングサイズのベットは置けないねぇ~。
「それはですね、お嬢「ちょっと!いきなり人の家に来て、狭いだの、汚いだの何なのあなたたち!!」
あっ、マリアがキレた。
でもな、マリア「汚い」とは一言も言ってなかったぞ。
思ってはいただろうけど…
「あら、ちゃんと下女がいるのね。
そこな下女、くるしゅうない、『錬金術師』エルドレッドを呼んでくるがよい」
マリアの怒りもどこ吹く風。
マリアを下女と決めつけて、声をかける金髪縦ロール。
「ほれ、そこの下女。
お嬢様がこのように申しておる。
さっさと、エルドレッド様をよんでくるがよい」
おっ、執事の方はちゃんと様をつけるんだな、あの父親に。
「お父様ならいません」
先程の怒りは何処へいったやら、
静かに、淡々とと語るマリア。
いや、こっちの方が怖いよ、マジで。
「なんと、留守でございましたか。
どうしましょうか、お嬢様?」
「まあ、約束はしていませんでしたし、
少しの時間であれば、待ってあげても宜しくてよ」
「お嬢様は、貴重な時間を割いて、帰宅を待ってあげてもよいと仰せだ。
して、エルドレッド様は何時頃御戻りの予定か?」
「そうね、そちらのお嬢様が、あなたの年齢になるまで待っても、
お父様が帰ってくる事はないわ」
「それは、いったい「ちょっと~ぉ、いつまでこの私を待たせるつもりザマスか?」
と玄関からまた一人入ってくる。
派手な化粧に、派手な服。俺には臭いは解らないが、きっと香水の匂いもするのではなかろうか。
ウォータービジネスのおねーさんって感じ……
おねーさんって言うよりはおばさ…
ギロッ!
視線だけで人を殺せるなら、かるく5人は殺せるような、物凄い目力で睨まれた。
その視線をもろに受けたマリアが、2歩ほど後ろにさがる。
よく2歩で堪えたもんだ、と思ったら、後ろは壁だった…
「エルドレッドは何処ザマスか?
このイーブリンがわざわざ挨拶に来てあげたのだから、とっとと出てくるザマス」
「えっ、イーブリンって、あの『ポイズン』の二つ名を持つ『錬金術師』のイーブリン様ですか?」
「あらっ、私の二つ名まで知っているとは、感心なお嬢さんザマス。
特別にサインを差し上げてもいいザマスよ」
「いえ、サインは結構ですが…
父が、あのイーブリン様と知り合いだとは知りませんでした」
「あら、いいザマスか?
子供が遠慮するものではないザマスよ。
って、父?
申し訳ないザマスが、あなたの父などは知らないザマスよ?」
「えっ、でもさっき「エルドレッド」って――父の名を呼びましよね?」
「げげ~~ぇ~~!!
………ではなくて、あなたが、エルドレッドの、娘だ、ということザマスか?」
ちょっと素がでてたぞ、『ポイズン』(笑)
「はい、そうですが……」
「こっ、こっ、子供がいるなんて聞いてないわよ~~~!!!」
突然、叫びだすおば………もといイーブリン。
どうでもいいが、語尾のザマスが無くなっているぞ、イーブリン。
そして、折角の初登場なのに、すっかりイーブリンに持っていかれているぞ、
金髪縦ロールと老執事。
そして、一言も喋っていないぞ俺。
ある意味メガネとしては正しいけどな。