第2話
「私の名前はマリア。今日10歳になったレディよ。
ちょっと、あなた胸を見ていたでしょう。
そこはあと5年もすれば凄いことになるんだから。
母さんはグラマーだったと父が言っていたから、私もきっとボンッ、キュッ、ボンッになる……予定よ。
え~と、何の話だったかしら、
そう自己紹介よ、大事なことをまだ話していなかったじゃない。
『錬金術師のたまご』よ。
あれ、な~んだただの『たまご』かよといった反応ね。
この年齢で『錬金術師のたまご』に認定されるのは凄い事なのよ。
そもそも、『錬金術師のたまご』になれるだけでも凄いことなのに、それすらも解らない訳?
じゃあ、これを伝えてもきっと驚かないのでしょうね。
私のお父さんは『錬金術師』なんだから。
………やっぱり、どれくらい凄いことなのか分かっていないようね。
あっ、間違えた。『錬金術師』……だった が正しい…わ…ね。
お…父さん…は、お父さんは、昨日…死んで…しまった…の…だから…」
ずっと黙って話を聞いていたのだが、
俺にとって聞き逃す訳にはいかない衝撃発言をした直後、
父親の死を思い出したのか、女の子―マリアは泣き出してしまった。
無理もないだろう、たった10歳にして、唯一の家族を失ったのだから。
むしろ、今までよく気丈に振舞っていたものだ。
そして、一点だけ俺の名誉の為に言っておきたい。
10歳の子供の胸などは見ていない。
机の上に置かれたメガネ(念の為言っておくが俺のことだ)の正面が偶々、マリアの胸の正面にあるだけだ。
ギルティ?
さて、話は少し前に遡る。
アニメならば、ホワン・ワン・ワンと言った効果音が鳴るとこだろうか、
漫画ならば欄外がベタで黒に塗られる感じで脳内補完よろ。
そう、俺がメガネになってしまったと気が付き、叫んでしまった時に戻る。
俺叫ぶ。
女の子、再びやってくる。
俺、女の子に見つかる。 以上
よし、3行に纏まった。
って、3行に纏めてどうすんだよ、俺。
すまん、やっぱ少し動揺しているようだ。
ともかく、最初の呟きとは違い、最後の叫び声はしっかり聞こえてしまったらしく、
少し前と同様に警戒しながら入って来た女の子は、まっすぐ俺に近づいてきた。
まあ、俺も最後の悪あがきで、普通のメガネのフリをして黙っていたのだが…
「正体を現さないならば、このメガネ 潰すよ」
という女の子の言葉に屈した。
そして、まずは自己紹介から始めようという女の子の提案にのり、
彼女の自己紹介を聞いていた。
正直、自己紹介など聞かなくても『このキャラ』の事は知っていたので、
聞くとはなしに聞き逃しつつ、自分のことをどう説明しようかを考えていた。
その所為か、はじめて聴く人なら驚きをもって聞く事実に反応を示さなかったため、マリアはやや不満だったようだが、最後の最後に、とんでもない発言で驚かされた。
いや、マリアが突然泣き出した事に驚いていたことも否定はしない。
泣き出した女の子をどう扱っていいか、彼女いない歴=年齢 の童T げっふ、げふん
とにかく、どうしたらいいのか解らない。
もっとも解ったところで、メガネの俺には何も出来んのだが…
それはともかく、衝撃の一言だった。
俺は『この世界』を誰よりも知っている。
なにせ『このゲーム』をやり尽くしたからな。
だらか言える。
「マリアが10歳(ゲームスタート)の時に父親が死ぬイベントは存在しない」