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第28話

ギルドを出て、市場で買い物をし、あとは帰るだけとなった時のことだった。


「マリアよ、そんなに買って大丈夫か?」


「…大丈夫よ、…これだけ買っても、…大銀貨1枚、…だったもの」


「いや、お金の心配ではなくてな…」


「…じゃあ、…何、…よ」


「一気に買いすぎじゃないか?持ち切れないだろう?」

 

「…ちゃんと、…持って、…いる、…でしょう」


「返事するのが大変なら、答えなくてもいいから。

 俺がこんな体(メガネ)じゃなかったら、荷物を持ってやれるんだが…」


くそっ、なんて不便なんだこのメガネの体。


「…大丈夫、…って、…言って、…いるで、…しょう」


ダメだ。これは何を言っても逆効果だ。

むしろ、返事をしなければならないだけ、余計に負担になっている。


幸い、市場からマリアの家までは5分もあれば……今のマリアでも10分もあれば着くだろう。

ここは、無言で見守っていてやろう。


「んっ、何だあれは」


やば、黙っていようと思った矢先にこれだよ。


「…『センセー』、…どうした、…の?あれ?」


ああ、俺が声を出さなければ、マリアは気づいていなかったのに…、

今更誤魔化したりは――ー無理だな。

諦めよう。


「…『センセー』、…あれって、…大変!」


荷物をその場に置いて、駆け出すマリア。

やっぱりこうなるよな、マリアの性格からして。

倒れている人間を見たらほっとけないよな…


マリアが近づいてみると、倒れているのは2人だった。

しかも、まだ子供(この世界では成人かもしれないが)のようだ。

あれ、この髪の色、2人、もしかして…


「大丈夫ですか?どうしました?」


マリアの問いかけに、ピクリと反応する2人。

どうやら返事のないしかばねではないようだ。


「……、は、は・ら・が……」


「えっ、何ですって?ははらが?」


再びのマリアの問いに、倒れていた人物が返事をするより先に


「ぐ、ぐぅ~~~~う~~~」


――ーと、物凄く大きな音が。

お腹から鳴った。


瞬時にして、倒れていた原因が判明した。

言葉はいらない。

言葉より雄弁に語っていた。

我、空腹ナリと。


マリアは2人に背を向けて、離れて行く。

よし、飽きれて、帰る……なんて俺が望む展開はありえない。


なぜなら、マリアの視線は、今しがた市場で買ってきた、食べ物がいっぱいの荷物にロックオンしているから。

メガネの俺の視線は、マリアの視線と重なるから、マリアが今何をみているかが解る。

たまに便利なんだな、このメガネの体。


そして、あちこちに視線が移動した結果、『リンゴ』に定まった。

マリアは『リンゴ』を2個手に取ると、すぐ2人の元に戻る。


そして、2人にその『リンゴ』を差し出す。


2人がマリアを見る。

そこには、瓜二つの顔が並んでいる。


……やっぱり、こいつらだったか。


顔はそっくりだったが、その後の行動は、正反対だった。


向かって右側にいる髪の長い姉は、ひったくるようにマリアの手から『リンゴ』を奪い、かぶりつく。


左側の髪の短い弟は、すぐにでも食べたいだろうに、グッと我慢して、マリアの方をジッと見ている。


「食べて」


マリアが、やさしく声をかけると、一度頭を下げて、『リンゴ』を手に取り、かぶりつく。


過程は違ったが、食べ方はそっくりである。

正直、全国のちびっこ達には真似をして欲しくない喰らい方である。


流石は双子・・だな。


「なぁ、アンタ、もっとあらへん?」


あっと言う間に『リンゴ』を食べきった――あれっ、リンゴの芯はどうした?

って芯まで食ってるよこの双子―――カレンがマリアに問いかける。


マリアが返事をするよりも先に


「姉さん。それよりも先に言う事があるだろう。

 お嬢さん、ありがとう」


レオンが姉を諫めて、マリアにお礼を言う。


「何言ってんの、お前は。

 今、真っ先にすることは食料の確保よ!

 もう5日も何も食べていなかったんだから。

 お礼なんて、その後でいいのよ!」


そんな弟に、正論なんだか暴論なんだかよく解らん言葉をぶつける姉。


再び弟が姉に何かを言うより早く、マリアが割り込んだ。


「ちょっと、あなたたち、5日も何も食べていなかったの?」


「そうなんよ、だから、アンタもっと何かくれへん?」


「だから、姉さんそんな言い方は…」


「何で、それを先に言わないの!!」


再び言い争いを始めようとした姉弟をマリアが一喝する。


あまりのマリアの剣幕に、言葉を失い、口を開けたままポカーンとマリアを見る2人。

流石は双子、シンクロしている。


じゃなくて、どうしたんだ、何でマリアは怒りだしたんだろう。


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