表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/57

第27話

何度も言っているが、現在マリアはメガネをかけている。

なので、マリアの表情を窺う事はできない。


だが、今俺は、マリアの目が¥になっている事がわかる。

なぜなら、手にした大銀貨5枚をじっと見つめて、身動き一つしないから。

さらに、「ぐひひ」と表現できる笑い声が聞こえるからな。


これが少年漫画ならば、この瞬間にヒロインからドロップアウト確実である。

もっとも、俺にとってのヒロインは最初からマリアじゃないからな。

俺の中の評価はさほど変わっていない。


あ~、早くルナたんに逢いたい。

いや、この姿メガネで逢っても意味がないからな。

まずは、身体からだを取り戻してからだ。

…駄洒落じゃないからね。


さて、そろそろマリアをこっちの世界に呼び戻すとするか。


「マリア」


「…ぐひっ、ぐひひ」


「マリア!」


「ぐひひ」


「マ・リ・ア~~!!!」


「っひぃ。

 ってなによ、急に大声出して!

 周りの人が変に思うじゃないの!」


やっと、俺の声に気付きやがった。


「大丈夫だ。私が声を出す前から、変な眼で見られていた。

 お金を見つめて、不気味な笑いをしている不審者をな」


「ちょっ、ちょっと、女の子に対して不気味って表現はどうかと思うけど」


「そうだな、お金を見つめて「ぐひひ」と笑う女の子もどうかと思うけど」


「……しかたないでしょう。こんな大金、手にしたの初めてなんだから」


「そう思うなら、誰かに取られたりしないように、大事にしまっておけ」


「そうね。そうするわ」


そう言って素直にお金をしまう。


「これで、家賃の大銀貨1枚を除いても、大銀貨が4枚もあるわ。

 これなら、ちゃんとした生活ができそうね。

 じゃあ、さっそく買い物に行きましょう『センセー』」


「…それでも構わんが、さっきの説明はいいのか?」


「ん?さっきの説明?……そうよ、お金に換えたら説明してくれる約束だったわね」


絶~対忘れてましたよね、完璧に。

まあ、追求してもしらばっくれるだろうから、触れずにいてあげよう。


「なぜ、依頼では、高く買い取るのか?

 だったな」


「そう。そう」


「一つには、急ぎで欲しいから、という理由がある。

 だが、『融合剤』は在庫がなくなることが稀であるから、

 『融合剤』以外のモノの場合にのみ当てはまるかな」


「うん。つまり今回はその理由ではないって事ね」


「そうだな。

 そして、今回は『融合剤』ならではの理由になる」


「『融合剤』ならでは?」


「ある程度のレベル以上の錬金術では『融合剤』が欠かせない事は知っているな?」


「ええ。お父さんも常に『融合剤』のストックは欠かさなかったわ」


「では、さらに高レベルになると『融合剤』を複数同時に使う事は知っているか?」


「えっ、『融合剤』は例え同じ色でも、混ぜてはいけないって、教わったけれど……」


「そうだな、『融合剤』を混ぜるのは危険が伴うので、『錬金術師のたまご』を卒業するまでは禁止されている。

 だが、ある程度以上のレベルになると必要になる」


「へぇ~、全然知らなかったわ。

 でも、私がそれを知ってしまってもいいの?」


「そうだな、6種類全ての『融合剤』の錬成に成功したので、知ってもいいだろう。

 むしろ、知っておくべきだな」


「っていうことは、私ってば『錬金術師のたまご』を卒業した?」


「あと3日ぐらい『融合剤』を錬成したらな」


そうすれば、錬金術レベルが2になるから、卒業としてもいいだろう。


「へへ、そっか、立派な『錬金術師』にまた一歩近づいたのね」


マリアの表情は例によって見えないが、声のトーンだけで、嬉しい気持ちが伝わってくる。

だが、


「喜んでいる所、水を差すようで悪いのだが、説明を続けてもいいだろうか?」


「ああ、そうよ、説明の途中だったわね」


「『融合剤』を複数使う際に、『融合剤』の錬成をした者が影響してくる。

 同一人物が錬成した『融合剤』を使うと、成功率が上がる。

 また、造った物の品質が高くなり易い……と言われている」


「それで、今回の依頼では、同一人物が錬成した『融合剤』を高く買い取るとしていたのね。

 でも、同一人物が錬成した『融合剤』ってどうやって見分けるの?」


「良い質問だ。

 そこで『鑑定』スキルが必要になる。

 『鑑定』スキルがあると製作者の名前を見る事ができるようになるのだ」


「へ~え、『鑑定』スキルってそんな事もできるのね。

 そうか、だからさっきのマリアが錬成した『融合剤』だって解ったのね」


「まあ、窓口は必ず『鑑定』スキル持ちが担当するからな。

 さて、とっとと買い物を済ませて、『融合剤』の錬成をしてしまうぞ」


「うへぇ~え、また『融合剤』の錬成なの?」


「それが嫌なら、とっとと『C』ランク以上の『融合剤』を錬成することだな」


「むむ。今に見ていなさいよ」


こうして我々はギルドをあとにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ