第22話
この場を凌ぐだけではダメなんだよな。
生きていくためには、食べる必要がある訳だから、今後ずっとお金は必要になる。
立派な『錬金術師』になるためには………
って既に『錬金術師のたまご』なんだから、たまごらしく稼げばいいじゃないか。
「マリアよ、我々はここ数日何をやって来た?」
「何って、『センセー』に言われてひたすら『融合剤』を錬成していたじゃない、私は」
何か引っかかる言い方だが、まあいい。
「で、『錬金術師のたまご』って奴はどうやって生活しているんだ?」
「そんなの決まっているじゃない。錬成した『融合剤』を売っ――そうか!『融合剤』を売ればいいんだ!」
やっと気づいたか。
まぁ、俺もついさっき思い出したから人の事を言えない。
「そういう事だ。マリアが錬成した『融合剤』を全て売ってしまおう」
「えっ、全部売っちゃうの?」
「何か問題あるか?」
「あるわよ。『融合剤』を使った錬成をする時に困るじゃない」
「ぶふっう。あはははは、わっはっはっ――(中略)―ーあまり笑わせるな、腹が捩れるかと思ったぞ」
「…『センセー』お腹なんか無いじゃない! それにそんなに笑うこと?」
「だって『融合剤』を使った錬成なんてマリアには、十年はや――残念ながら十年はないな――三日は早い」
「みっ、三日って、私の想定よりも早いじゃない。それなら尚更、全部売っちゃダメじゃない」
「いや、三日はあくまで錬成できる可能性がゼロでは無くなるのが、三日後というだけだ。
三日後に『融合剤』を使った錬成なんて絶対やらないぞ」
このまま順調に『融合剤』を錬成し続ければ『錬金術』のレベルが2になるからな。
「じゃあ、いつから『融合剤』を使った錬成をやらせてもらえるの?」
「あのな、普通なら2ヶ月は『融合剤』を錬成し続けてからでないと、他の錬成には手を出さないものだぞ」
この世界の常識では、『錬金術』のレベルが3になると他の錬成の可能性がでてくる。
もっとも、マリアの場合はレベル2になれば、可能性がゼロでなくなる。
なので『融合剤』の錬成を2ヶ月も続けるつもりはないけどな。
だが、そんな事を今のマリアに言っても、増長する可能性があるので、決して言わないがな。
「そっかぁ~、やっぱり2ヶ月は『融合剤』の錬成かぁ」
マリアのテンションが下がった。
「それが嫌なら、『C』ランク以上の『融合剤』を少しでも早く錬成することだな。
それが出来たなら、計画の前倒しを考えぬ訳でもない」
「ほんと!『C』ランク以上の『融合剤』の錬成に成功したら、他の事をやらせてもらえるのね!
よ~し、一日も早く錬成するぞ~」
マリアのテンションが上がった。
「そうと決まったら、『融合剤』を売りに行くぞ。
マリアが錬成した『融合剤』を全部用意しろ」
マリアの問いに具体的に答えずに、話をすすめる。
俺は一言も「やる」とは言っていない。
マリアがどう思うかは、マリアの自由である。
う~ん、やっぱりゲス。
「わかったわ、すぐに用意するわ」
程なく、準備が終わり、出発と相成った訳だが、やばっ、ちょっと緊張してきた。
考えてみると、っていうか考えるまでもなく、この世界に来てから初めて外出である。
いや、ゲームでは何度もいろんな所に行っているが、それとこれとは別である。
しかし、そんな俺の心の葛藤にマリアが気づくはずもなく、
心の準備をする暇もなく、外へと出るマリア。
「で、何処に行けばいいの『センセー』」
をひ、マジか?