第1話
「ここは、何処だ?」
どうやら、気を失っていたようだ。
「おかしい、気を失うような事態にはならない筈だ。 ……ってそうかマイケル!あいつのせいか!」
装置のスイッチを入れた直後の光景が思い出されてくる。
「でも、マイケルが弄っていた部分は次元転移には影響が無い筈だ。では何か他の原因が…」
と俺が原因を追究しようと思索を始めた時、
「誰、誰かそこにいるの!」
突然声が聞こえる。
まずい、誰か来る。
何で俺は考えていることをつい口にしてしまうのか、
「昔から、そうなんだよなぁ~、ってそれどころではない!」
急いで隠れねば!
と思い、体を動かそうとするが、何故か体が動かない。焦って、周りを見回そうとするが、首すら動かない。
何だこれは、どうなっている、次元転移の影響か?
まずい、目の前のドアが開けられる。
仕方がない、じっとして様子を見てみよう。
ドアを開けてやって来たのは、女の子だった。
年のころは10歳ぐらいだろうか、片手には木の棒(おそらく薪ではなかろうか)を持ち、警戒するように、ドアの陰からこちらの様子を窺っている。
「だ、誰、そこにいるんでしょ、わかってるんだから!」
あれっ、俺の存在に気づいていない?
よく解らんが、ラッキーだ。
このままじっとしていよう。
もっとも体が全く動かないんだけどな。
「あれ、おかしいな、確かに誰かの声がしたのに… 誰もいない」
どうやら女の子は俺に気づいていないようだ。
女の子は警戒しながら、部屋に入り、中を見回して、首をかしげる。
女の子が部屋を見回した時に一瞬目が合った気がして、少し焦るが、どうやら俺の気のせいだったようだ。
「やっぱり気のせい?ひょっとして犯人がまた来たのかと思ったけど…そんなはずないよね。あるはずがないよね」
誰もいなかったことに安堵の表情を一瞬浮かべるものの、何かを思い出したのか、酷く沈んだ表情で女の子がドアの向こうに戻っていく。
女の子の表情が少し気にかかったものの、今はそれよりも大事な問題がある。
最初は驚いた拍子で、あるは緊張のせいで体が動かないのかと思ったが、今なお体が自由に動かない。
くそっ、何なんだ一体。
いや、落ち着け俺。
こんな時こそ冷静にだ。
落ち着いて現状を認識しようとすることで気がついたのだが、何やら視線(視点というべきか)がオカシイ。
俺ってこんなに身長が低かったっけ?
いや、しっかりと現実を見つめよう。
家具のサイズが大きすぎじゃね。
俺自身の姿を確認することができないので、確かなことは言えないが、
俺は今『机の上』にいる。
もっと言うなら、目線の低さから机の上にうつ伏せに寝かせられ、首だけ正面を見ている。
そんな状態で固定されている感じだろうか。
いや、それ「もの凄く窮屈じゃね」と自分でも思う。
だが「全然窮屈に感じない」
しかも、身長170cm………すまん、少し見栄を張った。168.9cmの俺が寝そべっても、机の上からはみ出さないどころか、かなり余裕がある。
そして、俺の左隣には、まるで『布団の様な大きさの紙(いや羊皮紙というやつか)』がある。
右隣りには『何処かの工場にあるタンクかと思われるほどの大きさのビーカー(理科の実験で使うあれだ)』
もっとも『ビーカー』と言うにはガラスの質、形にかなり問題があるようだが…
その『ビーカー』は7割ほど水で満たされており、そこに映るのはこれまた『バカでかいサイズのメガネ』
あれ、
『ビーカー』の向こうに『メガネ』があり、それが見えていると思ったが、それなら『ビーカー』の向こう側が見えるはず。
おかしいな、『メガネ』の後ろには左隣に見える『羊皮紙』と同じようなモノが映り込んでいる。
……ああ、なんだこっちの光景が反射して見えているわけか。
いや、それなら俺の姿が映っていなければおかしい。
でも『羊皮紙』と『ビーカー』の間には俺の姿ではなく『メガネ』が………
「俺ってば、メガネになっている~!!!!!!!!」
思わず叫んでしまった。
いや、誰だって叫んでしまうだろ~!!!!