第18話
「うぉっほん。ともかく、最後の1体も私が要求したモノではなかった」
「そうね……」
「つまりこのままでは『等価交換』が成立しない」
「…………」
「なので、「待って!!!」
いきなり、俺の発言を遮ってマリアが叫んだ。
「な、何だ、いきなり。ビックリするじゃないか」
「あなたが、要求した2つのアイテムは、立派な『錬金術師』なら作成できるのよね?」
「ああ、そうだな。
逆に言うなら、『コピーパペット』や『リモートマリオネット』ぐらい作成できない奴が、
立派な『錬金術師』と名乗るのはおこがましいな」
「だったら、私が立派な『錬金術師』になってその人形を作るから、
それをもって『とーかこうかん』にして!
いや、して下さい」
マリアが俺を外して、机の上に置き、俺に向かい頭を下げる。
ちらっとしか見えなかったが、マリアの表情はとても真剣であった。
マリアは俺が断る事を予見して、俺の発言を遮ってまで提案してきたのであるが、
実は、マリアが言いださなければ、俺から言いだすつもりであった。
勿論、マリアに対する情が移った……何て理由は少しも……ほんとは少し位はあるかも……
いや、無い。無いったら、無い。
あるのは、『コピーパペット』や『リモートマリオネット』を手に入れないと三次元に戻る装置を造れないから。
その現実的な理由だけだ。
つまり、俺にはその選択肢しか残されていない訳だ。
断るなんてありえない。
マリアはそんな俺の事情は知らない。
せいぜい、恩を売って、俺が優位になるようにしておこう。
そう、それでこそヲレ。ゲスの極みだ。
「そこまで言うのであれば、俺も鬼では無い」
「…メガネだものね」
「んっ。何か言ったかね」
「イ、イエ。何も言っていないわよ」
絶対、何か言ったよね。
まあ、いい。
「マリアが俺の条件を呑めるなら、その条件で『とーかこうかん』だ」
「条件?」
「そうだ、それを呑めないなら、この話は無しだ」
そんなつもりは微塵もないのだが、ここはそれで押す。
心の中では、ドキドキしながらも、表情には全くださない。
――表情もなければ、ドキドキする心臓も今はないけどね。
なんて便利なんだこのメガネの体。
「どんな条件なの?」
「これから、俺はマリアに『錬金術』を指導する訳だ」
「そうね」
「言うなれば、俺が師匠でマリアが弟子。
弟子は師匠に従うもの。
師匠の言う事は絶対。
つまり、私の言う事には絶対服従だ」
こちらの世界の師弟関係であれば、多少の差はあれ、これぐらい常識。
この条件で、マリアは承知する事だろうと思い提案した。
「……残念だけど、その条件では受け入れられない。
アナタを『師匠』と呼ぶ事はできないわ」
あ~れぇ。
断られた。
やべぇ、どうしよう~。