第10話
今は、家賃の問題だ。
父親が生きている間は、ちゃんと父親が家賃を払っていた。
よって、ゲームではこの家賃問題が発生するのは最速でも2年後。
普通にゲームを進めていれば、マリアのレベルも上がり『錬金術師』としての実力もそれなりに上がっている。
なので、毎月少し資金が減ってしまうのは痛くないとは言わないが、不可能ではない。
しかし、現時点でのマリアの実力では、家賃を毎月払い続けるのは難しい。
ちなみに、この世界では1月=30日であり、1年=12月=360日になっている。
ついでに、この世界のお金について説明しておく。
別に知らなくても問題ないので、無視して貰ってもかまわない。
参考程度だとおもってくれ。
銅貨 日本円で10円ぐらい。
大銅貨 日本円で100円ぐらい。
銀貨 日本円で1000円ぐらい。
大銀貨 日本円で10000円ぐらい。
大銀貨1枚=銀貨10枚=大銅貨100枚=銅貨1000枚
ここまでが主に流通してるお金だ。
その上に
金貨 日本円で百万円ぐらい。
大金貨 日本円で千万円ぐらい。
白金貨 日本円で一億円ぐらい。
というお金があるが、普通に暮らしている人には円の…もとい縁のないお金だ。
実際、ゲームでは各金貨を初めて手にするとイベントが発生する。
さて、問題になる家賃であるが、
大銀貨5枚を毎月払わなければならない。
『錬金術師のたまご』が唯一錬成できるものが『融合剤』というもので、これが最低銀貨2枚で売れる。
『融合剤』については後ほど語るが、常に需要があるので、
錬成することができるようになれば、生きていけるぐらいの稼ぎは得られる。
この世界で『錬金術師のたまご』になれれば、生きていけるという所以である。
『融合剤』は1日に『錬金術レベル』×1個作成できる。
ある条件を満たさない限り1日に作成できる上限は20個である。
もっとも、『錬金術師のたまご』で上限を知る者はまずいない。
そこまでのレベルになれないからだ。
『錬金術レベル』は様々なモノを錬成することによって、レベルが上がる。
同じものを造り続けてもあげることも可能なので『融合剤』を造り続ける事でも上げられる。
実際、ゲームスタート時は『錬金術レベル』は1であるので、
チュートリアルでは『融合剤』を9個錬成し、レベル2にする。
チュートリアルを使用しなくても、最初はそのようにしてレベル2にするのが基本である。
10個錬成するだけで、レベルが上がるなら『融合剤』を造り続ければいいじゃないかと思うかもしれないが、もし『融合剤』だけを錬成し続けたならば、レベル2に成ってから90個、つまり通産100個錬成しなければならない。
これは、プレイヤー視点で言わせてもらうと非常に効率が悪い。
他の物を錬成した方がはるかにレベルアップしやすいからだ。
もっとも、この世界の常識では『錬金術師のたまご』は『融合剤』を錬成し続けてレベル3になり、才能のある者(ごく少数)は他の錬成に手を出して『錬金術師』を目指す。
才能がない者(ほとんどはこっちらしい)は引き続き『融合剤』を錬成し続けてレベル4を目指すか、諦めて他の道へ進む。
レベル4になっても『錬金術師』の才能が見られないものは、ここで諦めるか、『錬金術師』が揶揄して言う『くさったたまご』として、『融合剤』を錬成し続けて生涯を終えるかを選ぶことになる。
『融合剤』を錬成し続けてレベルを上げると、レベル3になるのに約1年。
レベル4になるのに6年以上。
マリアが自分の父親が『錬金術師』であることを自慢したのもこうした背景がある。
いや、そんなことよりいかに家賃を捻りだすかだ。
とりあえず10日あれば錬金術レベル2にできるから…
「うるさい!エリナはちょっと黙っていな!
いいかいマリア嬢ちゃん。
毎月、家賃大銀貨1枚払えなかったら、ここを出て行ってもらうからね!」
ババアの怒鳴り声がきこえてくる。
相変わらずババアのくせに声がデカイ。
こっちでもはっきり聞こえたぜ。
しっかし、父親を亡くしたばかりの10歳の女の子にいうセリフかね。
毎月、家賃大銀貨1ま………あれっ、
「1枚?」