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さながらロケットの飛躍
電車を降りた瞬間に、冷たい風が吹きつけます。
『刺すような北風があるでしょう』
脅しに似た天気予報は聞いていました。
電車内では暑く感じたマフラーを、もう一度巻きます。
コートのポケットにあるカイロが恋しくなって、手を突っ込みました。
ああ、どうして。
空は当然のように青く、通りすぎていく薄い雲。
この空気さえなければ、このビジョンだけなら春の空のようなのに。
青と白が美しすぎたのか、風が冷たすぎたのか、
目にゴミが入ったのか、誰かを想ったのか、
気付けば涙が一筋。
そうですね、
今もどこかで誰かが生まれて亡くなって。
その真上の空は何色なのかと思いながら、
宇宙から見たら地球全部が青いんだろうと飛びすぎて。
ふと地面に緑がないと気付きます。
寂しいですね、灰色の地面を滑る木の葉。
殺風景なこの地面に、
空の青に見合うような色が付くまで、
あと何日、白い息を吐けばいいのでしょうか。
(寒い日は、空を伝って宇宙を想う。そんな大学時代の詩に加筆しました。)




