3話目
「ひまだなー。」
ソファに寝転がったまま、短い銀髪に赤いジャケット、黒い皮のパンツという何処にいても違和感を振りまく姿の男が心底暇そうにつぶやいた。
「なら、何かすれば良いじゃないですか。僕らはここで待機をしている事以外はなんら制約を受けてはいないはずですよ。」
オールバックに眼鏡、青白いブレザーを着たどこか冷たい印象のある男が趣味でやっている将棋盤から目も放さずに答える。
そういう事を言ってんじゃなくって怪異が現れなくって暇だって意味だよ。と、言い返しても、「良い事じゃないですか。」と、言われるだけのはわかっているし、何よりもそんな会話をするのが暇である以上に苦痛なので無視してまたつぶやく。
「ひまだなー。」
ここは、怪異に対抗するために作られた部署、通称「怪異対策室」の控え室。月に1度あるかないかの有事に備えて構成員が待機する場所である。
暇をもてあましている方が片葉稔。怪異を殴ったら殴れたというこの中でも異色の人物。それが何かしらの血筋によるものなのか彼個人の性質によるものなのかいまだにわかっていないが能力があるのならとここに配属される事となった。
そして、将棋をさしている方が日野修一。古くからある陰陽師の一族最後の生き残り。呪符を用いて一人で怪異を退けた実績によりここにスカウトされた人物である。
イチゴが食べたい