1話目
元々この国は特殊な地域であった。万物に神が宿り、時を経て物が意思をもち神や魔として動き始める土地。大昔は共にそれぞれを尊重して生きていたがいつの頃からか袂を分かち、同じ場所にいてもお互いを認識できないほど世界を違えてしまっていた。
寂しい話ではあるがそれだけならばある意味問題にはならなかった。
今から15年ぐらい前の話だろうか?前触れもなく突如として現れた2mはある、芋虫の体に飛蝗の足を持ち、そこからさらに長く赤い触手を出し人を食らう化け物。実体と影を半分異世界に残したそれにこの世界の武器は全く効果をあらわさず、3つの捕獲作戦、5つの討伐作戦、そして2つの無効化作戦が失敗に終わり、ついにはこの国からの退去という案が現実味をおびてきた頃に一人の少年が現れた。
少年は手から光を放ち、それを浴びた化け物は波にさらわれる砂のように崩れ去った。
その姿は様々なメディアで取り上げられ少年は一躍時の人となった。そして、次にメディアに登場した時、異界から現れた化け物を退治した夢物語のヒーローのような少年が口にしたのは酷く現実的な言葉だった。
「同じ事があればまた僕が退治してもかまいません。しかし、その時はそれ相当の対価と協力を求めます。」
甘いものが食べたい