友達になりました。
短編にしようと思っていたのですが長くなりそうだったので短編はやめました。
私、水無月メイの職場は教会の斜め向かいの花屋さん"フルール"。
立地条件の良さからウエディングブーケを作ることが多い花屋さんである。
「いつもお世話になってます!"フルール"です。百合のブーケとライスシャワー用の花びらをお持ちしました。」
「ご苦労様。メイちゃん。」
この人はこのブライダルの社員さんらしく、私が配達に行くと良く出迎えてくれる人。
二十代半ばぐらいだと思うイケメン男子で名前は知らない。
私は店のエプロンにmeiと刺繍されているから彼は私の名前を知っているのだ。
「あれ?メイちゃん寝不足?隈が出来てるよ。メイちゃんは可愛いんだからちゃんと睡眠とらないと!」
私は思わず目元を手で覆った。
私には二歳年上の姉が居るのだが彼女が今度結婚することになり、私は姉のためのブーケを作る約束をしている!
そのブーケの試作作りに毎日悪戦苦闘していて寝不足だと言う自覚があった。
「不眠症?僕が添い寝してあげようか?」
「またまた~遠慮します。」
「そう?残念。メイちゃんのためなら、それぐらいやってあげるから言ってね。」
優しげな笑顔でそんなセクハラまがいの事を言ってくるこの人に私は少なからず好意を持っている。
だが、綺麗な茶髪は清潔感のある短髪で少しタレ目な目元は優しげ。
性格はひょうきんで話しやすくどっからどう見ても彼女が居ない訳がないイケメン様だ!私なんかが夢を見るなんてできやしないのだ。
「あ!居た!大神君!休憩時間だよね?何で業者の受け取りなんかやってるの?」
現れたのは綺麗な女の人。
私は始めて彼の名前を知った。
彼女さんかな?
私は彼に頭を下げた。
「休憩時間にすみません。これ、明細です。」
私は彼に明細書を手渡すと業者用のドアに向かった。
勢いよくドアを開けるとドアの前にたまたま居た人物にドアをしこたまぶつけてしまった。
「ごめんなさい!………ヒロ君。」
ドアをおもいっきりぶつけてしまった相手は小学校の時から高校卒業まで同じクラスだった仲良しの月島博人君だった。
「痛って~!メイ俺なんかした?」
「わざとじゃないよ~!事故だよ~!まだ土曜日の飲み会のお金もらってないけど、それは関係ないよ~!」
ヒロ君は少し考えてから言った。
「そう言えば払った気がしない。」
「ヒロ君が酔いつぶれたから海ちゃん呼んで連れて帰ってもらったのは覚えてる?」
「海人………海人に立て替えてもらえば良かったじゃん!」
「海ちゃん500円しか持ってないんだもん。弟にお小遣いくらいあげたら?」
「俺が汗水たらして働いた金を何で可愛くもない弟にやらなきゃならないんだ?」
「酔いつぶれたヒロ君をちゃんと迎えに来てくれる良い子だから。」
ヒロ君が深く息を吐き言った。
「それだって俺のためじゃなくて、メイが可哀想だからだろ?海人はメイが好きだからな。」
「私も海ちゃん好き!あんな弟ほしい!」
ヒロ君はニヤリと笑うと言った。
「なら、メイが俺と結婚すればいい。」
「私よりお酒の弱いヒロ君となんてお断りです。」
「………金払うから仕事終わったら家こいよ。」
ヒロ君は私の頭を乱暴に撫でた。
私はその手をはらいのけると言った。
「貸してあげたのは私。ヒロ君が家に来て払うのがスジだと思わない?」
「了解っす。………飲み行くのは?今日奢る。姉貴の話したいし。」
「カグヤちゃん?………解った。何時もの店に8時で。」
「うっす。」
「ヤバ!長いしちゃった。怒られる~!」
私はそのまま店に戻った。
その日、いつもの居酒屋につくとなぜかヒロ君とオオガミさんが一緒に飲んでいた。
私は少しだけ警戒しながらそのテーブルに向かった。
「よう!メイ遅いぞ。」
「………私邪魔じゃない?大丈夫?」
「?ああ、こいつは満、大神満うちのメイク担当。満!こいつは俺の大親友のメイ。花屋の店員。」
大神満、彼は私に名刺をくれた。
電話番号はブライダルの会社の物と手書きの携帯番号が書かれていた。
「気が向いたら電話して。」
「いや、大神さんに電話する用事が出来るのかどうか?」
「………今日から友達でしょ?そうだ、友達らしく名前で呼んでよ!ね、メイちゃん。」
無駄に色っぽく大神さんはそう言った。
「満さん。」
「………博人はヒロ君なのに?」
「満君?」
「うん。」
こうして私は彼と友達になった。
満君に急かされて電話をしてから満君はよく電話をくれるようになった。
「ブーケお届けに来ました!」
「メイちゃん!お疲れさま!」
その日も納品の対応に来てくれたのは満君だった。
「この間不眠症気味だって言ってたよね?これ、あげる。よく寝れるお茶なんだよ。」
「え?でも………」
「実は貰い物なんだけどね!俺の兄ちゃんイタリアの雑貨とかの輸入関係の仕事してて、その流れでもらったの。だからもしよかったら。」
満君のくれたお茶はパッケージからして可愛くて私は嬉しくなった。
「満君ありがとう!お礼しないとね。」
「お礼はいいから、そのお茶きかなかったら教えて。そしたら今度は違うの用意するから。」
「………満君。寝れないんじゃなくて、急がして睡眠時間が足りてないだけなんだ。なんか気をつかわせてごめんね。」
私は申し訳なくてそう言った。
「そっか。無理しないでね!メイちゃん。」
「あ、ありがとう。満君。」
満君は嬉しそうに笑った。
優しいイケメンに胸キュンしてしまう。
私は明細書を満君に渡した。
満君は笑顔でそれを受け取るといった。
「メイちゃん。明日休みだって言ってたよね?デートしない?」
「?………ごめんなさい。」
その日はお姉ちゃんがここでウエディングドレスの最終チェックをするから付き添いに来る約束をしていた。
始めてバックヤード以外のこのブライダルショップを見るから楽しみにしているんだ。
「あれ?フラれちゃった?」
「あ、いや、明日は約束をしていて。」
「男?」
「?違いますよ!姉です。」
「そっか。じゃあ次の休みは俺にくれない?」
「………ごめんなさい。」
「あれ~?またフラれちゃった?」
その次の休みはお姉ちゃんの婚約者とお姉ちゃんへのサプライズプレゼントを選んであげる約束をしていた。
「またお姉さん?」
「い、いや、違う人です。」
「………男?」
「………まあ、一応。」
満君はおどろいた顔の後苦笑いを浮かべた。
「彼氏?」
「違いますよ!」
「そっか!じゃ時間ある時連絡して。」
本当に満君は人懐っこい人だ。
イケメンなんだから誘えば誰でも時間作ってくれると思うんだけど、新しく出来た友達がよほど嬉しいのだろう。
その時業者用のドアからヒロ君が入ってきた。
「よ!メイ。明日マイさんとデートだって?亘君から聞いたぞ!その次の休みは亘君とデートだって?お前モテモテだな。」
「亘君口軽すぎ。お姉ちゃんには亘君と出掛けるの内緒にしててよ。」
「言わねえよ!後でばれて嫉妬されてこじれたら大変だからな。お前もそれが解っててよく亘君と二人で出掛ける気になるな。」
「………ね。大好きだから断れなかったんだよね。」
私はお姉ちゃんと亘君の事が大好きだから、二人のためなら自分の時間なんて惜しくないって思ってしまっている。
「明日はマイさんおおはしゃぎだろうな。」
「昨日からテンション高めだよ。」
「じゃあ、明日はさらにテンション上げられるようなウエディングドレスを用意する。」
「お姉ちゃん喜ぶよ!」
その後私が帰ってからヒロ君はなぜか怖い思いをしたらしい。
詳しく聞いても、ヒロ君は思い出すのも嫌だ!としか言わなかった。
ちょっと中途半端ですかね?
すみません。