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招待状

 テーブルの上のお菓子が少なくなってきた所で、ファツィオがジンに話を切り出した。内容は先ほど執事が早急に読むように、と持ってきた王印付きの手紙についてだ。


『王より晩餐会の招待状が届きました』


「へ?なんで?」


 ジンはさほど驚くこともなく、口にクッキーを放り込みながらファツィオを見た。


『よりお近づきになって異世界の知識を得たいのでしょう。ついでにジン殿も得られれば万々歳という思惑でしょう』


「知識が先で、私はついでかい?」


 呆れたように言うジンにファツィオが頷く。


『王はとても慎重で計算高い方です。ジン殿を得るより異世界の知識のほうが、少ない経費と損害で得られると考えたのだと思いますよ』


「経費はわかるけど、なんで損害が入るの?」


『それは、今までの経過を見れば一目瞭然でしょう。なんせ微笑の魔人という二つ名がつけられるほどなのですから』


「それを言うならリアなんか悪名高き魔女だよ。そっちのほうが率直だし損害が出ると思うんだけど」


『ですから、リア殿には招待状は届いていません』


「うわぁ。標的は私一人かい?」


 嫌そうな顔をするジンに対して、リアがヒラヒラと手を振る。これまでの会話からして怒ってもよさそうなのだが、そのような気配は一切ない。


「頑張ってね」


 リアが完全に見送りの姿勢になっている一方で、ジンは愚痴りながらテーブルに突っ伏した。


「えー、面倒だなぁ。晩餐会って格式張って肩が凝るんだよね。しかも笑顔で腹の探り合いとかを平然とするような人たちが集まるんでしょ?そんなところに行きたくないよぉ」


『その通りですが王命ですので。ここでの滞在費もジン殿が読んだ魔法書も城の経費で出ています。つまり、ジン殿の生活費はこの国の税金で賄っているということです。ですので、少しぐらいは財布の主に顔を見せるべきかと思いますが』


 王を財布の主呼ばわりしたことでファツィオの王に対する敬服度が分かる。そして、そのことに対してのツッコミは当然ない。


 ジンはテーブルに突っ伏したままグダグダと自分の意見を一応(・・)主張した。


「でもさ、そういうところに集まる人たちって、人を指さしながらコソコソ話すんだよ?絶対、黒くてドロドロで嫌な気分になるんだよ?それを分かっていて、そんな場所に行くなんて愚の骨頂じゃな……うぐぅ!」


 ダラダラと話すジンの口にリアがクッキーを詰め込む。


「ウジウジ、グジグジ五月蠅いわね。さっさと行ってきなさい」


 ジンは体を起こすと、口いっぱいに放り込まれたクッキーを紅茶で流し込んだ。


「リアは行かなくていいから、そんなこと言えるんだよ。自分が行かないといけなくなったら断固拒否するくせに。それにリアもこの国の税金で生活しているんでしょ?なら一緒に行かないと」


 ジンの発言にファツィオが手を横に振る。


『リア殿の生活費は全て私が出しています。ですので、リア殿が城に行く必要はありません』


「えー、なにそれ?ずるいー」


 恨めしそうに見てくるジンをリアは勝ち誇ったように見返した。


「悔しかったら自分の生活費ぐらい自分で稼ぐことね」


「リアは自分で稼いでないよね?」


「私という存在がここにいるだけで十分なのよ」


 どこの高飛車な女王様だ!というツッコミはどこにもなく、沈黙とともに遠くでカラスが鳴く声が響いた。



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