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異世界召喚された勇者が、その国を出て他の国に定住した理由  作者:


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ジンの精神的外傷

 昼食に満足したジンは、お腹をさすりながら城の中庭を歩いていた。


「あー、お腹一杯」


 王との昼食会の後は一人で中庭を散歩することがジンの習慣となっていた。


 ジンが中庭を少し歩いていると、目の前に見たことのある女性が中庭に置いてあるベンチに座っていた。


「こんにちは」


 ジンが声をかけると空を眺めていた女性が驚いたように顔を向けた。その表情にジンの足が止まる。


「どうしたの?」


「あ、いえ。少し考え事をしていまして。そういえば、ご結婚されたのですよね?新婚ですのに、このような所を一人で歩いていてよろしいのですか?」


 女性の言葉にジンの表情が明らかに曇る。


「だから、私は同性と結婚する気は微塵もないの。その話は消滅したんだから、もう言わないで。思い出したくもない」


「どうして、そこまで同性との結婚を拒否されるのですか?」


 からかいや興味半分などではない、女性の純粋な疑問を含んだ視線で見つめられたジンは少し考えた後、軽くため息を吐いて言った。


「話してもいいけど……これから話すことは誰にも言わない?」


「こう見えましても口は堅いほうです。ですが、そこまで話されたくないのでしたら、無理にとは言いません」


「そう?まあ、いいや。ちょっと、そこに座ってもいいかい?」


「どうぞ」


 女性がごく自然にジンが座れるように隣へ移動する。

 ジンはベンチに腰掛けると、先ほど女性がしていたように空を見上げた。


「私の国では魔力が強い子どもは十三歳になると魔法学校に入学するんだ。そこは全寮制の男子校だったんだけど、そこでの生活が……」


 そこまで言うとジンは両手で顔をおおって俯いた。


「とにかく酷かったんだ。十三歳にしては華奢で女顔だった私は、同級生から上級生にまで狙われて……私が学校に入って始めに学んだことは、勉強よりも身を守る方法だった。魔力が強いおかげで、全ては未遂に終わったが、その時のことは立派な精神的外傷(トラウマ)となったよ」


「まあ、それは大変でしたね。ですが、こんなに長い髪をしているのも原因の一つではないのですか?」


 そう言った女性の視線の先にはジンの腰まで伸びている白金の髪があった。緩く三つ編みにしている髪は太陽の光を弾いて宝石のように輝いている。


 ジンは無造作に髪を掴むと恨めしそうに睨みながら言った。


「これはねぇ……切っても、すぐに伸びるんだよ。私の場合、魔力が強すぎて髪に影響が出ているんだ。しかも毛先を切りそろえるぐらいなら良いんだけど、いきなりバッサリと切ったら、そこから魔力が放出されて魔法が使えない無防備な状態になるという危険も持った厄介な代物なんだ」


「では、簡単に切れないのですね」


 どこか残念そうに話す女性にジンが首を傾げる。


「どうして君がそんな顔をするの?」


「いえ、もし髪を切ることがあれば、その切った髪を頂きたいと思いまして」


「カツラでも作るの?」


「えぇ。とても綺麗なカツラが出来そうですから」


 そう言って女性は宝石を眺めているかのような目で白金に輝く髪を見つめる。


 そんな女性からの視線を受けてジンは呆れたようにため息を吐いた。


「どうして女性はそんなにこの髪を欲しがるのかなぁ?」


「他にも欲しいと言われたことがあるのですか?」


「しょっちゅう言われるよ。誰にもあげるつもりはないけどね」


「あら、それは残念です」


 女性が残念そうには見えない軽い口調で諦める。

 ジンは軽く微笑んで言った。


「この話は誰にもしないでね。特に学生の頃のことは、あまり思い出したくないから」


「はい。ですが、どうして私には話して下さったのですか?」


「んー?なんとなく?」


 ジンの曖昧な話し方に女性が微笑む。


「そうですね。この前、私が内緒で書いている詩をあなたは読みましたし、これでおあいこですね」


「聡い人は嫌いじゃないよ」


「褒め言葉として受け取っておきますわ」


 そう言って女性が上品に微笑む。ジンはその微笑みを見て悪戯を思いついたように言った。


「私の秘密を話したし、この前、拾った紙に書いてあった歌を聞かせてよ。この国の楽譜は読めないから、どんな歌か分からなかったんだ」


 ジンの提案に女性の顔が一瞬で真っ赤になった。それは頭から湯気が出そうなほど。


「いいぃぃぃ……いぃぃぇぇ、いいえ!わ、私の歌なんて、ひと、人様にお聞かせ出来るものでは、あぁ、あ、ありませんから!」


 盛大にどもりながら女性が話すが、その姿を見てジンがますます楽しそうに笑う。


「じゃあ、是非聞きたいな」


「む、むむぅ、無理です!」


 女性は首が取れるのではないかというほど激しく頭を横に振った。ジンは少し考えた後、突然歌いだした。


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