48 何も起こらなければ祭りじゃない。
『これより、木城高校文化祭を開催いたしますっ!』
高揚した声が学校内に響き渡る。
スピーカーから聞こえてきた開催宣言は、準備に追われていた学生たちに火をつけ、そのまま祭りの空気に誘った。
二次元の作品だと、それはもう体育館を存分に活用して、ものっそいテンションのオープニングセレモニーが行われるが、木城高校にはオープニングセレモニーなんて小洒落たものはない。
かといって、それがないのが寂しいとか感じないのが俺だ。今年もヌルッと始まった文化祭を満喫することは考えず、教室の外に設置された受付でボーッとしていた。
本来ならラノベ大感謝祭だー! と勢いづいて五、六冊持ってきてるはずだが、あろうことかまた忘れてしまった。おかしい。こんなの俺じゃない。
暇つぶしに仕事をしようにも、劇の開始にはまだ一時間ほど時間がある。
それに受付といっても、劇を見るのに金を払って貰うわけじゃない。割り振られてる仕事が、せいぜい看板持ち(劇の開始前十分だけ)と呼び込み(俺は人が来ても来なくてもいいと思ってる)に、来賓者の質問に答える(影を薄くしようと奮闘中)くらいだ。だから劇の開始間近になっても、状況に変化はないのだろう。
つーか、そんな明らかに飾り物の受付なんてなんで作ったんだ。人材の無駄遣いも甚だしい。
まあ、俺なんて大した人材じゃないからどこにいようといいんだろう。たぶん。
そうやってひたすらヌボー、ボケー、ホゲーとしていると、廊下を行き交う人の群れに、一般の人が混ざり始めたのに気がついた。ちらほらと、うちのではない制服もあった。他校の連中だろう。
と、その中に見覚えのある人影がある。紫苑だ。
紫苑はキョロキョロしながらポケーと見つめる俺の前を通り過ぎる。
通り過ぎて隣の教室前に差し掛かったあたりでピタリと足を止め首を傾げた。しばらく何事か思案したのち、首を巡らせ振り返る。当然、ずっと見ていた俺とは目が合った。
「あ、飛雄馬」
「おう」
小走りでやって来た紫苑に軽く手を挙げて応答。そして問うた。
「何やってたんだよ。急に立ち止まったりして」
「なんか突然違和感っていうか、忘れ物してる気がするけど何を忘れてるのか分からない感覚に陥ってさ。しばらく考えたんだけど分からないから、一応振り返ったら飛雄馬と目が合った。そして確信したね。俺が忘れてたのはこれだって」
「俺忘れられてたのかよ」
幼馴染で中学まで同じだった相手にすら忘れられるって悲しすぎる。それはちょっと流石に嫌だぞ。
と鬱ってたが違うらしい。
「いや、忘れてたんじゃないって。きっちり視界に収めてたんだけど、それと認識できなかった感じ。お前影薄すぎ」
「ああ、なるほど」
それなら納得だ。一般の人に絡まれないように影を薄めてた最中だったし当然だろう。俺のステルス性能高すぎて、諜報活動とかに凄まじい適性を示しそうだ。
いや、でも冷静に考えると、幼馴染の視界にとらえられてるのに認識されなかったのって、結構キツくないか。
「そんなことより、何やってるの」
密かに傷つく俺の気持ちを一切慮ることはせず、自分の疑問をぶつける紫苑。その質問に対する答えは簡潔だ。
「何もしてない」
「何もしてない?」
訝しげにつぶやく紫苑。その目がスーッと、俺と紫苑の間に置かれた机にぶら下がる、「受付」と書かれた紙に移動する。
「ってことは飛雄馬は別に受付ってわけじゃないの?」
「いや、受付だ」
「え、じゃあ何もしてないわけじゃ……」
「受付だけど何もしてないんだ。だいたい受付だなんてどこ行っても飾りと同じだろ。大した仕事割り振られてるわけじゃない」
「すげー偏見が聞こえてきた……。多分それなりに忙しいよ、取り次ぎしたりとかあるし。てゆーか、受付が飾りだったとして、その役目を全うできてる自信は飛雄馬にあんの?」
「だから言ってるだろ。何もしてないって」
「あー、なるほどー……」
ようやく合点がいったらしい紫苑は半ば諦めた視線を投げかけてくる。幼馴染にまで呆れられてしまっては、残る砦は姉さんだけか。割とあっさり突破されそうで怖い。
なんにせよ、俺に求められていることが飾りなら、適材適所という概念を知らなさすぎだろう。全身から暗ーいオーラを振りまいてる奴が受付やってるところに、人が寄り付くはずない。
そうだな、適材として挙げられるのは鈴丘だろうか。なんか人が寄り付きそうだ。あとは功刀。見た目だけなら普通に美人だし。
などと考えていると、「ところで」と声を上げる紫苑。
「鈴丘さんはどこにいるか分かる?」
「知らん。ああいや、教室の中だったかもしれない」
「いまいちはっきりしない答えだな。同じクラスなんでしょ?」
「同じクラスだからって動向を全て掴んでたら怖いだろ。鈴丘レベルの観察眼がないと無理だ」
「たぶん鈴丘さんでも無理だと思うけどね。全知全能ってわけじゃないんだから」
「いや、これがそうでもないんだよな……」
あいつ、結構俺の動向知ってるからなあ。クラスの中でも影の薄い方の俺を捕捉できてるということは、必然的に他のクラスメイトも捕捉済みということになる。
俺の頭の悪い論法に、紫苑は苦笑い。
「まあ分からないなら仕方ないけど。どうやって会おうかな……」
「文明の利器って知ってるか?」
「サプライズ的に会いたいから携帯は使わない」
「ほーん。やっぱり文化祭に来たのって、鈴丘に会うためか」
「まあね」
あっさりと肯定。その姿に何か吹っ切れたものを感じる。
だがそれが何かを察する前に、紫苑は付け足した。
「でもちゃんと飛雄馬にも会いに来たから安心して」
「嫉妬じゃねえよ」
俺とお前のBLに需要なんかないっつの。たぶん。腐女子の心理知らないからなんとも言えないけども。
「けどお前、コンクールとかあるんじゃねえの。大丈夫なのかよ。こんなとこで油売ってて」
「だから来るのは今日だけだよ。それに鈴丘さんにアタックしに来たんだから油を売りに来たわけじゃない!」
「私がどうしたの?」
「どわっひゃいっ!?」
突如として投げかけられた俺以外の声に、聞いたこともない悲鳴をあげながら紫苑は三歩ほど飛びづさる。その見事なまでのバックステップに、俺は小さく歓声を送った。
この状況を作り出したところの鈴丘の装いは文化祭バージョンだ。
といっても大きく違うところはない。せいぜいブラウスの代わりに、俺が来てるのと同じ紺のクラスTシャツを着ているくらいだ。
彼女は紫苑の奇行と俺の歓声にポカーンとしている。あれは状況を飲み込めていない顔だ。
紫苑は予期せぬ思い人との遭遇に顔を赤くしながらも、何とか平静を取り戻す。
「おはよう、鈴丘さん」
「うん、おはよ。ピアノの練習とかは大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。俺にかかれば楽勝だし」
お前さっきコンクールに向けて練習しないと的なこと言ってただろ。
どうやらただ格好つけたかっただけらしい。いつの時代も、好きな子の前では格好つけたくなるのが男の性。仕方のないことか。だから格好つけたセリフが微妙に小学生っぽいのも仕方がないのだ。
俺の心中とは関係なく、そのまま会話を続ける二人。
見る限り、普通に仲のいい友達に見える。鈴丘の紫苑に対する好感度も決して低くはないようだ。
まあ鈴丘が誰かにあからさまな敵意を向けるという絵も想像できないのだけれど。二人の関係は十分良好。
惜しむらくは、あまり男女という感じがしないことか。そこら辺はこれから何とかしていくんだろうけど。紫苑の努力に乞うご期待。おれはおうえんしてるぞー。
二人きりの空間を邪魔するのも気が引けたし、会話に入ってこない俺を、次第に鈴丘も気にしてちらちらと見てきたので、この場を後にすることとする。もとより大した仕事も割り振られていない受付だ。いなくなっても誰も困らないだろう。
「俺はちょっとトイレ行ってくるわ」
言うと立ち上がりその場を後にする。
「いってらっしゃい」と控えめに手を振る鈴丘の姿が、ちらりと目の端に入った。
***
別段行きたくもなかったが、持ち場を離れてまで俺が行くところなんてお家くらいしか存在しない上に、今帰ると出席がつかない。
結果本当にトイレに行って、そのまま戻るにも早すぎると気がついた俺は、ピロティーにある自動販売機に向かった。
ずらりと並ぶ箱型の機械。それらには張り紙が貼られいる。内容は使用厳禁。
「まあ、そりゃそうか……」
文化祭参加団体がわざわざジュースだのなんだのと仕入れて売っている状況で、自動販売機が使えるというのも変な話だ。
仕方なしにすぐそばにあった出し物の店でお茶を購入。自販機よりも割高だったが、まあ良しとしよう。
そこから帰る途中、とあるポスターが目に留まった。黒や紫、赤で描かれた、お化け屋敷の出し物だ。どこのクラスだと確認すれば、汐留のクラス。
そういえば、来てくださいみたいなことを言われていた。行かなかったら個人情報ばらまかれるんだろうなあ。
行かなくても何もないなら積極的に無視していくタイプの俺も、超特大級の爆弾が用意されているなら話は別だ。後で顔出しに行かなければ。思いもよらぬところで予定ができた。
とはいえ、ダラダラしていたら時間もいい感じに過ぎた。もうすぐうちのクラスの劇が開演される。
開演時間ギリギリに教室に戻ると、それなりの人数が来場者として列を作っていた。
小走りで向かい受付としての仕事をしようとするが、鈴丘が代わりに何とかしてくれていた。紫苑どこ行ったと思いつつ、とりあえず今はどうでもいいこととして置く。
「悪い、ちょっと遅れたか」
「ううん、時間的には大丈夫。受付は私やるから、武藤君は中のヘルプお願い」
「お、おう」
なぜ本来の持ち場を変更したんだ。
疑問が頭をよぎるも、ここにいては邪魔になる。スタッフ専用と書かれた教室のドアを開けて入るとーー
「おー、武藤発見! もおー、こんな時間までどこほっつき歩いーー」
ドアを閉めた。
ドアを開けて最初に出迎えたのは西倉であり、その瞬間俺が抱いた疑問は音速どころか光速で氷解した。
こいつの相手をしたくなければ、そりゃ受付しかないよな。
恨めしい視線を鈴丘に向けると、彼女は気まずそうに顔をそむけた。味方はいない。詰みだ。
意を決して再び中へ。
「武藤は復活した!」
「どういう流れでそうなった」
俺が外にいた間西倉の脳内で展開されたであろう部分を清々しいまでに省いたセリフに、俺は辟易しながら答える。復活っていうと、奴の中で俺は一度死んだことになっているらしい。
そんな失礼な想像をしていたであろう西倉は、一切悪びれずに、
「なーなー、武藤。あとで文化祭一緒に回らね!?」
「お前とだけは絶対嫌だ」
「べ、別に友達いなくて一人で寂しく過ごしているに違いないお前のために言ってるんじゃねえから遠慮すんなよ!?」
「男のツンデレに需要ねえし、今俺に対するすごい失礼な評価を突きつけられた気がする」
実際そんなにいないけど、それは西倉に言われたくない。とはいえ俺は"作らない"のであって、"作れない"西倉とは雲泥の差があるが。
と、今は無駄話よりも仕事だ。
「俺は一体何をすれば……」
「俺が知るわけないだろうでござる!」
「だから最初からお前にゃ聞いてないだろうよ……」
日本語をエキサイトさせる西倉を華麗にスルーして、指示を仰げそうな人物を探す。
ビールケースと暗幕を駆使して作られた控え室は、人がすれ違えるくらいの幅しかない。
その代わり奥行きはあるのだが、細い場所にキャストが密集していて人探しにはあまり向かなかった。
なんとか見つけた片山の場所に行くにも少し大変だ。体を横にして横歩きしながら進んだ。
教室の大きさの問題でこれが限界だったとはいえ、普通に狭いな。
ともあれ文化祭実行委員たる片山の元にはたどり着いた。
「よう片山」
「おっ、武藤。あれ、受付は……?」
「鈴丘が代わりにやってる。俺は中だと」
「武藤より鈴丘さんがよかったぁー!」
「うっせーよ西倉」
なんで付いてきてんだよ。お前の願望は聞いてねえ。狭いんだから入り口付近に……いや、もう教室出てろ。なんなら学校内からも出てくれ。
いちいち相手にしてもキリがないので、俺の高等スキル、【西倉の声だけ聞こえないフリ】を発動する。
「で、俺は何をすればいい?」
「そうだね。中でやることはもうないけど……キャストが一人まだ来てないから探しに行ってもらおうかな」
「キャスト? もう開始まで三分切ってるのにか」
とんだ不真面目野郎だ。
「まあ五分くらい遅れるのは構わないけど、かといって好き好んで遅らせるわけにはいかないからさ。お願いできる?」.
「おお、いいぞ。誰だ?」
「鷹西くん」
「誰だ?」
「いやだから鷹西くん」
「……誰だ?」
「なんでさっきから同じ質問で足踏みするの!?」
知らないんだよ、そいつのこと。誰だよマジで。初めて聞いたわその名前。
「ほら、色黒で……」
「ふむ」
「スポーツ刈りで……」
「ふむ」
「ちょっと背が低い人」
「すまん俺の記憶に引っかかる人物がいない」
「クラスメイトなのにっ!?」
いやはや、かたじけない。クラスメイトなぞ我が人生という道においては、所詮通り過ぎるだけの人物。そんな者の名なぞ一々覚えたりはせぬわ。
などという、どうでもいい言い訳は引っ込めておく。
実際クラスメイトの名前を覚えてないのは特に深い理由なく面倒臭いからだ。
「うぅーん。分からないなら、探しようがないよね……」
「だな。いや待てよ。そいつの写真とかあればいける」
「俺に好き好んで男子を隠し撮りする趣味はないよ」
「その言い方だと女子を隠し撮りする趣味はあるって聞こえる」
どこの功刀だよ。
「言わなくてもわかると思うけど、言葉の綾だからね?」
「分かってる分かってる」
自分のクラスにストーカー体質二人もいると思いたくないし。
そんな風にほとんどの時間をその鷹西という奴捜索会議のために使ってしまった。気がつけばもう公演時間だ。
言うに及ばず、鷹西とやらはまだ来ていない。探しに出ていた連中もちらほら戻ってきている。
「どうしようか」と片山は少し焦った表情。
「代役は?」
「そんなの用意する時間なかったよ」
脚本、遅れたもんなぁ。それはもうものすごく。
「そんじゃ、前座出して時間を稼ぐか」
「前座って……それも用意してないよ……」
「なんでもいいんだよ。それっぽい芸できれば」
「無茶な……」
無茶、というほどでもないと思うが。男子高校生は常に女子に関心を持ってもらいたくて、何かしらの芸を練習してるイメージがある。俺は違うけど。
俺の案以外に特にないと思ったのか、片山は次々に人に声をかけていく。
だが当然と言うべきか、この場で積極的に表に立とうという者は出てこない。比較的舞台度胸があるキャスト陣も同じことだ。想定外の場所には出て行きたくないのだろう。
まあ、もしかしたら単に芸なんかないのかもしれないが。つーか芸なんか練習しないのかな。やっぱり。
「大変そうだなー、みんな」
「完全に他人事だな」
スキルが切れたらしい。ずっと後ろにいた西倉の声が聞こえてきた。
奴は両手を頭の後ろに回して、普段通り何も考えてなさげな瞳で自体を俯瞰している。
「一応確認しとくけど、お前芸とかできるか?」
俺の期待なんか全くこもってない質問に、西倉はフッと余裕たっぷりに口の端を緩める。
「俺くらい芸のある奴も珍しいさ。人は俺のことをこう呼ぶ。そう……地上最強の男と!」
「ああ、うん。そうな」
相変わらずバカみたいなこと、というかバカなことを言う西倉に、俺もいい加減諦めの姿勢。
と、ここで俺は一つ思い当たることがあった。
「なあ、アドレットマイア」
「は? 俺は西倉なんだけど」
「お前さっき自分でアドレットマイアって言ってただろ……」
てへぺろと舌を出す奴は完全無視。あまり時間もないので手短に済ませる。
「お前、今から踊る気はないか?」
「俺はいつだってどこだって、ダンサーさ!」
「よしじゃあ踊ってこい。ヨーデルヨーデルしてこい」
以前、甲斐を尾行した時。西倉はデパートのおもちゃ売り場に設置された小さい液晶の前でヨーデルヨーデルしていた。
デパートという公共の場で踊り出してもただの不審者だが、文化祭という、ある種ノリだけの空間なら許されるはずだ。
ピッと舞台の方を指差し言う俺に、西倉はものっそいいい顔。
「いいの!?」
「おう。……なあ片山、大丈夫だよな?」
「え、西倉か……。うーん。まあ、いざとなったら力ずくでも止めればいいか……」
「西倉ー、お前信用あるんだなー」
「だろう? 俺ほど信用ある奴もそうはいないぜ!」
「皮肉だからな」
ともあれ責任者の許可は取った。これで何も怖いものは……西倉の暴走くらいしかない。
「じゃあ行ってこい。ちゃんと『前座です』って言えよ」
「俺主役じゃないの!?」
「いつから主役だと思ってたんだ。いいから行け」
なおも戯言を言いそうな西倉を、半ば押し出すようにして壇上へ。
壇上といっても、要は教室の前半分だ。後ろ半分は客席としてほとんどのスペースが埋まっている。控え室に削られた空間も合わさって、ちょっと狭い。けど一人が踊るぶんには問題ない。
堂々とした足取りで真ん中まで行き、「前座と言う名の主役です!」と片手をビシッと挙げて宣言する。
そのまま自分で歌いながら踊り出した。
なるほど、いつか見た通りキレッキレだ。
その、高校生が割と低年齢層向けアニメの踊りを無駄に高いクオリティで披露する様子に、観客は大爆笑。中でも一番笑ってたのは紫苑だったかもしれない。あいつ見てくのかよ。
そうして笑いの中、西倉は最後まで踊りきった。拍手に包まれながら、西倉は達成感に満ち溢れた顔で額にかいた汗を拭う。
いやあ素晴らしかった。西倉にしてはすごいいい仕事したじゃないか。ちょっと見直した。
……けどまだ鷹西とやらは来てないんだよね。
まだ終わられては困るので、俺はiPhoneで某動画サイトを表示。ヨーデルヨーデルを流し始めた。
「なぬっ!?」
驚きの声を上げる西倉。
しかし流れてくる音楽には体が逆らえないようで、またもや無駄にクオリティの高いヨーデルを踊り出した。当然ながらさっきよりはウケない。観客から向けられる視線のいくつかは、「劇まだかよ」と言っていた。
***
鷹西とやらが来たのは、西倉が三回目のヨーデルを踊っている最中だった。




