追撃
レミの運転しているこのミニパト、アルトワークスは、一見ただの軽にしか見えないが、中身は別物のスーパーマシンである。
もちろん、ラッキーデカ長が手掛けた“レミ号”である。
※レミ号仕様 鍛造ピストン、ハイカム、タービン交換、等長エキマニ、クロスミッションetc、ブースト1.5Kで、150馬力
ブローオフバルブから派手な音をたてながら、フルブーストで加速していく。
余りの加速でバケットシートに体が押さえつけられ、身動き出来ない。
バイク便が右折した交差点を、サイレンを鳴らしながら突っ込む!
スピードを落とさずに、軽くスキール音をたてながら、アウト イン アウトで綺麗に交差点を抜けてゆく。
「レミ、上手いな」
「GT5で鍛えたからね♪」
遠くに、交差点を左折するバイク便の後ろ姿が見えた!
「いた!」
フルタイム4WDで路面にパワーを伝えて、フル加速していく!
交差点を左折!
バイク便がだいぶ近づいた。
前は赤信号。
バイク便がこっちに気がついたのか、信号無視で通過!
ボッサンはマイクで
「はい~、緊急車両通ります~」
バイク便はスピードを緩めない。
前方の横断歩道を幼稚園児と保母さんが渡って行く!
バイク便はすり抜けて行った!
ミニパトはフルブレーキ!
幼稚園児の列の前で止まった!
園児たちが横断歩道を渡りながら
すず「あ、パトカーだ。かっこいい!」
しお「これはミニパトっていうんだぞ。スッゴくおそいから、はんにんはにげちゃうんだぞ」
と言いながら渡って行く。
レミは笑顔で手を振りながら
「言ってくれるわね!」
「絶対捕まえてやる!」
追撃開始!
バイク便は真っ直ぐ行ったが、レミたちは細い道を右折した。
「この辺の地理は任せて」
と言って、車がギリギリ一台通れるような道を、全開で走る!
「おぉ-!誰か出て来たら、避けられんぞ!」
「出て来ないように祈ってて!」
広い公園に出た。
公園を斜めに突っ切る!
砂利道に入る。緩やかな左コーナー。
シフトダウンしてハンドルを切る。リヤを流してカウンターを当てながら駆け抜ける。
広い道に出る。
前にバイク便が見えた!
バイク便は国道に入る。
2車線道路をスイスイと車の間を抜けていくバイク便。
「じゃまだ~!どかんかい、ボケ~!」
ボッサンがマイクで叫ぶ!
一般車が左によけて、追い越し車線が空いた。
レミがコンソールにあるスイッチに手を伸ばした!
「ニトロ使うよ!」
「何?」
※ニトロ=ナイトラス・オキサイド・システム(NOS)。亜酸化窒素ガスをエンジン内部に噴射するシステム。
レミがスイッチを押す。
途端に、ホイルスピンしながら加速していく!
「おぉーーー!!」
そして、あっという間にバイク便と並んだ!
バイク便の兄ちゃんがミニパトを見ると、サンルーフから身を乗りだして、銃を構えてるボッサンがいた!
「止まれ-!止まらんとぶっ放すぞ!」
「ひぇっ!」
バイク便の兄ちゃんを確保。
捜査1課の取り調べ室
「貴様!俺に何の恨みがある!」
ボッサンは椅子に座っているバイク便の兄ちゃん(いけっち)に向かって怒鳴った!
「ちょ、ちょ、ちょ、待って、待って、待って。違うんです、違うんです。」
「何が違うんだ!」
「違うんスよ。頼まれたんですって」
「誰に?」
下がって来たメガネを指で上げるいけっち。
「オンラインゲームで知り合った奴なんスよ。指定の場所に荷物を届けるだけで10万円って言われたんスよ。
で、いざ届けて帰ろうとしたらあの爆発騒ぎで、怖くなって逃げちゃいました」
「そいつに会ったんか?」
「いえいえ。会ってないですって。家に封筒が送られて来て、コインロッカーのカギと荷物の届け方が詳しく書いてある紙が入ってて、
コインロッカーに、バイク便のユニフォームと荷物が入ってたんスよ。お金は封筒に入ってました」
「おかしいと思わなかったんか?警察署に届け物って」
「なんでも友だちの警官に、サプライズのプレゼントをしたいからって言ってました」
「とんだサプライズパーティーだったな。」
このパーティーの主催者を絶対に捕まえてやる‥
ボッサンは思った‥