執念
ボッサンは、あるアパートの前で止まった。
バイクを停めて階段を上がろうとすると、2階の一番奥の部屋から男が出て来た。
とっさに階段の裏に隠れる。
男が階段を下りた所に、ボッサンは後ろから声を掛ける。
「池谷」
ビクッとして振り返る。
「びっくりした~。あれ?刑事さんじゃないスか。まだ聞きたい事あるんスか?」
捜査1課の部屋
ラッキーデカ長の携帯が鳴る。
「もしもし、拳か?俺だ。‥ああ‥分かったのか。‥何?本当か?‥分かった。助かったよ」
携帯を切って立ち上がるラッキーデカ長。
「破片手榴弾M67を買った奴が分かった。池谷狐男。ボッサンに小包爆弾を渡したバイク便の奴だ!」
驚くユオ。
「え~!うっそ~!一回捕まえたのに~。」
「重要参考人として引っ張るぞ。ユオ、もりもり、行くぞ!」
「イエッサー!」
「イエッサー!」
「池谷、上手い事俺らをだましたな」
「ちょ、ちょ、ちょ、待って下さいよ。何の事ッスか?」
「とぼけんなよ」
「だって僕、釈放されたじゃないですか~!」
「釈放される事は分かってたんだろ?」
「分かってないですって!」
「ワザと捕まって釈放されちまえば、犯人として疑われない。そうだろ?」
「・・・」
「ずっと考えてたんだよ。盗聴器はいつ仕掛けられたかって。仕掛けられるのは、バイク便に化けて爆弾持って来た、あの時しかないんだよ!」
「・・・」
「小包が爆発した後、俺らが追いかける様に、わざと門の所にいたんだよな」
「クックックッ」
いけっちは右手をスカジャンのポケットに入れた。
と同時にボッサンは銃を抜いた。
「おっと!その右手をゆっくり出しな!」
いけっちが右手をゆっくり出すと、手榴弾が握られていた!
サイレンを鳴らしながら、池谷のアパートに急行するラッキーデカ長たちのパトカー。
「じゃあ、ゲームで知り合った犯人に10万円で頼まれたってのも、うそッスか?」
「全部芝居だったんだな。」
「いくら10万円が欲しいからって、初対面の奴に自分ちの住所教えないよな。普通」
「ユオ~早く気付け~」
池谷のアパート前
向き合う2人。
ボッサンは銃を構え、いけっちの右手には手榴弾。
「お前のカミサン、今頃1人で寂しがってんじゃね~の?クックックッ」
「あ~、さっき会って来たぜ。お帰りって、ウインクしてくれたさ」
「何?」
「残念ながら、ワナには掛からなかったぜ」
「くっそ~!!」
左手で手榴弾の安全ピンに指をかけた!
「バカ!よせ!」
「撃てるもんなら撃ってみろ!」
「お前、俺に何の恨みがある?」
「まだ気付いてないのか!」
「最近、物忘れがヒドくてな」
「ふざけるな!てめ~は俺の人生をメチャクチャにしやがった!」
「・・」
「1年前だよ。川口市内で幼女誘拐事件が起きた。たまたま近くを歩いてた俺を逮捕して、2日拘留したよな。
家も家宅捜査されて、結局真犯人が逮捕され俺は釈放された。家の近所の奴らは俺を変態扱い、会社はクビ。
その時、俺を尋問したのが、貴様だ!俺を頭から犯人扱いしやがって!釈放しても、謝罪のひとつもありゃしね~!
俺は決めたよ。貴様に復讐すると!ぶっ殺してやると!1年じっくり考えて準備してきたんだよ!この気持ちが分かるか?あ~?」
「思い出した。あの時は悪かった」
「悪かったじゃね~よ!」
「でも、もういいんじゃねーか?こんだけやれば」
「ふざけんな~!!」
いけっちは手榴弾の安全ピンを抜いた‥