復讐
捜査1課の部屋
ボッサンは部屋に戻った。
ユオとモリモリは、ソファーで寝ている。
起きているのはラッキーデカ長だけ。
「ボッサン、戻ったか」
「うぃ~っす」
「発見されたバンは盗難車だとさ。指紋は綺麗に拭き取られてたよ。、犯人の手掛かりは無しだ」
手掛かり無しか‥
しかしあの盗聴器、いつ、仕掛けたんだろうか‥
ボッサンの家
かおるは目を覚ました。
台所の隅で、椅子に両手両足を縛りつけられている。
口にはガムテープ。
目の前で、男がしゃがんで何かやっている。
男が振り返る。
「奥さん、お目覚めかい?」
「うー、うー!」
「恨むんなら、旦那を恨みな」
「うー、うー、うー!」
「最後だから説明してやるよ。右のテーブルの足に手榴弾が固定してあるんだ。
そして、安全ピンにピアノ線をつないで、その端を左の棚の下に結んであるわけだ。
このピアノ線、細いから立った状態からじゃ見えないんだよ。
まず、あいつが奥さんを見つけるだろ?当然助けに来るよな。
すると、このピアノ線に足を引っ掛けて安全ピンが抜けるわけだ。
で、この手榴弾、信管の火薬を調整してあるから、1秒で爆発するんだよ。だからピンが抜けたら逃げる暇はないんだよ。
あいつは興奮すると周りが見えなくなるから、絶対引っかかる。あいつと仲良く天国に行ってくれ。じゃあな。クックックッ」
男は出て行った。
(なんとかしないと‥)
午後4:00
ドアの開く音。
「玄関の鍵開いてたぞ。閉めとけって言ったじゃん」
(帰って来た!)
「かおる、どこだ?」
(お願い!見つけないで!)
「着替えのパンツ、間違えてお前の持ってっちゃったよ」
「履いてもいいんだけどさ~」
(見つけないで!)
「俺のってデカいじゃん」
(お願い!!)
「かおるどこ~?」
ボッサンは椅子に縛り付けられているかおるを発見した!
「かおる‥!?」
(見つかった!)
「どうした!誰にやられた?」
(こっちに歩いて来た!)
かおるは思いっきり首を横に振る!
(来ちゃだめー!!)
「うー!うー!」
ボッサンが止まる。
ピアノ線まで2m!
「ん?」
かおるは、あごで手榴弾のある方を教えるが、早く助けたくて目に入らない!
「かおるをこんな目にあわせやがって!」
ボッサンが一歩踏み出した!
(だめー!!)
「うー!うー!うー!」
首を思いっきり振り続ける!
「ん?何なんだ?」
辺りを見渡すが気がつかない!
ピアノ線まで1m!
「取りあえず口のガムテープ取ってやるよ」
一歩踏み出す!
(いやーーー!!)
「うーーー!!」
かおるはボッサンの顔をじっと見た!
ボッサンの足が止まった!
あと10㎝!
もう一歩踏み出したら終わりだ!
かおるはボッサンの顔をじっと見て、
ウインクをした。
「何?」
かおるはウインクをし続けた。
その目から涙がポロポロこぼれ落ちる。
(気づいて!お願い!!)
「何ウインクしてんだよ。こんな時に!…ん?今朝もしてたよな‥?」
今朝のやり取りを思い出す‥
『足腰弱ってんだから気をつけてよ~‥』
『練習したら出来たのよ~♪‥』
『足元に気をつけてね♪‥』
!?
「足元に気をつけて?」
ボッサンは足元を見た。何も見えない。
ゆっくりしゃがんで見ると、ピアノ線が見えた!
ピアノ線をたどっていくと、手榴弾を発見!
ピアノ線を外す。
かおるの周りも注意深くチェックする。
大丈夫みたいだ。
かおるの口からガムテープをゆっくり剥がす。
目に涙を一杯ためながら、かおるは微笑んだ。
「気付いてくれてよかった‥」
手足のロープをほどくと、崩れる様にボッサンの胸に飛び込んで来た。
「本当によかった‥」
ボッサンは、かおるとネコのナオ、マルを実家に行かせた。
そして、愛車“バリオス”にまたがり、ヘルメットをかぶった。
エンジンをかけようとして、ハッとした。
「まてよ?あいつなら出来るな!…そうか!あいつだったのか!」
ボッサンは、ある場所にバイクを走らせた‥