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アプリアル!  作者: 華月蒼.
第一話―――「アプリアルファイト」
10/18

2-5.野戦と修行

久しぶりの更新です……

 

 

 

 野良戦をしているグループの所に着くと、既に梓はその面々と馴染んでいた。野戦で用いられるアプリや戦術などを聞いているのか、頷いたり感嘆の声を上げているのが見て取れる。


「で、ココで相手の攻撃(かわ)したらアプリアル起動! ってなわけよー。で、相手はドカーン」

「まぁ、習うより慣れろってとこの方が多いと思うぜ? 梓チャン」

「なるほどなー……って、だからチャン付けはやめろって言ってんだろ!」


 十代半ばから後半にかけての少年・青年たちの集まりの中なのに、成人済みのはずの兄が溶け込んでいるのはなかなか不思議な感覚だ。普段はあんなに迷惑がっていたはずの少年たちの一団に混じり、アプリアルファイトの指南を受けている梓をしばらく眺めていると、不意に梓はポケットをごそごそと探り出す。


「確かに習うより慣れろってカンジだわな! んじゃぁ早速……ってアレ?」


 やはり梓が探しているのは、僕が今手に持っている端末らしい。基本的な説明を受けたら実戦に移りたがるのは梓のクセだ、すぐにわかる。そしてすぐに端末を持ち歩き忘れるのもだ。端末を忘れたことに気づいた様子の梓に、周りの少年たちも気づいたようで、しきりに梓をからかっている。その様子をやはりしばらく眺めてから、僕は梓に声を掛けることにした。


「お探しの品はこれですか、オニーサマ?」


 梓の端末の新たに付けられた赤いストラップの部分(昼間累に言われて付けたもので、手首を通して持つことで落下を防ぐことが出来る、一般的なタイプのモノだ。一応僕も色違いの青いモノを付けている)を持ってぶらぶらとぶら下げて見せる。


「あーそれそれ! わざわざ悪いな橘!」


 僕が差し出した端末を受け取ると、梓はまた少年たちの輪の中に戻ろうとする。どうやら早速一戦交えてみたいようだ。


「端末はいつも持ち歩いてくださいって言ってるでしょう……って何戻ろうとしてんですか」

「いやぁ、だって習うより慣れろって言うじゃん?」

「じゃん? じゃありませんよ。今何時だと思ってんですか!? 明日も累さんからいろいろ教わる約束でしょうに」


 それでも「慣れろ」の一戦をやりたいらしき梓の衝動を止めたのは、僕の言葉に反抗しようとした梓の口が開くと同時に当たりに鳴り響いた、梓の端末の就寝アラームのメロディだった。




「何か不機嫌じゃね、お前?」


 家に戻り寝る支度を整えていると、不意に梓が尋ねてくる。僕は至って平静を装っていたのだが、やはり雰囲気というのはにじみ出てしまうものらしい。もちろん、僕の機嫌が損ねられている理由は何となく、うすうす自分でもわかりかけてはいる。だが、決して認めたくはないという思いが勝ってしまう。僕は特にその問いに対して肯定もせず、さっさとベッドに入り狸根入りを始めることにした。


 しばらく梓の方から視線を感じたが、やがて溜め息を吐くと、部屋の灯りを消してすぐに寝息を立て始めた。






 それから大会が始まるまでの数日は、累による特訓と、夜の野戦での実戦に明け暮れていた。


 梓はアプリアルでの戦闘に慣れるのにそう時間は掛からなかったらしく、今はより多くの経験値を溜めるために実戦を行なっているようだ。また、常に戦闘に役立つアプリに関する情報を集めるためか、端末を持ち忘れるという事も減って行った。


 一方の僕は、対サポーター戦という前例のない大会の様式に合わせ、さまざまな情報を集めたり等の作業をしていた。ラインハルトカップでは、サポーターは必ずしも端末のアプリ操作によるサポートに限らないという規定がされているため、僕はPCでサポーターをするつもりでいた。既存のアプリやソフトでも、PCでのアプリアルファイトやサポート自体は可能だが、まだまだ未開拓の分野であるという面も多く、なかなか僕としては満足するサポート用のツールが見つからないでいた。なので、僕は大会に関する情報を集める作業の傍ら、自分用のサポート用ツールの作成も行っていた。


 互いに一日中、作業や実戦に追われていた為、梓との会話は以前よりも減っていたが、そもそもこの依頼自体が異例(イレギュラー)のようなモノなので、二人とも自分の役割でいっぱいいっぱいだ。







 結局僕たちは、味方同士でありながら互いの手の内が全くわからない状態で、大会当日の朝を迎えた。


 会場に着くと、案内係の男性が手に看板のような大きな札を持ちながら、受付の場所を案内している。その案内に従って、無事に大会出場の受付までたどり着いたのだった。


「こちらが、予選リーグのリーグ表となっております」


 そう言って営業スマイルを浮かべる受付嬢から受け取った紙を見て、梓が、うげ、と半ば呻くように言う。


「……総当たり戦かよ」


 何試合するんだと数えながらブツブツと呟く梓を引きずるようにしながら、僕は手続きの終わった受付を離れた。


「兄さんが嫌なら、今から辞退しようか?」


 適当に空いているベンチを見つけてそこに梓を座らせて、念のために尋ねてみる。一番体を張るのは梓なのだから、拒否権は梓にあると思ったからだ。


「いや、やる」


 眉間にシワを寄せたままそう答える梓。


 辞退すれば、優勝賞品はおろか、報酬までなくなるかもしれないという心配からか、梓は頑なだ。座る梓の正面にしゃがんでいるが、梓との目線は合わないままだ。


「わかった。僕はサポートしかできないけど」


 そう告げて立ち上がると、梓がこちらを見上げてきた。


「頼りにしてるからな、橘」


 笑いながらそう言う梓に、出来る事なら代わってやりたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

次回から戦闘ターンに入ります!(`・ω・)

更新予定は未定ですが、気長にお待ちいただければ幸いです。

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