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SPDO

 大村はまず政府の極秘機関SPDO(特殊能力開発機構)へ赴いた。とある山の裾野にその施設はひっそりと存在した。

 空の青さと太陽の光で映える緑の葉の眩しさに、大村は思わず心が洗われるようだった。

 大村は古い総合病院の中へ入る。病院の中は、入院患者独特の匂いと消毒薬のツンとした匂いが鼻の中で混ざる。

 ひとけのないひっそりとした場所にある『関係者以外立ち入り禁止』と放射能マークが描かれた扉へ大村は向かい、部屋の鍵を開ける。

 その扉を開けると真っ白な部屋が現れ、扉とパスワード・指紋・静脈・音声・虹彩を確認する認証機がある。認証を終えて扉が開くと延々と長く続くベルトコンベアーのような歩道が現れる。扉の中へ進むと、先ほどの病院独特の匂いがなくなり、空気清浄機が常にせわしなく作動している音が聞こえる。

 大村はこの自動歩道をのんびりと歩きながら目的地へ向かった。

 彼女が入ったこの総合病院は表向きのもであり、本来のSPDOは施設は山の奥にある。

 SPDOの目的は超能力者育成・及び有事や事件の解決を図るための極秘の超能力組織集団と言っても過言ではない。

 ロストナンバーズのgiftたちも一度はここを訪れる。この施設で能力を測定し、能力のランクが決められる。

 S~B1までがここの施設で最新の治療などを受けられる。そして政府の上級公務員以上の給与を貰い、政府の元、各分野での精鋭として働いている。

 B2〜D3まではほぼ能力なしと決められると、経費節減のために委託された民間病院で治療することになる。しかし、B2〜D3の場合は大体普通の生活をし、特殊な治療を受けることもなく生活している場合がほとんどであり、ロストナンバーズのgiftたちのほうが例外と言えるだろう。

 白川はあれから、この施設で大村の能力の検査と薬の抗体性について詳しく調べてもらえるよう手配した。

 ロストナンバーズのgift達は、普段は指定の民間病院で通常の外科・内科の治療の他に、SPDOから送られる薬を投与される。

 大村はC2クラスと診断されており、このようにB1以下の能力者がSPDOで検査を受けることは珍しいことなのだ。

 ちなみに、S~A3までは能力を自分でコントロールでき、かつ自由度が高い。B1は訓練・育成次第でA3まで上がれる見込みのあるものである。

 S~B1までは脳を活性化する薬を投与しなくても100%の力を発揮でき、さらにはその出力に耐えうる精神と体を持っている。

 B2〜D3までは能力の低さ・体力と精神力の低さに加え、投薬しなければ100%の力を発揮することができない。それでも薬を投与されたとしても、S~B1の足元にも及ばない。

 もっとも、やはり能力があるものには惜しみなく投資するのは当たり前のことである。 


 検査用の服をまとった大村は、まっさらで糊の効いたシートの掛かったベッドの上で検査を受けていた。白川がもっと予算を増やしてもらって専門病院が欲しいとぼやいていたのを、明るく真っ白な天井を見ながらぼんやりと思い出していた。


 やがて2日間の検査が終わり、検査結果が出た。

 大村は服を着替え、ようやく外へ出た。空はオレンジがかり、カラスが鳴いていた。

 夕暮れ時の移動販売の豆腐屋のスピーカーの宣伝文句が響いている。

 SPDOの中は基本携帯電話などは電波が入らないため、大村はスマートフォンを取り出してようやく連絡が取れることに安堵した。

 そして部長の白川へ連絡を入れる。ところが、なぜか電話に出たのは訓練中のはずの川内だった。


 「あれ?白川部長は?」

 「まずは『ご迷惑をおかけしてすいませんでしょ?』」


 大村の疑問の前に間髪入れず川内の指導が入る。大村は川内に謝り、白川に報告の旨を伝えたいと言った。


 「ああ、部長は今忙しいから、あたしが代わりに聞いとくわ。」


 よく聞いてみると、川内の後ろからスローモーションのような叫び声が聞こえてくる。

 大村は不思議に思いつつ、川内に検査結果と、速達郵便で検査結果が部署に届くことを報告した。


 「そう、なるほどね。じゃあ今日はゆっくり休んで明日部長と相談しましょう。」

 「はい。」


 大村がそう返事をすると、川内はなぜか電話口で笑いを堪えていた。


 「きっとみんなあんたが早く帰って来るの心待ちにしてると思うわよ。」


 それは川内の皮肉なのか、大村にはよくはわからなかった。それより、検査結果が出たあと、これからどう動いていくのか、大村はそのことが気にかかっていた。


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