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オマケ1:狼元男

 「各自、フォーメーションを確認後、臨機応変に対処すること。作戦通り完璧に任務を遂行せよ。」


 大村のイヤホンに川内のピリピリとした緊張感が伝わってくる。

 しかし、その緊張感とは裏腹に、春の青空は澄み渡り、ゴルフ場の芝は青々と茂っている。

 大村の前には同じくイヤホンを付けた白川部長、そして警察の重役たちが楽しげに話し込んでいた。


 話は昨日に溯る。

 大村がロストナンバーズとの契約書を書き終えた時の事だった。

 痩身で黒く艷やかな髪をなびかせて、冷たい瞳の婦警の制服を着た人物がピンヒールを鳴らしながら大村と部長のいる部屋へ入ってきた。制服の胸元を開け、胸の谷間を強調している。


 「はじめまして。部隊の隊長を務める川内薫と申します。」


 川内と名乗る人物は大村に握手を求めた。大村も手を伸ばし川内と握手をした。


 「部長から話を聞いています。ちょうど明日任務があるので部隊の顔合わせ程度に参加して頂戴。」


 川内はいきなり入ったばかりの大村にそう告げた。言われた当の大村も目を丸くしている。


 「あなたは明日部長についていればいいだけだから。それから、明日までにこれを読んで全部暗記しておいてね。」


 そう言って川内は白川の机の上にあった『ゴルフのルール』という本を大村に渡した。

 大村は一晩漬けでゴルフのルールを覚えることとなった。


 翌日のゴルフ場に映える緑の芝が大村の目に痛かった。

 ロストナンバーズのメンバーはゴルフ場の送迎バスを貸しきり、ゴルフ場に着いた。ほとんどがゴルフウェアかキャディの制服を着ている。

 ふと大村は川内の方を見ると、心なしかキャディの制服の胸元が心もとないように感じた。

それよりこれから特殊部隊がゴルフ場で何をするのか、少し寝不足の大村は緊張を隠しきれなかった。もしかして要人の警護か、要人の警護か、要人の警護か・・・。そんなことが大村の頭の中を回り、ゴルフのルールを忘れかけていた。

 部長の白川と大村は先にバスを降り、残りのロストナンバーズ達はバスの中で作戦の確認をし、各自散らばっていった。


 大村の緊張をよそに、ゴルフは和やかに行われていく。近くを見ると同じ部隊の隊員が何人か見受けられた。大村は白川部長のゴルフバックを持ちながら、白川部長の後を追った。


 そしてある重役がフェアウェイの上のゴルフボールをクラブで打とうとした瞬間、クラブが思ったより深く地面をえぐった。その後、なぜかクラブは地面から上がっていて、見事にゴルフボールの芯にあたり、風を切る良い音を立てながら飛んでいった。

 しかしゴルフボールはバンカーに向かっている。その時、特に強い風もないのにゴルフボールはバンカーとは反対側の方へ方向転換し、グリーンに着地した。

 するとどこからか黒く大きな犬が入り込み、グリーンに乗ったゴルフボールを加えて遊びはじめた。


 「どこのバカだ!ゴルフ場に犬連れてきたのは!」


 ショットを打った重役は怒り心頭だったが、やがて犬は遊びに飽きたらしく、ボールをくわえてピン側まで持って行って落としていった。


 「これは・・・例外で動物が移動させたところから打つのが決まりみたいですね。」


 白川部長はそんなに動いていないはずなのに汗をかきながらにこやかに言った。重役も犬のおかげでホールに近い場所に短い打数で行けたことに内心喜んでいるようだった。

 犬の咥えていたゴルフボールは見事に一発でカップに収まった。


 やがて空の色がゆっくりと柔らかな夕暮れ色に染まり始め、各々のスコアの結果発表をし、犬にゴルフボールを咥えられた重役がトップだった。そして白川部長は最階位に終わった。

 大村にとって初めてのゴルフであったが、素人の大村ですら何かが起きたことは容易に分かった。

 そしてゴルフは終わり、各々解散することになった。大村と白川部長は朝の貸切バスに戻り、ドアを開けた。すると、重苦しい雰囲気が漂ってきた。隊員たちはひどく疲れ果て、中にはエチケット袋に何度も戻している者や、鼻血が止まらない者もいるという異様な光景だった。

 その中で一人、白いガウンを素肌に着た川内がいた。川内だけは素肌にガウン以外は普通のようだった。

 白川部長はようやく接待ゴルフから開放され、川内の横に力なく腰掛けてひどく大きく呼吸を繰り返していた。

 大村は白川部長と通路を挟んだ反対側の席へ座った。川内はガウンの足を組み替える。細いが、やはり鍛えあげられているのがよくわかった。

 川内はその冷たい流し目で大村に微笑みかけた。大村は思わず同性のはずなのに恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。

 それから川内がバスの運転手に病院に向かうよう指示し、バスは病院へ到着した。バスに乗っていた隊員たちは裏口から入り、各自治療を受けていた。

 相変わらず白いバスローブを着た川内と、ジャージの大村は待合室の長椅子に座っていた。


 「大体わかった?」


 唐突に川内が大村に話しかけてきた。大村は一瞬その意図が分からずあたふたしていた。


 「まぁ要人警護ってのもあるけど、今回の任務は『接待ゴルフ』ってとこね。本当の重要な要人やどっかの国の大統領なんかが来れば他の部隊が警護するけど、私たちはだいたい警察の重役やその知り合いの接待ゴルフがうまくいくよう自分たちの能力を使ってるの。」


 そう言って、さらに詳しい説明を川内が進めていく。ロストナンバーズに集められたのは超能力者としては能力が劣る者や、機動隊で手におえないもの達を寄せ集めた集団だと言った。


 「でも、白川部長は私達のことを『gift』って呼んでるわ。あの年で中二病入ってて、もうちょっといいネーミングセンスないのかと思っちゃうけどね。」


 そう言って川内は初めて穏やかに笑った。


 「『俺達は役立たずの能力者じゃない!』って言ってたバカが昔いてね、白川部長もそれに感化されてたみたい。だから、自分たちは路傍の石ころでもなく、道具でもない、『gift』という立派な才能をもった人間なんだって未だに主張してるわ。」


 川内は遠い目をしながら、どこか楽しげでもあり淋しげな表情をしていた。

 その細く美しい横顔に思わず大村は見とれていた。

 すると、川内の横にひどくニンニク臭い白川部長がやってきた。


 「あのさ、私の鼻のこと知っててわざと近寄るのやめてくれない?」


 川内は先ほどと打って変わって明らかに白川部長を倦厭していた。


 「うー、やっぱニンニク注射は効くわ〜。」


 そんな嫌がる川内をよそに、接待ゴルフから開放された白川部長は大きく背伸びをした。


 「川内、お前はいいよなー・・・。」


 白川部長は川内を見てそう言った。当の川内は眉間にシワを寄せて鼻を摘んでいる。不思議そうにしている大村に白川部長は説明する。


 「川内は俺たちgiftの中でも珍しく覚醒治療も予後の治療もほとんどいらなくて、自分で能力をコントロールできるんだ。」


 「え?でもそんなすごい人がどうして?」


 大村は目を丸くする。大村と白川部長に挟まれた川内は話をしたそうだったが、白川部長のニンニク注射の匂いで口で呼吸するのが精一杯だった。


 「まぁ、川内は狼男なんだけど」


 「狼男?でも女性じゃないですか!」


 白川部長の言葉を遮って大村が大声を出した。


 「あー、そこからはじめないとなぁ・・・。」


 白川部長は面倒くさそうに言った。

 もともと川内の体は男で狼男の素質をもっている。しかし、性同一性障害だった。だが、狼男の性質は男性の性を決めるY染色体に付随しているため、見かけの性別や戸籍を変えてもなんら狼男としては問題なかった。

 白川部長が説明する間、川内はひどく嫌そうな目で白川部長を睨みつけた。


 「あ、まぁその狼男なんだけど、狼って言われても雑種の大型犬に見えなくもないし、第一警察犬がいるからね。実際能力のランクとしてはB3くらいなのか?鳥に変身できたり、小さな生き物を操ることのできる能力のやつのほうがランクが高くて重宝されてるからなぁ・・・。」


 確かにこの時代に野良犬も見かけなくなったし、第一野良犬は狂犬病が怖くてすぐ通報されてしまう。任務には確かに適していないかもしれない。そして警察や政府としても狼男という能力にはさほど利用価値がないと判断しているのだろう。

 ふいに、川内は顔を真っ赤にして立ち上がった。


 「あーもー!臭い!帰る!」


 そういって白川部長の財布からタクシー代をもぎ取ってガニ股で帰って言った。

 次の日から、川内によって大村は体力作りのための地獄の日々がはじまった。



 やがて、大村の事件のあと、川内と大村の間には女子的な穏やかな絆が芽生えていた。

 ある日、いつもより早く大村が更衣室に着くと、川内がブラジャーの中にパットを沢山詰めていた。

 川内は顔を真赤にし、口をパクパクとさせていた。


 「と、扉閉めなさい!」


 大村は川内に怒鳴られてやっと扉を閉めた。川内は顔を真赤にして恥ずかしそうにして後ろを向いた。

 ふと、とうとつに川内が話し始める。


 「あのさ・・・胸にシリコン入れたかったけど、どうしても変身の時に邪魔になると思って女性ホルモンだけしか打ってないの。一応胸っぽいのはできたけどさ、女になるんだったらやっぱり大きい方がいいでしょ?」


 そう言いながら胸を両腕で隠しながら半身を振り向かせた川内は今までにみたこともない、可愛らしく悲しげな表情をしていた。


 「いや・・・どうなんでしょう・・・。大きくても肩凝るって言うし・・・、服も大きめサイズしか着れないとか聞くし・・・。」


 と大村が曖昧に答えると、目をうるませた川内が大村の両胸を両手で下から鷲づかみにし、大村の大きな胸を何度も上げ下げした。

 大村の豊かな胸は壮大に激しく上下に揺れる。


 「こんな大きなおっぱいが邪魔だから体力つかないのよー!こんなの脂肪の塊じゃなーい!」


 川内は負け惜しみを言いながら、大村のFカップの胸を揺らし続けた。大村は苦笑いしながら川内の大人げない行為を優しく見守っていた。


川内さんは性同一性障害の狼元男で貧乳。

方や大村ちゃんはなんとFカップでした。ちなみに大村ちゃんは任務の際は胸が邪魔にならないようにサラシを巻いています。

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