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幼い日の思い出  作者:
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思いを寄せる少年

「宿泊訓練をする場所は…この、真白葵中学校!どうだっ?嬉しいかっ?」

『ま、真白葵ましろぎ中学校〜?!』

クラス全員が声をそろえて、大声を上げると、教室に声が木霊こだました。

「おぉ!そんなに喜んでくれるとは、先生も強くプッシュしたしたかいが

あったなぁー。」

「せ、先生がプッシュしたの〜?!」

「おう、そうだ。他の先生は光景山みつかげやまがいいんじゃないか…って

言ってたんだがな。まぁ、生徒も山奥みたいなところじゃ嫌がりますし、

案外いつも来ている学校の方がいいんじゃないかと思うのですがっ!!と、

猛反論したら…と言うわけだ。先生に感謝しろよー。じゃあ、HR終わりっ。

あー宿泊訓練については、今日の五時間目の授業の時にまた詳しく話すから。

はいっ解散!」

(ひっ、ひどいー!こンの熱血ティーチャーめがぁぁあ!)

誰もがそう思ったであろう。

「真央ちゃーん!折角楽しみにしてた、宿泊訓練なのに学校でだなんて、

ひどいと思わない?!いつも、学校にいるんだから、たまには別の所に

行きたいのにぃー。」

佳絵は真央の机をバンッと叩き共感を求めた。真央は苦笑いをしながらも、

佳絵をなだめている。

「いいじゃん、いいじゃんっ。学校も案外楽しいかもヨ?」

「むふぅ〜。そかなー…。真央ちゃんも居るもんね、どこに行っても楽しいよね。」

共感を求めていたのに、なだめられてしまった佳絵は少しうなだれていたが、

さっきあった怒りはそれほど感じられなかった。

「そう、そうっ!それに小太郎君達と同じ班だしぃー、接近するチャンスだヨ!!」

真央は、一緒に話している小太郎と誉をチラッと見て、ムフフと笑った。

「なっ?!そ、そんなっ別に…小太郎君とか…関係ないしぃー…」

次第にゴニョゴニョと口ごもる佳絵の顔はリンゴ色に染まっていた。

「好きなんでしょ?小太郎君の事っ!ふふっ。隠したって無駄ヨー。

佳絵の事だもんすぐ分っちゃうっ。」

真央は頬づえをつきながら、にこにこと笑っている。

佳絵はと言うと、静かにコクンを頷き真央の横の席―誉の席―に座った。

「態度。…露骨に出てる?」

「わりと。」

「えー!ほんとぉ?小太郎君は気付いてるかなぁ…?」

「ん、それは大丈夫だと思うヨ。佳絵のラヴラヴ光線にも大した反応示さないし。」

二人が小声でコショコショ話しているのを目ざとく見つけた誉が二人に

近づいていき、ポンッと真央の頭を後ろから軽く叩いた。

「ここ、俺の机なんだけど。・・・真央達何話してんの?」

「えっ?!や、あぁ、何だぁ〜誉ちゃんかぁ。よかった〜。」

「ゴメンね、麻岡くん。すぐ退くから。」

誉は「別にいいよ。」と言って、二人の正面に回った。

「小太郎の事…かな?あいつがどうかしたの?」

「うーんとね、小太郎君ってさ、やっぱりモテルじゃない?

本命って居るのかなぁ…と。」

「そんだけ?居ない事も無いと思うけど、俺の予想だと一人しか

思いつかないな。」

そう言うと誉はチラッと真央を見た。真央はキョトンとして気付いていない

ようだけど、佳絵はその行動だけで全てを悟った。一方真央は「えー!誰、誰?」

と、しつこい程聞いてきたが、誉はすっとぼけて教えようとはしなかった。

「もーっ!誉ちゃんってば教えてくれてもいいのになぁー。ねっ佳絵。」

「え?あ、うん。そうだね…。」

「どうかした?なんか元気ないなぁ。」

真央は佳絵の顔を覗き込んだ。佳絵は心配させまいと、無理に笑顔を作って

ごまかした。

「ううんっ何でもないの!!あっ、そうだ。利緒君からラヴレター預かって

きたんだっけ。」

佳絵は自分の机―真央の机の右前―に手紙をとりに行き、

青い手紙を真央に渡した。

「利緒君?って1年生??」

「うん、真央ちゃんってばもてるねっ!真央ちゃんは知らないかもしれないけど、

利緒君って先輩にも同学年にも、もててるんだよぉ。学校の王子様的存在

ってやつ?頭よし、顔よし、性格よし、運動神経もよし!

完璧な男の子なんだよ!」

佳絵は夢を見ているように、トロンとした瞳で力説している。

いかにも羨ましそうに、「付き合っちゃいな。」とでも言いたそうに

あおっているが、真央は興味が無さそうに頬づえを付きながら

しばらく聞いてあげていた。けど、中身も見ずにパッと佳絵にラヴレターを渡すと

「捨てておいて。」とだけ言って、教室を出て行ってしまった。

「えー!ちょっと待ってよぉ。真央ちゃん?!」

佳絵は小走りで真央を追いかけた。真央は静かに屋上へと入って行った。

こっそりと屋上の扉を開け外を覗くと、真央はフェンスに寄りかかりながら、

なにやら物思いにふけっていた。

(真央ちゃん…。)

すると、真央はこちらに気がついておいで、おいで、と手招きをした。

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