二人の少年
「おっはよー!誉ちゃん、小太郎君っ!!」
「おはよー、真央ちゃん。」
小太郎と呼ばれたその長い髪の背の高い―真央から見ると背の高い―少年が
ニコッと真央に笑い掛けた。
「あのさー、真央ちゃんが俺にあいさつしてくれるのはいいンだけどさー。
小太郎って呼ばれるのあんまり好きじゃないわけよ。」
小太郎はくだけた喋り方をしながら、真央の机の上にヒョイッと乗っかった。
「いいじゃないっ、小太郎って名前かっこいいと思うわ。私は好きよ。」
「まぁ、真央ちゃんが言うなら(ハート)。」
と、小太郎が真央にハートを飛ばしているのを見ると、今まで黙っていた
もう一人の少年が口を開いた。
「…調子の良い奴。」
それに小太郎はピクッと反応すると、眉を吊り上げながら少年のほうを振り向いた。
「なにおぅっ!だって、真央ちゃんが言ったんだもーん。変な名前はお互い様だしね、誉。」
誉の眉もピクリと動く。
「変な名前はお前だけっ!プレイボーイの小太郎にはピッタリかも、だけど。」
誉は怒った口調でそれだけ言うと、自分の机―真央の机の隣―に鞄を置きに
いった。小太郎は、誉の言葉を笑い飛ばした。
「はは〜ん。さては、俺様がかっこよすぎるからって…。ひがむな、ひがむなっ!」
勝ち誇ったかのような言い方をして、小太郎はさわやかに笑い出した。
「なっ…!いや、それは絶対無いからっっ!」
『絶対』のところを特に強調して、誉は顔だけを小太郎のほうに向けて、言った。
「二人って、仲良いんだか悪いんだか。」
「良いに決まってるじゃん。」「悪いに決まってるし。」
声をはもらせて、小太郎と誉は真央に主張した。
「えー!誉ちゃんってばひどいー。俺達バリバリ仲良いっしょ?」
小太郎は大げさに泣き真似をして、完璧に遊んでいる。
「どこがっ!お前が仲いいのは、全部女の子だろーっ。」
「やだぁ、誉ちゃんってばヤキモチー?」
オカマ口調で、小太郎は誉に擦り寄る。
「誰がだっ、誰がっ!引っ付くなぁー!あ゛―っ!」
客観的に見ても背が低い誉と、背が高い小太郎。誉は小太郎を振りほどこうと、
悪戦苦闘している。見ていてちょっと可哀相だが……おもしろい。
「もうっ!小太郎君、あんまり誉ちゃんを苛めないでヨー。」
「だぁって誉ちゃん可愛いんだものー。」
そう言って小太郎は、誉の頭を小突いた。誉は痛そうに頭を抱え、
小太郎をキッっと睨んだ。
「いったぁ〜!何で、そこで頭を叩くんだよっ。」
「なんかムカツいたから。」
小太郎はあっけらかんと答えると、やらしい笑みだけを残して、教室を出た。
誉はというと、頭を擦りながら鞄の中の教科書を机に移し、「全く…。」などと
ブツブツ呟いていた。
「小太郎君ってば、荒っぽいなー。誉ちゃん大丈夫??」
「別に平気さ。このくらいの事だったら慣れてるしね。」
そう言いながらも、誉はまだ頭を擦っていた。
「確かに小太郎君はちょっと荒っぽいけど、その…かっこいいわよね…。」
佳絵は少しうつむき、顔を赤らめながら言った。
「まぁ、確かにね。小太郎君はかっこいいし、もてるけど…ねぇ。」
「うん、まぁ。でも性格がちょっと、アレだね。」
しばらくしてから、また教室に戻って来た小太郎を遠い目で見ながら、
二人は言った。すると、その視線に気付いた小太郎が笑いながら、
こっちに寄って来た。
「俺がかっこよすぎるからって、あんまり見つめるなよー。えー何、何?
真央ちゃん俺に惚れちゃった?♪いや〜ん小太郎困っちゃうー。」
(…確かに、性格がちょっとアレ…ね。)
「勝手に困ってろーっ。ほら予鈴なるよっ!早く席に着く!!」
真央がそう言うと小太郎は仕方なく席についた。と、その時丁度チャイムが
鳴った。すると先生が入ってきて、HRが始まった。中2になった彼らは、
もうすぐ一泊ニ日の宿泊訓練に行く予定だった。突然の話に、クラス全員が声を
あげて喜んだ。しかし彼らは後に、不幸のどん底にいるような気持ちになった。