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幼い日の思い出  作者:
22/34

決意

「あ!真央くん!よかった。戻って来たんだね、大丈夫かい?」

「はい、大丈夫です先生。あの…先生とちょっとお話したいんですけど。」

真央はそう言って誉をチラッとみた。するとその視線に気づいたように誉も物言いたげな表情で真央を見返した。

先生は二人の気まずい雰囲気を察してか、「わかった、外で聞かせてもらおうか?」

と言って、素早く真央を病室の外に連れ出した。


「先生、私お願いがあるんです」

「お願い?なんだい、言ってみてくれないかい?」

「あの…誉ちゃんの病院内での世話係をやらせてもらえないでしょうか?」

真央はためらいがちにそう言った。

「誉くんの世話係を?」

「はい。無理な事を言ってるって分かりますけど、どうしてもそうしたいんです」

「しかし…」

「全部世話が出来るなんて思ってはいません。ただ、ずっと誉ちゃんと一緒に居たいって思って。誉ちゃんにとって私がいて助かる事が少しでもあるといいなって…。やっぱりダメですか?」

「うむ…」

先生は腕組みをして眉間にしわを寄せながら懸命に考えていた。

「いいじゃないですか、蒔田先生」

突然の声に振り向くとそこには先程の看護婦さんがいた。

「しかし、村上くん…―」

「私が誉くんの担当につきますから、真央ちゃんにはその手伝いをしてもらうという事で。構いませんか?」

「…わかったよ、僕も鬼じゃないからね。許可しましょう。」

先生は仕方無いと言ったような口ぶりで軽く溜息をついた。

「じゃあ僕は他に仕事が沢山あるからもう行きますよ。村上くん、あとは頼んだよ!!」

そう言って先生は走り去ってしまった。

「真央ちゃん、じゃあ今から色々説明しましょうか。そうそう、言い忘れてたけど私の名前は蒔田ときた こずえよ。『梢さん』でいいわよ」

「え、蒔田??でもさっき村上って…それに先生の名字も蒔田ですよね…ってことは?」

「うふふ。『村上』は旧姓で、今は蒔田先生と結婚して名字が変わったのよ」

照れながらも嬉しそうに彼女は言った。

「そうなんですか?!知らなかった…です。あー…そういえば私の知ってる人にも蒔田って名字の人いますよ」

「へぇ〜、そうなの。中々珍しい名字だと思ってたけど案外いるものね。何て名前の子?知ってる人かもしれないわ」

「えと、『時田 利緒』です」

「『蒔田 利緒』?その子…」



「あの誉の主治医とかって医者、利緒の兄貴だったのかぁ…」

「利緒ってバスケ部一年の、だろ?まぁ言われてみれば似てたかもな」

誉と小太郎は妙にしみじみとしていたが、小太郎は思い出したかのように突然大声を出した。

「って、そんな事はどーでもいいっちゅーねん!!」

「な、なんだよ。急に大声だして…」

「お前本当に真央ちゃんのことだけ忘れてるのか?!」

「忘れてるも何も…」

「俺はお前を許さねぇぞ!!お前だったら諦められるって思ったけど、今のお前に真央ちゃんは譲れない!!諦めきれない!!俺が真央ちゃん盗ってやるからな!!」

小太郎は呆然としている誉に「覚えとけよ!!」と捨て台詞をはいて、部屋を出て行った。

「…小太郎は一体何が言いたいんだ」

(ちきしょー…っ!!誉のおたんこなす!!スカポンタン!!アホンダラ!!……こんなのって、ねーよ…)

(コンコンッ)

小太郎が部屋から出てすぐ後に部屋の扉がノックされた。

「…?誰だろ…」

誉が「開いてますよー」と言うと、扉は遠慮がちに開けられた。

「誉ちゃん」

扉の向こうにはスッカリ落ち着いた真央の姿があった。

「えと…君は…」

「…初めまして、冬月 真央です」

「えっ、初めまして…?」

(さっきはさんざん知り合いっぽく言ってたのに…)

「今日から私が誉ちゃんの身の回りの世話をさせて頂きますのでよろしく」

「…は?え…っ、あ、だって看護婦さんとか…」

「許可はとりました」

「……。」

「でも今日はもう面会時間を終わるから帰るけど、明日は朝から来るね」

そう言って悪戯っぽく笑うと、真央はポカンとしている誉を残して病室を出て行った。

(…一体どうなってるんだ)

一人部屋に残された誉は、深い溜息をつきながら再びベットに横になった。

「冬月さん…か」

(本当に俺の知り合いか…?でも…なんだかあの笑顔懐かしい気がする)



どうしても思い出せない…でもどうしてだろう?

泣きそうな顔が目に焼き付いて離れない・・・。


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