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幼い日の思い出  作者:
15/34

告白

小太郎は邪魔をすることを諦めて、ただ真央と踊れる事を楽しみに待つ事だけに専念するはめになったのだった。

「ね、誉ちゃん?」

「んー?何?」

「誉ちゃんってさぁ、好きな人とかいないわけ?」

「…なんで?」

「だって…、踊る人いなかったわけじゃなかったんでしょ。誘われたけど断ったとか、そんなとこでしょ。」

「うっ…まぁ。そういうことだけど…。」

「なのに、どうして私と踊る気になったのかなぁって。」

「理由?そうだな…」

真央が誉をじっと見つめるなか、後方からじと〜っとする小太郎の視線も受けつつ、真央の耳元で誉は小声で囁いた。

「…きっと真央だからだよ。」

真央は自分の顔が赤くなっていくのを感じた。

「ね、約束してくれる?」

「何を?」

真央は今まで見たことのない最上級の笑顔で言った。

「この日の事、絶対に忘れないって。」

と、真央がそう言った途端、メンバーチェンジの笛が鳴ってしまった。

二人の繋いだ手がゆっくりほどけていく。

変わりに、真央の隣には小太郎が残った。


「真央ちゃんって、誉の事好きなの?」

「…どうして?」

「いや、誰が見ても一目瞭然じゃんか。」

「好きじゃないと言えば嘘になるかもしれない。でも、それが恋愛感情かと聞かれれば答えられないわ。」

「…真央ちゃん、俺…俺っ…!真央ちゃんの事、好きなんだ…。」

「……え?」

一瞬、その場に嫌な空気が漂った。

「冗談言わないでよ…っ。人をからかうのもいい加減にしてよね。いっつもそうなんだからっ。」

「アホっ!冗談でこんな事言えるかっ!……本気なんだ。」

小太郎は繋いでる手に力を込めた。

「やっ…。何するの?!」

真央はパシッと小太郎の手をはたいて、振り払った。

「…やっぱり、俺じゃだめなのか…?」

「………。」

真央は時が過ぎるのを、ただただ、待ち望んだ。


(佳絵になんて言えばいいんだろう…)

真央は、キャンプファイヤーが終わったあと、教室で一人悩んでいた。

(佳絵に正直に教えるのが優しさなの?秘密にしておくのが優しさなの?)

「う゛―…わかんないよ〜…」

「何が?」

「…!誉…ちゃん。」

いつからいたのだろうか?真央のすぐ後ろに誉は立っていた。

「…例えばさ、友達の好きな人に自分が告白された場合、その子に教えるのと、秘密にしておくのってどっちがその子にとっていいのかなぁ…って。」

「んー…俺は言ったほうがいいと思うけどね。」

「どうして?」

「自分が告白を受けるにしても断るにしても、本当に友達の事を思うなら秘密は無い方がいいだろ?その友達が親友なら、なおの事だね。親友だったら、素直に受け止めてくれるんじゃないかなぁま、あくまでも俺の意見だけどね。」

「そっか…、そうだよね。誉ちゃんありがとうっ!参考になったよ。じゃねっ」

「そんなたいした事してないけど…。」

真央は誉にきっちりお礼を言うと、教室を勢いよく飛び出した。

「…友達って佳絵ちゃんの事だよなぁ。って事は真央に告白したのは…」

(小太郎…っ!)

誉は訳も分からずに、小太郎を探しに教室を飛び出した。


…誉が教室を飛び出してから数分後、小太郎を見つけ出した誉は居ても立っても居られず、周りに誰もいないことを確認した上で、大きな声で禁句を言ってしまった。

「おいっ!小太郎!お前まさか真央に告白した―…あっ」

そう言いかけて、誉はあっと思った。小太郎の隣には間違いなく、佳絵が居たのだった。

「どういう事なの…?旭岡くん。」

「えっと…その、つまりー…。」

「俺が、真央ちゃんに、告白したってこと。」

小太郎は何の躊躇いもなしに、一言一言を分かりやすいようにハッキリとそう言った。それはもちろん、佳絵の耳を通り抜ける事もなく、しっかりと聞こえた。

「ウソっ…」

佳絵はほとんど呟くように、そう言って、その場から走り去ってしまった。

「…小太郎!お前、彼女の気持ち分かってるんだろ?!」

「俺の自惚れでなければ、ましてや勘違いじゃなければ、ね。」

「だったら、どうして…っ!」

「ここで嘘をついたって、どうにもならないって事ぐらいわかるだろ?」

小太郎のあまりにも真剣な眼差しに、誉は返す言葉が見つからなかった。

(そうだ…。さっき俺だって言ってたじゃないか。正直に言った方がいいんだって)

「小太郎…、真央の事本気じゃないなら、迷惑かけるだけだ。よく、考えて行動しろよ。」

「…それっ、どういう意味だよ!」

「女好きの小太郎が何言っても冗談にしか聞こえねーってことだよ。いつもおちゃらけてるお前の本気なんて、信じられない。今までの行いが悪いせいだ。真央だって、お前の言う事信じてなかっただろ?そういうの、自業自得って言うんだぜ。」

誉はそれだけ言うと、小太郎が口を挟む前に佳絵のあとを追うようにその場を去った。

あとには、小太郎だけが残された。

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