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幼い日の思い出  作者:
14/34

始まりのダンス

「よく分かってんじゃん。浅はかな妄想は余計だけど。」

小太郎はそう言いながらジロッと誉を睨んだ。

「本気でそんな展開になると思ってんの?真央は感が鋭いんだしさー、

100%無理だと思うんだけど。ねぇ、聞いてる?」

「わかってるさ、1人でやるならこの作戦の成功率が低いことぐらい。」

「だろ?分かってるならさー、潔く諦めて…―。ん、今なんて言った?」

「1人でやるならこの作戦は成功率がめちゃ低いけど、2人でやるならわざとらしさは

大分抜けるぜ。なっ」

「っておいっ!その1人は誰だよ…って聞くまでもないか。」

「よく分かってんじゃん。協力してくれるよな?ほ・ま・れ・ちゃん。」

「……選択する余地なし、か。」

「そーゆーこと。」

小太郎はそう言いながら待ってましたとばかりにニカッと笑った。


そういう訳で、誉は苦々しい顔で座るはめになったのだった。

「ところで真央ちゃん達は踊る人決まってんの?」

『いないー。』

と、2人は声をそろえて言った。

と、小太郎は作戦どうりに上手く事が運ばれているのに喜びつつ、そのまま作戦に

そって事を運んでいった。

「実は俺もいないんだー。…じゃあさっ」

「誉ちゃんはいないの?」

小太郎の言葉を遮って真央は小太郎の隣にいる誉に話し掛けた。

小太郎はと言えば、思わぬ展開に少し面食らっていった。

「俺?俺もいないよ。適当でいいかと思って。」

そこで、またも小太郎は作戦を実行しようと試みた。

「じゃあさ、真央ちゃ…」

「誉ちゃんいないの?モテ?の誉ちゃんの事だからてっきりいると思ってたのに。

以外ー。」

小太郎はどうも事が上手く行かないことに少し腹を立てながらも、無理やり

真央の視界に誉が入らないように回り込んだ。

「誉の事はどうでもいいからさー、よかったら俺と…―」

「一緒に踊らない?」

真央が何の前触れもなくそう言ったので、小太郎は驚いていたが大喜びだった。

「マジで?!真央ちゃん本気で言ってんの?」

しかしそれも束の間の幸せだった。

「うん。ね、いいでしょ?誉ちゃん。」

(…って、そっちかいっ!!)

「え、俺?」

「そうだよ、いいよね?」

呆然としている小太郎をよそに、真央はにっこりと誉に笑いかけている。

それに対して誉は、何て答えていいのか分からずにいた。

「えっと…うーん―」

「私とじゃ嫌だ?それなら仕方無いけど…。」

真央がちょっとがっかりそうに言うのを見ると、誉は小太郎の痛い視線に気づきながらも、

無意識のうちに「そんなことないよ、いいよ。」と言ってしまっていた。

(誉―!貴様、後で覚えて置けよ〜っ!!)

小太郎の目がそう訴えていた。

そんな小太郎の気持ちを知るよしも無い真央は「よかった〜」と、無邪気に

喜んでいた。

「あ、そだ。小太郎君も踊る人いないんでしょ?」

急に話をふられて少し驚きつつも、得意の爽やかスマイルで「まぁね。」と言った。

真央は(小太郎君も誉もモテるのに、どうして踊る人いないんだろ…)と思いながらも、

佳絵の腕を引っ張って、小太郎の前に持っていった。

「じゃあさ、佳絵もいないんだから二人で踊ったらどう?」

(えー!中内さんですかー?可愛くないとは言わないけどさぁ、なんか物静かで苦手

なんだよなぁ。どのみち真央ちゃんと踊れないならもっと可愛い子のほうが

いいなぁ。ここは、バツが悪いけど断りますかな。)

「えっと、俺には勿体無いぐらいの話だけど…―」

そう言いかけて、ふと小太郎は佳絵と踊る事がとてもおいしい話だという事に

気が付いた。

(ん?ちょーっと待てよ。真央ちゃんと中内さんは仲良いんだから、当然

真央ちゃんと近くで踊るよな。ってことは、パートナーチェンジで、短いけど

真央ちゃんと踊れるんじゃね?…おぉ!なんておいしい話なんだっ。

断ろうとしていた自分がばかだったぜ。短くても踊れないよりはましだ。

中内さんから真央ちゃんの事聞けるかもしれないし、よしっ。)

「…―喜んでお受けしますっ。」

「……なんか今文章矛盾してなかった?」

真央がその文が明らかに繋がらない事に不信を抱き、探るように尋ねた。

「え、そうだった?俺には勿体無いぐらいの話だけど、そっちが言うなら喜んで

お受けしますって事だって。別に可笑しくない、ない。」

「そうかなぁ?絶対可笑しいと思うけど…。ねぇ、佳絵もそう思わない?」

「へ?何が?」

(…佳絵は小太郎君と踊れることで頭がいっぱいですネ)

「やっ、なんでもないよ。ただ、パートナーが見つかってよかったね、って。」

そう言うと佳絵の頬はりんご色に染まった。

(幸せなやつだなぁ、佳絵って。)

『そろそろキャンプファイヤーを始めます。初めはフォークダンスを踊りたいと思うので、皆さんは男女でペアを作って円になってください。じゃあ音楽を流します』

「さ、誉ちゃん踊ろっ!ほらぁ、手繋ごうよ。」

急かす真央に、誉は仕方なく手を出すと、真央は誉の手をギュッと握った。

(真央の手、暖かいなぁ…)

真央の横顔をみながら、そんなことをぼんやり考えていると、真央も

その視線に気づき、誉にむかって、訳もわからずにっこりと笑い掛けた。

すると、つられて誉も笑ってしまっていた。

佳絵と手を繋ぎながら、小太郎は良い雰囲気でにこにこと笑い合っている二人を、羨ましそうに、見ていた。そして、なんとかその雰囲気をぶち壊そうと、邪魔をしようと試みた。

「いたっ!何すんだよ、小太郎!」

いきなり小太郎に耳を引っぱられ、誉は反射的に真央から手を離して小太郎の方を振りかえってしまった。しかし2人の手を離れたことに小太郎は満足したらしく「何でもねーよ」と言って誉の耳から手を離してしまったのだった。当然小太郎の行動に意味は無く、すぐに2人はまた手を繋いでいた。でも、次の邪魔に入る暇もなく音楽が鳴ってしまったため、小太郎は邪魔をすることを諦めて、ただ真央と踊れる事を楽しみに待つ事だけに専念するはめになったのだった。

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