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幼い日の思い出  作者:
12/34

女の戦い

「真央ちゃん、起きてッ!!」

真央が次に目を開けた時、外にはもう、ぽっかりと満月が出ていた。

「…ん。もうこんなに真っ暗…?今何時〜?」

まだ寝ぼけている様子で、瞳を手で擦りながら布団から体を起こした。

「そんな事はどうでもいいのよ。何回も起こしたのに、起きないんだもん…。」

「だから〜、それで〜、どうしたのよ〜?」

「キャンプファイヤー終わっちゃったわよ、とっくに。」

「……。えっ…。やっ…えっ?!本当??」

しばらくポーっとしていた真央も、その言葉を聞くと、一気に目が覚めたようだ。

布団から体を出し、「信じられない」とでも言いたそうにそう言った。

一瞬間が開いて、佳絵が口を開いた。

「ウッソぴょん」

「……。って、おいっ!」

「アハハッ!真央ちゃんの反応ウケルー。ごめんね、あんまり寝顔が可愛かった

もんだから、つい。」

(つい、って何だ。つい、って!)

「…まいっか、キャンプファイヤーの前に起こしてくれたんだしね。」

「うん、今からキャンプファイヤーだよ。行こっ!真央ちゃん。」

真央は布団を簡単に片付けると、髪を素早く縛り直し、

服―学校の規定ジャージ―を整えて、教室を出た。

「ね、真央ちゃん、もう足平気なの?」

「うん、大丈夫みたい。走るのは無理っぽいけど、歩くだけなら全然平気。」

そんな話をしながら二人は校庭のキャンプファイヤー予定地らしき所についた。

その場所には既に、二年生の全員―真央と佳絵を除く―が集まっていた。

女子も男子も、ダンスの話で持ちきりで、女子においては好きな人の暴露大会

まで開いている始末だった。真央がそのキャンプファイヤー場に表れると、

男子の視線はほぼ真央に集中していた。

「なんかやけにテンション上がってるよねー。」

「そりゃそうよ、このダンスで好きな人と踊ろうって事なんだから。」

(好きな人ね〜…。)

「あと、こういう時は告白の絶好のチャンスだから、踊ってる時に愛の言葉を囁く

とか。真央ちゃんも気をつけた方がいいよ。」

佳絵は嫌味ったらしくにっこりと笑い、まるでその展開を期待しているかのような

言い方をしていた。

「あーら、そういう中内さんもその眼鏡の奥の可愛らしいお顔で男子生徒を

とりこにしないように御気をつけになられたらいかが?」

2人の会話を盗み聞きしていたらしく、1人の女子が皮肉たっぷりに、

佳絵を貶した。佳絵は額に怒りマークをつけながら、声のした方を振り向いた。

「えぇ、そうね。貴方もそのちりちりの可愛らしい髪を振り乱して、

精々頑張ってネ。」

佳絵は出来る限りの笑顔でそう言った。

「なんですって?寸胴の中内佳絵さん?私を誰だと思ってるの?」

浅葱あさつき財閥の御令嬢、浅葱 みお様ですね、ハイハイ。」

半ば呆れた様子でやけに丁寧に彼女の質問に答えてあげた。

しかしその馬鹿丁寧な言い方が逆に澪の毛を逆撫でた。

「ずいぶんな言い様ね、冬月さんッ。私のお父様はここの理事長と親しいの。

わたくし私の一言で生徒一人退学にすることぐらいわけないのよ?」

澪は勝ち誇ったかのように高々と嫌な笑いをしている。

「ああら、それは素晴らしいわね?浅葱サン。」

「くっ…。えぇ、どうもありがとう。今日はその足で頑張ってらしてね。では。」

澪はバックに2人の女の子を従えて、その場を去っていった。

「つくづく嫌な女だわ!『寸胴の中内佳絵さん?』ですって?!本当にもうっ!」

「まぁ、確かに好感は持てないけどね。きっとプライドが高いのよ。」

佳絵は澪の事が特別嫌いだった。それと言うのも、澪は小太郎の事が好きで、

いつもうるさい程小太郎にまとわりついていたからだかく言う澪も、

佳絵と真央の事を取り分け嫌っていた。理由はこちらも簡単。

「いくら私達が小太郎くんとちょっと仲良いからってあれだけ目の敵にしなくても

いいじゃなーいっ!」

そう、ちょっと仲良いだけでこの有り様だ。ちょっと、と言っても澪に比べたら、

ちょっとでは済まなかったのだった。

澪は相手にしてもらう事は無いのはもちろんのこと、小太郎と話すことは

滅多になかったのだ。しかし、澪が佳絵と真央を目の敵にするのは

それだけではなかった。


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