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幼い日の思い出  作者:
11/34

複雑な心情

「あいたたたた…!」

真央は学校の医務室にて、ちゃんとした処置を受けていた。

「にしても、応急処置にしては、よく出来てるわねぇ。」

「あ、誉ちゃんがやってくれたんです。」

「へぇー、そうなの。お礼言っといたほうがいいわよ。下手な応急処置だったら、

今頃、痛くて歩いてられなかったかもしれないわね。」

そう言いながら、保健の先生は包帯を巻き終わった真央の足を軽くポンッと

叩いた。

「はい、終わり。これだったら夜のキャンプファイヤー出られそうね。

それまでは教室で安静にしててね。」

「はい。」

(ガラッ!…バタンっ)

(はぁあ、やっぱり歩くの痛いなぁ…。)

真央が足を引きずりながら、廊下を歩いていると誰かに後ろから、肩を叩かれた。

(誉ちゃ…)

「よっ!大丈夫?真央ちゃん無理したらいかんよー。肩貸そうかっ?」

「小太郎君…。ご心配ありがとっ。お言葉に甘えてもいいかしら?」

「もちろん。あぁ、これで真央ちゃんも俺に惚れちゃうな、きっと。」

真央は小太郎に肩を貸してもらって歩きながら、「やーね、小太郎君ってば。」

と、柔らかく笑いながらそう言った。

二人が歩いている所を誉は見つけたが、丁度誉からの位置だと小太郎は

死角になっていて、誉からは真央しか見えなかった。

「真央…―」

「にしても、本当に大丈夫?女の子なのに、傷跡とか残ったら可哀想じゃんね。

やっぱ、誉が下敷きになればよかったのに。」

(ビクッ!)

誉はそこでやっと小太郎の存在に気づいた。そして運悪く小太郎の言った事を

すっかり聞いてしまっていた。

(小太郎…か?)

誉はそれ以上小太郎と真央の会話を聞くまいと、その場から逃げ出すように

屋上へと駆け上がっていた。

(女の子なのに、傷跡とか残ったら可哀想じゃんね。)

小太郎の言った言葉が頭の中で木霊する。

(やっぱ、誉が下敷きになればよかったのに。)

「俺だってそうしたかった…っ―!」

(傷跡残ったら…)

「…うるさいっ―」

(誉が下敷きになれば…)

誉は勢いよく屋上の扉を開け放った。

(バタンッ!)

「…そんな事、言われなくたって十分すぎる程分かってるよ…っ―!」


「誉ちゃんが下敷きになればよかったって?小太郎君もそんな事言うの?」

「そんな事って。」

「私、そんな風に守って貰ってもちっとも嬉しくないもの。

私は人の役に立ちたいの。」

「そんなもんかねぇ?」

小太郎は理解出来ないというように言った。

「そんなもんだよ。少なくとも私の場合はね。」

「うーん、守られるよりも守りたい、つーこと?」

「ま、そんなとこね。」

二人はそんな事を話して、教室についた。

「あ、おかえりー!真央ちゃ…、と、小太郎君も一緒だったのね…。」

(小太郎君に肩借りてる…。私の気持ち知ってて、よくもそんな事出来るわね…。

真央ちゃん…。)

「ただいまー。あ、小太郎君ありがとう、もういいわ。」

そう言って小太郎の肩から手を下げ、近くの椅子に座った。

「午後は何をするんだろう?私が出来るような事だといいんだけど。」

「あぁ、午後は山頂登山をやるらしいよ。でも、真央ちゃん出来ないんじゃない?

先生に言って布団出してもらうから、寝てたほうがいいわ。」

「そうね、そうさせてもらおうかな。」

真央がそう言うと小太郎はすぐに職員室に行き、布団と先生を連れて帰って来た。

机を全て後ろに押しやり、窓側の風当たりの良い所に布団を敷いた。

余程疲れていたのだろう、いくら明るくしていてもあれだけの事があったのだ。

真央は布団に入ると、すぐに深い眠りについた…―。

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