出発の朝と森の中
そして、準備に追われた日々も過ぎついに出発の日になった。
「ローズ、起きて。ほらギルドに行くんでしょ? 」
と朝に弱い妹を起こしながら果たして二人だけでギルドへたどり着けるのだろうか、そして運よくギルドへたどり着いたとしても知りたい情報にめぐり合えるのだろうか。とそんなことを考えながらいまだに起きる気配のない妹に対して、最終兵器を使う兄であった。
十分後、
「兄さんひどい。なにも『閃光』を使うことはないでしょ。」
と強引な方法で起こされたことに対して怒るローズなのだが、兄であるウィルはというと、
「言っても起きないローズが悪いんだと思うけど。そんなことは置いといて、さっさと出発しよう? 明るいうちに関所を通らなきゃいけないんだから。」
と自分が魔法を使って起こしたことをさらりと流して、話を強引に変えた。
「まあそれもそうね。危うく目的を見失うところだったわ。で、兄さんは準備できてるの? できてるんだったらさっさと行きましょう? 」
「それさっき言ったけど……まあいいや。そうだね準備はできているから出発しようか。」
と本来の目的地であるギルドへと緊張感のかけらもなく出発するのであった。
巧の国を出国すること自体はすごく簡単だった。この兄妹のことは国中でわりと知られた存在だからだ。辺境の村で両親を早くに亡くし二人だけで暮らしていること。そして、兄妹以外で出生の秘密を知る国の長老が裏で手を回したから。この二つの要因が本来なら複雑な出国手続きも簡単な書類の記入だけで済んでしまった理由だった。
そんなこんなで初めて巧の国の外にでた二人は隣国和の国へと続く森の中を歩いていた。
「なんか話には聞いていたけど、思った以上に不気味な森だね。」
「そうね。今にもエネミーが出てきそうな雰囲気はあるわね。それはそうと、今日はどのあたりに泊まるの? まさか休み無しで歩くとか言わないでしょうね? 」
「ローズがそうしたいならそうするけど。そうだね、暗くなる前にテントを張れる場所があればいいけど。なかったら魔法を使うしかないかな。」
とこんな会話をしながら鬱蒼と茂った森を歩いていると、今はもう使われていないであろう古ぼけた小さな小屋が現れた。
「兄さん、見て小屋がある。あれ使えるんじゃない? 行ってみようよ。」
「そうだね。誰も使ってなさそうだし、今日はあの小屋に泊まろう。テントを張る手間も省けるし。何よりテントより安全そうだし。」
二人は小屋の中へ入っていった。小屋の中は、外見ほど荒れてはいなかった。むしろ誰かが定期的に掃除をしているのではないかと思うくらい小奇麗だった。
「ローズ、なんかこの小屋嫌な感じがするんだけど、気のせいかなぁ? 」
「そう? 兄さんは心配性すぎると思うよ? 外に寝るよりは安全だと思うけど。」
ローズにこう言われ、なるほどそれも一理あると考えたウィルは、自分が見張っていれば大丈夫だろうと考え、嫌な予感が杞憂であってほしいなぁと思いつつこの小屋に泊まることにしたのだった。




