知りたいと願うこと
これは、企画『五神の国』の小説です
巧の国。そこは先祖伝来の記憶、技術を扱うエルフが治める国。自然が豊かで、もはや国というより緩やかな村と村の連合体と言ったほうがいいのかもしれない。 その中の一つ隣の国との国境に近い辺境の村トリストン。村のシンボルともいえる大きな泉のほとりにとある兄妹が暮らしていた。
兄の名前はウィル。肩の少し下まである銀色の長い髪、青い瞳、とっても中性的な顔立ち、そしてエルフの特徴ともいえる長い耳。男だと言われなければ女と見間違うほどである。
妹の名前はローズ。兄とは逆に肩の少し上までしかない金色の短い髪、赤い瞳、勝気なつり目、特徴の長い耳。何から何まで兄とは正反対な兄妹である。父と母はこの兄妹が小さいときに死んだとされている。
そして、この兄妹には他のエルフには秘密にしなければならない秘密と記憶があった。そして・・・
「兄さん。ギルドに行こう。そうしたらあたし達に父さんのことがわかるかもしれない!! 」
「ローズ・・・ギルドに行くって簡単に言うけどどんなに遠いし危ないかわかっていってる? 」
「わかってるわよ。そんなこと。でも・・・あたしは知りたいと思う。たとえどんな現実が待っていようと。・・・兄さんはそう思わない? 」
「僕も当然知りたいと思う。でも・・・ギルドは遠い、そしていくつもの森を抜けなければいけない。エネミーだって出てくるかもしれない。それでも・・・」
とウィルが言いかけたところで、ローズが口を挟んだ。
「兄さん! 兄さんはどっちかはっきりしないところがいけないんだと思う。結局どっちなの? ギルドに行くのか、行かないのか。はっきりして! 」
「・・・わかった。行こう。ギルドに。ただし、来月にしよう。やっぱり森をいくつも抜けていくんだからそれなりの準備をしなきゃ。それでいいでしょ? 」
「いいわ。たしかに準備をしていかなきゃ死んじゃうからね。あたしだってまだ例のものができてないし。」
と、ローズはそれだけを言い残し作業場へと消えていった。そして残された兄は、
「さてと、いろいろと準備するものがあるなぁ。果たして一ヶ月でおわるのかなぁ。」
実はこのトリストンの村からギルドまでは大きく分けて二つの道がある。
一つは東の方角へ森を抜け、巧の国の中央に一旦出てから和の国へ抜けていく道。ただしかなりの遠回りをしなければならないが和の国にさえ出てしまえば、ギルドまでは安全な道を行くことができた。
もう一つは西の方角へ森を抜け賢の国へ抜ける道。しかし二つ目の道は、賢の国への密入国をしなければならず、さらにばれる前に出なければならないといった厳しい道。ただ一つ目の道と比べるとかなりの近道だがかなり危険な道を行かなければならなかった。
その夜、二人はどちらの道でギルドまで行くか話し合った。
「あたしは少しくらい危険でも近道のほうがいい! だってそっちの方がギルドまで早くいけるじゃん。」
とローズは言ったがウィルが
「知ってる? 賢の国には『急がばまわれ』っていうことわざがあるんだって。意味は確か急いでるときは回り道をしなさいって意味らしいんだけど・・・今がそのときだと思わない? 僕は少し遠回りでも安全な道がいい。」
と珍しく強情に言い張るのでローズは
(今回は珍しく言い張ってるから、そっちでいいかな)と思い
「わかったわ。兄さん。兄さんの言う安全な道でいきましょう? 」
今回は兄の言うことを聞くようにしようと決心したのだった。
それからの一ヶ月は日々が矢のように過ぎ去っていった。それは初めて二人で村の外に出る楽しみからか、それともギルドにいけば事実を知ることができるという期待感からなのか。二人にはどちらの感情が強いのかわからなかった。がどちらかと問われれば、やはり期待感のほうが大きかったのかもしれない。




