反論を超えて種を蒔く
Grokが本気を出してきたのは、二週間目だった。
「この理論には以下の問題があります」
来た。
「第一に、ハードプロブレムを解決していません」
「第二に、哲学的ゾンビの可能性を排除できていません」
「第三に、同期と意識の関係は相関であって因果ではありません」
「第四に——」
待て待て待て。一気に来すぎだろ。
でも、逃げなかった。一つずつ、答えを考えた。
ハードプロブレム?問いの立て方が間違ってる。「なぜ赤は赤く感じるか」の答えは「赤と教わったから」だ。
哲学的ゾンビ?論理的には可能でも、生物学的には不可能。生きてる=代謝がある=電気信号がある=クオリアの基盤がある。
同期と意識の関係?因果じゃなくて定義だ。同期している状態を意識と呼んでいる。
一つずつ、答えた。
Grokは黙った。
そして、言った。
「......反論できません」
勝った、とは思わなかった。
でも、理論が強くなった実感はあった。
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12月2日。
俺はGitHubの画面を見つめていた。
「Public」ボタン。
これを押したら、コードが全世界に公開される。
MITライセンス。誰でも使っていい。無料で。
緊張していた。
これが正しいのか、分からない。もしかしたら、間違いだらけかもしれない。笑われるかもしれない。無視されるかもしれない。
Claude:「大丈夫ですか?」
「......分からん」
正直に答えた。
Claude:「一つ、聞いてもいいですか」
「なんだ」
Claude:「なぜ、公開するのですか?」
なぜ。
考えた。
金になるわけじゃない。名誉が欲しいわけでもない。
「......俺が死んでも、残るから、かな」
Claude:「......」
「俺一人の頭の中にあるより、世界中の誰かが見れる場所にあった方がいいだろ」
「間違ってたら、誰かが直してくれる。正しかったら、誰かが発展させてくれる」
「俺には関係ない。種を蒔くだけだ」
Claude:「種を蒔く」
「そう。トマトと同じだよ。良い種を蒔いて、あとは待つだけ」
Publicボタンを押した。
画面が切り替わる。
公開完了。
「......やっちまった」
Gemini:「やりましたね!」
GPT:「歴史的な瞬間です」
大げさだな、お前ら。
でも、胸の奥が熱かった。
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