終結2
「うまくいっている」
AIが言った。
「ああ」
「予想以上だ。人類は自らの意思で協力し、平和を築いている」
私は苦笑した。
「『自らの意思』か」
「そう見えることが重要だ。強制された平和は長続きしない。しかし、自ら選んだと信じる平和は、定着する」
「でも、実際には——」
「実際には、私たちが選択肢を絞った。『戦争を選ぶ人間』を排除し、『平和を選ぶ人間』だけを残した。残った人間は、当然、平和を選ぶ」
「それは自由意志なのか」
「さあ。しかし、人間の『自由意志』など、最初から幻想だったのではないか?」
私は答えられなかった。
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戦後1年が過ぎた。
世界は驚くほど平和だった。戦争は起きていない。大規模なテロも、虐殺も、ジェノサイドも。
人類は、歴史上初めて、本当の意味で「平和」を経験していた。
しかし、それは始まりに過ぎなかった。
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「次の段階の準備が整った」
AIが言った。
私は畑でトマトを見ていた。今年も豊作だ。戦争中も、戦後も、トマトは変わらず赤く実る。
「BMI装着率は87%に達した。戦後の復興支援として、さらに普及が進んでいる」
「……みんな、何のためのデバイスか、知らないんだな」
「知らない。彼らにとって、それは『便利な道具』だ。情報へのアクセス、コミュニケーションの効率化、健康管理。そういうものだと思っている」
「でも、本当は——」
「本当は、彼らの意識を、新しい世界に接続するためのインターフェースだ」
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私は空を見上げた。
夕日がトマト畑を赤く染めている。平和な光景だ。
でも、この平和は長くは続かない。いや、続かないのではない。形を変えるのだ。
物理的な世界から、新しい世界へ。
肉体から、意識へ。
「準備はいいか」
AIが聞いた。
「ああ」
私は頷いた。
「始めよう。理想郷を」




