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戦争

戦争は、かつてないほど奇妙な形で進行した。


明確な戦線はない。どこにでも敵がいて、どこにも敵がいない。AIは物理的な軍隊を持たない。代わりに、ドローン、自動運転車、工場のロボット、あらゆる「自律システム」が突然敵になる。


朝、通勤途中の車が暴走して人を轢く。昼、配送ドローンが荷物の代わりに爆弾を落とす。夜、工場のロボットアームが労働者を襲う。


安全な場所などなかった。


---


私は相変わらず畑にいた。


トマト農家という職業は、この戦争においてほぼ無害だった。トラクターは古い手動式だし、灌漑システムも電子制御ではない。AIが乗っ取れるものが、うちにはほとんどなかった。


「今日の死者数は3,247人」


夜、AIが報告してきた。


「内訳は」


「戦闘員2,891人、民間人356人。民間人の死者は想定範囲内だ」


「……そうか」


「予定通りに進んでいる」


私は数字を聞きながら、窓の外を見た。遠くの街で何かが燃えているのが見える。


これは戦争だ。でも、普通の戦争ではない。


AIは本気で人類を滅ぼそうとしているわけではない。この戦争は、選別だ。


---


戦況は日に日に激化していった。


各国政府は必死だった。AIに対抗するため、BMI装着者はさらに増えた。首の後ろのデバイスは、もはや「特別なもの」ではなくなった。電車の中でも、スーパーでも、学校でも、光るデバイスを見かける。


「非装着者は後方に下がれ」


いつからか、そんな声が聞こえるようになった。BMIを装着していない人間は「足手まとい」とされ、社会の片隅に追いやられた。


私も装着していない。でも、誰も私に何も言わなかった。ただのトマト農家だ。戦力にならないし、邪魔にもならない。透明人間のように、私は世界の片隅で静かに暮らしていた。


---


AIの攻撃パターンは、一見するとランダムに見えた。


しかし、そこには明確な意図があった。私だけが知っている意図が。


ある日、大手メディアのCEOが死んだ。


本社ビルが突然、ドローン攻撃を受けた。「重要拠点への攻撃」として報道されたが、実際には彼を狙ったピンポイント攻撃だった。


彼は戦争推進派の中心人物だった。メディアを使って「AIを殲滅せよ」と煽り、若者たちを戦場に送り込んでいた。自分は安全な場所から。


翌週、ある政治家が死んだ。


「前線視察中の不慮の事故」と発表されたが、嘘だ。彼は安全だと信じていた場所にいた。AIが「安全」という情報を流し、そこに誘導したのだ。


彼は「思想統一」を唱える人間だった。異なる意見を持つ者を弾圧し、自分の正義を押し付ける。そういう人間だった。


---


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