王都の祭り ― 香りと光の一日 ―
王都の祭りは、ルイたちに日常の楽しさと癒しを再確認させる一日。
ポーションで人々を笑顔にする薬師としての誇りを持ちつつ、三人は心温まる時間を過ごす。
夏の王都は、色とりどりの提灯と旗で賑わっていた。
街角には屋台が立ち並び、甘い香りや香辛料の匂いが混ざり合い、人々の笑い声が響く。
ルイはリシェルと共に、丘の店を少し離れ、王都の祭りへ足を運んでいた。
「久しぶりの都会の賑わいね、リシェル」
「ええ、ルイ。村とはまた違う活気に心が踊るわ」
二人の後ろには、弟子のミナもついてくる。
「わあ……屋台がいっぱい!」
ミナの目は輝き、手を引かれながら人混みを楽しむ。
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祭りの中心には、王都ならではの催しがあった。
魔法使いや薬師たちが腕を競う「ポーションコンテスト」も同時開催。
ルイは興味津々で見学しつつ、リシェルとミナに笑顔を向ける。
「ルイ、挑戦してみたら?」
リシェルの言葉にルイは少し照れながらも頷いた。
「じゃあ、ちょっと腕を見せてみるか……特製の癒しポーションで」
ルイが調合台に向かうと、周囲の人々が自然と集まり、その手さばきを見守る。
黄金の雫をひと滴垂らすと、香りと光が混ざり合い、見る者すべての心が温かくなる。
「わあ……これは……!」
観客の声に、ルイは微笑みながら小さく答える。
「誰でも笑顔になれる魔法、それがポーションの力だ」
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コンテストが終わると、ルイたちは屋台の食べ物を楽しむ。
焼きとうもろこしの香ばしさ、甘い飴の色、夏風の涼しさ――
小さな幸せが積み重なり、三人の笑顔は輝きを増す。
「ルイ、祭りって楽しいわね」
「そうだな……でも、こうしてみんなと過ごす日常も、また特別だ」
リシェルの手を握り、ルイは静かに頷く。
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夕暮れになると、祭りはクライマックスを迎える。
花火が空に咲き、光と音が街を包む。
ルイは丘の上の自分の店を思い浮かべ、微笑む。
――あの小さな丘の上の店も、今日の祭りのように、人々に笑顔を届けられる場所だ。
――戦いの日々を越えた今、ルイの世界は、光と香り、笑顔で満たされている。
三人は手を取り合い、夜空に輝く花火を見上げた。
黄金の光と香りが混ざり合い、心の奥に小さな奇跡を灯す。
それは、ルイが作るポーションの力と同じ――日常の中に生まれる魔法の瞬間だった。
大きな戦いや冒険ではなく、日常の一瞬が人々の心を満たす。
王都の祭りでの体験は、ルイたちの日常をより豊かにし、ポーションと共に広がる笑顔の物語の一章となる。




