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ポーションで異世界を救う  作者: マーたん


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18/32

過去の面影 ― ルイの昔の彼女 ―

ルイの昔の…

王都の南門を抜け、夕暮れの街並みに差しかかったとき、ルイはふと足を止めた。

風の匂いが懐かしかった。

薬草の香りに混じって、遠い昔の記憶が胸を締めつける。


「……この香り……まさか。」


人混みの中に、一人の女性が立っていた。

長い栗色の髪、落ち着いた青い瞳。

その姿は、彼の記憶の奥底に刻まれた“リシェル”によく似ていた――

だが、違った。


「……エレナ?」

呼びかけると、女性はゆっくりと振り返った。

それは、かつてルイの恋人だったエレナ・フィーネ。

ポーション師になる以前、まだ村の診療所で見習いをしていた頃に出会った人。

ルイが初めて「誰かを救いたい」と心から願ったきっかけでもあった。


「久しぶりね、ルイ。」

エレナの声は静かで、けれど何かを隠していた。


「……どうしてここに?」

「あなたを探していたの。」


ルイは言葉を失った。

エレナは、数年前の戦で命を落としたと聞いていたのだ。

彼の人生を変えた痛みのひとつが、まさに彼女の死だった。


「死んだと聞いてた。」

「死んだのよ、一度はね。」

エレナは苦笑し、首元の銀のペンダントを握った。

そこには小さなガラス瓶が吊るされていた――

淡く光るポーションの欠片。


「……あなたの師匠の研究を、私は少しだけ継いでいたの。

“魂をつなぐ薬”――その試験体として、私は生かされたのよ。」


ルイの心臓が跳ねた。

あの師匠の遺産に記されていた理論――まさか、ここで繋がるとは。


「でも代償もあるの。」

エレナは静かに微笑み、袖口から覗いた手がわずかに透けていた。

「この体は長くもたない。……けど、あなたにどうしても伝えたかったの。」


ルイは彼女の手を掴もうとした。

だが指先は空を切った。


「エレナ……!」


「ルイ、あなたが創ったポーション。あれはもう“癒し”じゃないの。

“命を繋ぐ奇跡”なのよ。

でも、気をつけて。王都にある“癒しの塔”には、あなたの力を奪おうとする者がいる。

それが――師匠の本当の死の理由。」


その言葉を残して、エレナの姿は光の粒となって消えていった。

ルイの手の中には、彼女のペンダントだけが残っていた。


「……また、失うのか……」

ルイは小さく呟き、拳を握りしめた。


その時、背後からミレイの声が響いた。

「ルイ様……どうかしましたか?」

ルイはゆっくりと振り向き、かすかな笑みを浮かべる。


「いや……少し、過去を見ただけだ。

だが、もう迷わない。

師匠と――エレナが残した“遺志”を、俺が繋ぐ。」


彼の背に、再び風が吹く。

薬草の香りが漂い、沈みゆく太陽の中で、ルイの瞳が新たな決意に燃えていた。

彼女…とは…??

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