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竜が見た夢
遥か昔、ひとりの姫と、一匹の竜がいた。
竜の名は〈ヴェルゼオン〉。
あまりに大きな体ゆえ、空を飛ぶこともできず、孤独に生きていた飛竜である。
姫リュミナは、世界を覆う瘴気を嘆いた。
その声を聞いた竜は、ただ優しく言った。
「ならば、この大きな体で背負おう。人の代わりに、すべてを」
けれど、瘴気は重すぎた。
竜は蝕まれ、姫はその誤りに気づいた。
どうにか助けたくて、祈りを込めた首飾りを作り、知を尽くした。
だが叶わず、彼女は子孫へと願いを託した。
やがてこの物語は歪められ、
姫は“竜を封じた”と語られ、竜は“災厄”と呼ばれた。
けれど――それでも残った真実がある。
リュミナの願い。
「いつの日か、この竜を救ってほしい」
その祈りは、ヴェルゼオンの名に宿り、
時を超えて人の心に残り続けた。
瘴気は消えない。
だが、もう誰か一人に押しつけるものではない。
人は支え合い、共に未来を築こうと歩み出す。
澄んだ空、透き通る水、笑い合う子供たち。
それは、竜と姫が夢に見た世界。
――竜は夢を見ていた。
姫と共に願った、本当の未来を。
そしてその夢は、今、この世界に確かに息づいている。




