第6話 星の降る夜に
空から降る白銀の光は、雪よりも柔らかく、まるで静かな祈りのように地に触れていった。
アレンは、ゆっくりと竜の骸から剣を引き抜いた。
刃先に残る光が、揺らめきながら静かに消えゆく。
胸の奥に、剣で貫いた時の痛みと光の感覚が蘇るが、今は安堵に変わっていた。
隣に立つフィオナが、そっと竜の胸に手を触れる。
光の残滓を感じながら、彼女は呟いた。
「救えたの、かな……」
確信はなかった。
見間違いかもしれない。
だが、胸の奥の小さな声が答えを告げる。
「……ああ、きっと」
そのとき、慌ただしい足音が近づいてきた。
「よくやった!」
ジークの声に振り返ると、彼は躊躇なくアレンとフィオナをまとめて抱きしめる。
その勢いに二人そろって目を丸くし、そしてほう、と息をついた。
立っているだけで精一杯の体が、少しだけ軽くなる。
「……終わったのか。信じられねえ!」
ジークの言葉には、戦いの重みと感動が混ざっていた。
イゼリアは、涙をこらえながら口元に笑みを浮かべる。
戦いを終えた二人を、ただ誇らしげに見つめていた。
「星なんざ……もう二度と見れねえと思ってたぜ」
ナッシュの言葉に、皆がふと空を見上げる。
夜空には、降り注ぐ光の粒が星々と交わるように輝いていた。
言葉を失い、胸の奥が温かく満たされていく。
*
どれだけの時間、そうしていただろう。
「よし、帰ろう!」
ジークが元気に言った。
空元気だと、すぐにわかった。
アレンは頬を緩める。
「…帰ろう」
一度竜を振り返り、少しの間目を瞑って、瞼を持ち上げる。
アレンは、フィオナと視線を交わす。
疲れた体を支え合いながらも、心の底にある静かな喜びを感じる。
長い戦いの果てに。
今、ようやく世界は、光を取り戻したのだ。




