第5話 響き渡る刻
まばゆく、温かい白銀の光だった。
かすかに漂うもやを、竜は口に含むようにそっと吸い込み、光へと溶かしていく。
竜は傍らの温もりを見やった。
光に包まれたその人は、顔こそはっきり見えない。
けれど、竜にはわかった。
「……リュミナ」
その名を呼ぶ竜の声に応えるように、光が晴れ、懐かしい姿がゆっくりと形を成した。
柔らかく流れる長い銀髪。
深い翠色の瞳。忘れるはずのない、その面影。
「ごめん、ヴェルゼオン……ずっと、待たせてしまったね……」
リュミナは涙を流しながら、そっとヴェルゼオンの頭を抱く。
胸の奥にはまだ、深く刻まれた痛みが微かに響いていた。
それでも、長く暗闇に閉ざされていた心は今、光に満たされていた。
安らぎが、痛みを静かに抱き寄せ、再会の温もりとともに溶かしていく。
そう、約束は守られたのだ――リュミナが嘘をつくはずがない。
「いいんだよ…もう、いいんだよ……」
ありがとう。
竜はそっとその瞳を閉じた。
光に包まれた竜は、ゆっくりと身を沈め。
白銀の光に溶けて空へと還っていく。
それは――討伐ではなく、永遠の救済だった。
*
祓いの光が大陸を包む。
瘴気は竜とともに清められ、エルヴァント峰を覆っていた黒い霧は、一斉に晴れていった。
山頂から立ち上る白銀の光の柱。
それがゆっくりと消えたとき、空から光の粒が降り注いだ。
柔らかな光を纏い、雪のように降り注ぐ。
人々は誘われるように空を見上げた。
あまりにも静謐で、誰もが時の流れを忘れ、目の前の光景に心を奪われた。
そして気付く。
その向こう、漆黒の闇に覆われた空に、何かが輝いている。
小さな子供たちは無垢な瞳で首を傾げる。
大人たちはすぐに、その輝きの正体を理解した。
「星だ…星が見えるぞ!」
各地で歓声が上がる。
涙を浮かべながら抱き合う人々の姿。
光の粒はまるで祝福のように降り注ぎ。
希望の温もりを世界に満たしていく。
その瞬間、すべての恐怖も悲しみも、どこか遠くへ押し流される。
誰もが未来を信じる力を取り戻していた。
この日、各地で何十年かぶりに――
満点の星空が広がった。




