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竜が見た夢  作者: 無名の記録者
第11章 果てなき祈り
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第5話 響き渡る刻

 まばゆく、温かい白銀の光だった。

 かすかに漂うもやを、竜は口に含むようにそっと吸い込み、光へと溶かしていく。


 竜は傍らの温もりを見やった。


 光に包まれたその人は、顔こそはっきり見えない。

 けれど、竜にはわかった。


「……リュミナ」


 その名を呼ぶ竜の声に応えるように、光が晴れ、懐かしい姿がゆっくりと形を成した。


 柔らかく流れる長い銀髪。

 深い翠色の瞳。忘れるはずのない、その面影。


「ごめん、ヴェルゼオン……ずっと、待たせてしまったね……」


 リュミナは涙を流しながら、そっとヴェルゼオンの頭を抱く。


 胸の奥にはまだ、深く刻まれた痛みが微かに響いていた。

 それでも、長く暗闇に閉ざされていた心は今、光に満たされていた。

 安らぎが、痛みを静かに抱き寄せ、再会の温もりとともに溶かしていく。


 そう、約束は守られたのだ――リュミナが嘘をつくはずがない。


「いいんだよ…もう、いいんだよ……」


 ありがとう。

 竜はそっとその瞳を閉じた。


 光に包まれた竜は、ゆっくりと身を沈め。

 白銀の光に溶けて空へと還っていく。


 それは――討伐ではなく、永遠の救済だった。


 *


 祓いの光が大陸を包む。

 瘴気は竜とともに清められ、エルヴァント峰を覆っていた黒い霧は、一斉に晴れていった。


 山頂から立ち上る白銀の光の柱。

 それがゆっくりと消えたとき、空から光の粒が降り注いだ。

 柔らかな光を纏い、雪のように降り注ぐ。


 人々は誘われるように空を見上げた。

 あまりにも静謐で、誰もが時の流れを忘れ、目の前の光景に心を奪われた。


 そして気付く。

 その向こう、漆黒の闇に覆われた空に、何かが輝いている。


 小さな子供たちは無垢な瞳で首を傾げる。

 大人たちはすぐに、その輝きの正体を理解した。


「星だ…星が見えるぞ!」


 各地で歓声が上がる。


 涙を浮かべながら抱き合う人々の姿。

 光の粒はまるで祝福のように降り注ぎ。

 希望の温もりを世界に満たしていく。


 その瞬間、すべての恐怖も悲しみも、どこか遠くへ押し流される。

 誰もが未来を信じる力を取り戻していた。


 この日、各地で何十年かぶりに――

 満点の星空が広がった。

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