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竜が見た夢  作者: 無名の記録者
第10章 終焉の峰
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第5話 闇の前の灯火

 瘴気の嵐が窪地を覆う中、仲間たちは互いの目を見つめ合った。

 竜を前に立ちすくむのではなく、今、行動する者が必要だった。


 心の奥底で、渦巻くように恐怖と迷いが押し寄せる。

 竜を止めなければ世界は滅ぶ――それは誰もが理解していた。


 だが、もし救えるなら、傷つけずに眠らせる方法はないのか。

 胸の奥には、決して消えない迷いと微かな灯火が交錯している。


「……まだ、諦めるわけにはいかない」


 アレンは低く呟いた。

 声には緊張が滲むが、その奥に揺るぎない意志があった。


 フィオナも震える手で杖を握りしめ、アレンの言葉に頷く。


「リュミナさんの願い――私も、それを信じたい。竜を、傷つけずに救う方法を探したい」


 声はか細いが、意志の芯は揺るがない。

 胸の奥の迷いと希望が入り混じり、まるで心臓の鼓動のように震えている。


 ジークは唇を噛み、黙って二人を見つめる。

 やがて、低く、重々しく口を開く。


「……お前らのやりたいようにやれ。ただし、命は捨てるな」


 歯噛みする音が、瘴気のざわめきにかき消される。

 だがその言葉は、背中を押す確かな力となった。

 命を守りつつ進むべき道を示す、静かな覚悟の証だった。


「甘すぎる!」


 イゼリアは拳を握り、怒声を上げる。

 理想論だと切り捨てたい気持ちと、二人を止められないもどかしさが入り混じる。


 ナッシュは微笑み、静かに前へ進む二人を見つめながら言う。


「信じるぜ」


 その言葉は、支援の誓いであり、戦う覚悟の証。

 希望の灯火は、今まさにここで燃え上がろうとしていた。


 瘴気魔獣がずるりと立ち上がる。

 仲間たちは後方に残り、魔獣を抑えながら二人の進む道を見守る。


 心臓の鼓動が耳に響く。

 世界の終焉を告げるような最奥の咆哮に恐怖は深まるが、希望を捨てたくはなかった。


 すべてを護りたい――世界も、人も、竜も、そしてこの小さな希望も。


 驚きだった。

 掌に収まるものも、収まりきらぬものも、すべて失わせたくない衝動、抗いがたい願い――己の中に、こんなものがあったのか。


 アレンはフィオナに向かって掌を差し出す。

 フィオナはアレンを見つめ、その掌に視線を落とすと、自分の手をそっと乗せた。


 フィオナの手を握りしめる。

 自分たちが信じる希望のためなら、どんな困難も受け止める覚悟があった。

 だが胸の奥では、救いたいという強い願いと、止めなければならない現実が押し問答し、踏み出す一歩を震わせる。


 瘴気に絡め取られながらも、二人は最奥へ向かって歩き出す。

 希望と絶望、救済と破壊が入り混じる道のり。

 すべてが揺らぎ、すべてが迫る――胸の奥で恐怖と希望がぶつかり合う中、それでも二人は踏み出した。


 信じる光を胸に、前だけを見据えて。

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