第7話 焚き火に映る誓い
ベルハイムの街を出て初めての夜営は、新しい仲間が加わったことで、どこか張り詰めた空気に包まれていた。
もっとも、街で買い込んだ食材のおかげで夕餉は少し豪勢で、フィオナの腕前もあって、硬さは徐々にほぐれていく。
火を囲む輪に笑い声が混じりはじめた、その時だった。
「……そもそも竜が元凶なら、竜を殺せば瘴気はなくなるのでは?」
イゼリアの問いに、ぱちりと火の粉が弾ける音だけが返る。
竜。言葉にしただけで場の温度がひやりと落ちる。
「だが竜は……“恐怖の象徴”のはずだ」
ダリオスが低く応じる。
「では、瘴気は完全には消せないと?」
苛立ちを含んだイゼリアの声に、誰も即答できない。
瘴気の源。竜の存在。
誰も見たことがなく、誰も知らない。にもかかわらず、人々は怯え続け、瘴気と戦い続けている。
「……せっかくフィオナや聖導教会が浄化しても、消しても……どこからか湧いてきやがる」
ジークが唸るように言い、場はまた黙り込んだ。
やがてイゼリアは、“新参者だから”と夜番を進んで引き受けた。
仲間たちが眠りについた後、焚き火の赤に照らされるのは、ひとり槍を見つめる彼女の横顔だった。
アレンは浅い眠りの中でふと目を開ける。
焚き火越しに見えるその姿に、昼間槍が示した反応――あの時の感覚――が重なる。
あれは偶然なのか、それとも。
炎のゆらめきにイゼリアの金の瞳が光り、低く、しかしはっきりと声が落ちた。
「あの子を取り戻すためなら……そのためなら、かの竜をも滅ぼす」
その誓いは火の粉とともに闇に溶け、静かな夜に刻まれるようだった。




