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竜が見た夢  作者: 無名の記録者
第3章 遺跡の真実
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幕間 魔法の練習

「アレン、誰かに魔法を習ったことはある?」


 夕暮れの草原。

 焚き火を挟んで座ったフィオナが、短い休憩の合間に問いかけてきた。


 アレンは小さく首を振る。


「やっぱり……。基礎がなってないのに、よく実戦で使えてるよ」


 フィオナは呆れたように眉を下げつつ、少し楽しそうに笑った。


 横でジークが「俺もだな!」と元気よく挙手する。


「……だからこそ、この機会に教えてやってくれるか」


 ダリオスが腕を組んで腰を下ろす。

 弟子たちの姿を眺める目は厳しくもどこか柔らかい。


「魔法は、詠唱で魔力を外の属性に繋げるんです。火なら熱や爆ぜる力、風なら流れや斬撃……。省略詠唱もできるけど、精度が落ちたり暴発する危険もあるから、まずは正しく詠唱を覚えること」


 フィオナは手本を示すように、小声で詠唱を紡いだ。

 次の瞬間、彼女の掌にふわりと小さな光が生まれる。

 温かくて柔らかい、まるで灯火のような輝き。


「――ホーリーライト」


 ジークが目を丸くして前のめりになる。


「すっげ!俺もやってみていいか!?」

「どうぞ。でも、まずはアレンから。アレンは火が相性いいと思う。火の魔法だと――」


 フィオナが簡単な魔法を教えてくれる。

 促されて、アレンは深く息を吸った。


 アレンにとって魔法は、今まで直感の延長線上でしかなかった。

 戦場で必死に絞り出したものだ。

 だが、詠唱を意識しながら集中すると――確かに何かが繋がる感覚がある。


「――ファイアアロー」


 瞬間、空気が弾け、小さな火の矢がぱちりと生まれる。

 焚き火の端を焦がす程度の頼りない炎――だが確かに“魔法”だった。


 アレンは、ぐっと拳を握った。


「……何か、掴めた気がする」


 アレンが呟くと、フィオナは驚きに目を見開く。


「え、こんな基礎で……?」

「お前は……魔法の師を仰いだ方が良かったかもしれないな」


 ダリオスがぼそりと漏らす。

 アレンは反射的に振り向いた。


「俺の師匠は、師匠だけだ」


 アレンは静かに言った。その一点だけは譲れなかった。


 一瞬の沈黙。

 ダリオスの瞳がわずかに細められる。


「……勝手にしろ」


 厳格さを崩さぬ声音だったが、その横顔にはかすかな笑みが宿っていた。


 ジークも焚き火の明かりに照らされながら笑う。


「俺も師匠しかいらないや。怖いのは一人で十分だし」

「ほう……鍛錬が足りないようだな」


 ダリオスの低い声に、ジークが短い悲鳴を上げる。


 その横でフィオナが小さく笑う。

 アレンも、気づかぬまま口元を緩めていた。


 すぐ立ち直ったジークが、待ちきれない様子で身を乗り出す。


「なあ!俺もやっていいだろ!俺は風っぽいんだ!」


 フィオナは少し苦笑しつつ頷く。

 ジークは腕を突き出して勢いよく詠唱した。


「――ウィンドアロー!」


 次の瞬間、風が巻き起こるが、矢の形をとる前にばらばらと散ってしまう。

 突風に吹かれ、焚き火が大きく揺れた。


「うわっ、あっぶねえ!」

「……狙いが甘すぎる」


 ダリオスの冷静な一言に、ジークが肩を落とす。

 だが次の瞬間、散らばった風が再び集まり、小さな風の矢が一つだけ形を取った。


「おお……出た!」


 ジークは子供みたいに歓声を上げる。

 その顔を見て、フィオナも思わず笑みをこぼした。

~覚えておくと少し便利な魔法知識~

魔法について

・魔力は誰にでも少なからず流れている

・詠唱で魔力を属性に繋げ、現象として顕現させる

・省略詠唱は可能だが、暴発の危険あり

・武器と同時使用は高度で普通は難しい

属性の特徴

 火=攻撃、風=機動、水=補助、光=回復・浄化、闇=妨害

習得の目安

・初級は誰でも可能(火花や風など)

・中級以上は属性適性の差が顕著

・天才や熟練者は省略・高速詠唱も

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