第6話 逆転への一歩
次の第6ラウンドはレベル3のまま。配置数4。コインは敗北したので10。勝利した相手は11。HPは3対5。あと3回しか負けられない。
万策尽きたか……? 俺は自分の無力さに奥歯を噛みしめた。
だが、俺はまだ諦めていなかった。負けはしたが、相手の手の内は完全に読めた。耐久型のサイレンス構成。弱点は明確だ。火力がほとんどない。そして、回復役とサイレンス役のサポーターを先に落とせば、構成は瓦解するはずだ。問題は、どうやって相手の☆2ロックゴーレムの壁を突破し、後衛のサポーターを叩くか……。
HP残り3。もう、守りに入っている余裕はない。リスクを冒してでも、相手の弱点を突くしかない。
俺の脳裏に、一つの大胆な戦略が閃いた。アサシン。敵の後衛に直接飛び込む、暗殺者たち。だが、ただのアサシンでは火力が足りないかもしれない。ならば……メイジでありながら、アサシンの特性を持つユニット、あるいは後衛を直接狙えるスキルを持つメイジ!
「ミミ、次で決める」
俺は隣の少女に告げた。
「俺たちの全てを賭ける。奇策だ」
「き、奇策……?」
ミミが不安そうに俺を見る。
「ああ。『メイジアサシン』戦略だ。相手のサイレンスが発動する前に、後衛のサポーターを瞬殺する。そのための構成を組む!」
『Round 6 - Prepare Phase -』
《Player 774 (ジン) HP: 3 | Coin: 10 | Lv: 3 | Units: 4/4》
《Player 812 HP: 5 | Coin: 11 | Lv: 3 | Units: 4/4》
第6ラウンド準備フェーズ開始。HPはジン3、相手5。レベル3、配置数4。収入は俺が10、相手が11。
盤面には復活した☆2ロックゴーレム, ☆2ウィスプ, ☆2サンダーバード, ☆1スパークピクシーがいる。ベンチには☆1アクアスライム, ☆1ミストフェアリー。
「ミミ、相手は? 構成は変えてきてるか?」
「ううん!」ミミは首を振る。「たぶん、前のラウンドと全く同じ構成だと思う! ☆2ゴーレムと、サイレンスと、回復と、小さいメカ! こっちが勝てないと思って、油断してるんだよ、きっと!」
よし! 相手が構成を維持してくるなら、俺の奇策が刺さる可能性は極めて高い!
俺は決行を決意した。「メイジアサシン」戦略!
まずは資金作りだ。盤面の復活ユニットを整理する。☆2ウィスプは強力なメイジだが、サイレンス下では機能しない。将来のためにベンチに下げる。☆1アクアスライムは思い切って売却する。前衛の☆2ロックゴーレムも……売却だ!(+4コイン)
手持ちは14コイン! ベンチには温存した☆2ウィスプと、☆2サンダーバード、☆1スパークピクシーが残る。
俺はストアを見る。狙いはアサシンとメイジ、特に後衛を狙えるユニットだ!
【シャドウウィスプ(スピリット/アサシン/メイジ)☆1 コスト3】
【ブリンクフェアリー(フェアリー/アサシン)☆1 コスト3】
【スナイプフロッグ(アクア/アサシン/メイジ)☆1 コスト3】
【フレイムパピー(ビースト/ファイター)☆1 コスト3】
【アイアンタートル(アクア/タンク)☆1 コスト3】
来た! シャドウウィスプ、ブリンクフェアリー、スナイプフロッグ! まさに俺が求めていたユニットたちだ!
俺は迷わずこの3体を購入!(計9コイン)残り4コイン。
リロールする。残り3コイン
あと1枠……ストアに【サンダーバード】がいる! 購入(3コイン)。これで4体目のサンダーバードだ。あと2体で☆3だが……コインが足りない。ここまでか。
最終配置:盤面に☆1シャドウウィスプ、☆1ブリンクフェアリー、☆1スナイプフロッグ、☆2サンダーバードを配置! 配置数4を全てアタッカーで埋めた! 前衛はいない! 超々攻撃的、背水の陣だ! アサシン3体、メイジ3体。これで【アサシン(3)】と【メイジ(3)】シナジーが発動する!
ベンチには温存した☆2ウィスプと、☆1サンダーバード、☆1スパークピクシーが1体。残り0コイン。
「相手の人、構成変えてないよ! 油断してるんだ、きっと!」
ミミが少し興奮した声で言う。
『Combat Phase Start』
《Player 774 (ジン) HP: 3 | Coin: 1 | Lv: 3 | Units: 4/4》
盤面: ☆1シャドウウィスプ, ☆1ブリンクフェアリー, ☆1スナイプフロッグ, ☆2サンダーバード
ベンチ: ☆2ウィスプ, ☆1サンダーバード
シナジー: アサシン(3), メイジ(3), スピリット(1), フェアリー(1), アクア(1), バード(1)
《Player 812 HP: 5 | Coin: ? | Lv: 3 | Units: 4/4》
盤面: ☆2ロックゴーレム, ☆1サイレンスプリースト, ☆1メディックドール, ☆2ガードビット
シナジー: ゴーレム(1), タンク(2), スピリット(2), メカ(2), サポーター(2)
戦闘開始! 相手は前回と同じ、耐久サイレンス構成! ガードビットが☆2に進化している以外、変化はない。
相手のサイレンスプリーストがスキル【エリアサイレンス】を発動! 紫色の波動が広がる!
だが、その瞬間には、もう俺のユニットたちは動いていた!
【アサシン(3)】シナジー効果! シャドウウィスプ、ブリンクフェアリー、スナイプフロッグが戦闘開始と同時に相手の後衛――サイレンスプリーストとメディックドールの元へと跳躍する!
「なっ!?」
相手のオークが驚愕の声を上げるのが、今度こそはっきりと聞こえた! 油断しきっていた顔が、焦りに歪む!
サイレンス波動が届くよりも早く、3体のアサシンが相手のサポーターに襲いかかる!
シャドウウィスプが闇の刃でプリーストを切り裂き、ブリンクフェアリーが光のダガーでメディックを刺し貫く! さらにスナイプフロッグが毒の矢を放つ! 【メイジ(3)】シナジーで強化された魔法ダメージも乗っている!
サポーター系のユニットは打たれ弱い! 抵抗する間もなく、サイレンスプリーストとメディックドールが同時に光の粒子となって消滅した!
「やった……!」ミミが息を呑む。
サイレンスと回復を失った相手の構成は、もはやただの置物の集まりだ!
残ったのは☆2ロックゴーレムと☆2ガードビットのみ!
相手の☆2ロックゴーレムが、状況を理解できずに戸惑っている間に、俺の後衛に残った☆1サンダーバードがスキル【サンダーボルト】を発動! ゴーレムに直撃!
さらに、サポーターを仕留めた3体のアサシンたちが、返す刀でゴーレムとガードビットに襲いかかる!
「いけえええっ!」俺は叫んだ。
4対2! しかも相手の主力スキルはもうない! 一方的な蹂躙が始まる!
相手の☆2ロックゴーレムは硬いが、☆1とはいえアサシンとメイジ4体の集中攻撃には耐えられない! HPがみるみる削れていき、ついに砕け散った!
最後に残ったガードビットなど、もはや敵ではない!
相手盤面、全滅!
『Round 6 - VICTORY -』
《Player 774 (ジン) HP: 3 | Player 812 (オーク) HP: 4》
《Round Winner: Player 774》
勝った! 勝ったぞ! 相手のメタ戦略を、さらにその上を行く奇策「メイジアサシン」で打ち破った! HP3からの、劇的な逆転勝利だ!
相手のHPは残り4! ついに、俺がHPでリードした!
「やった……やったよぉぉ! ジンさん!」
ミミが涙声で、しかし満面の笑みで俺に抱きついてきた。
「ああ……! やったぞ、ミミ! 俺たちの勝ちだ!」
俺も込み上げる興奮を抑えきれず、ミミを強く抱きしめた。
俺は、まだ興奮冷めやらぬミミを抱きしめながら、しかし冷静に次のラウンドを見据えていた。相手のHPはまだ4残っている。油断すれば、すぐにまたひっくり返される。だが、俺はもう負ける気はしなかった。俺たちは、勝つための新たな戦略を見つけたのだから。この「メイジアサシン」戦略を軸に、さらに構成を練り上げれば……! ベンチには温存した☆2ウィスプもいる。次のラウンドが楽しみになってきた。