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岩崎先生×チョコレート②

 手のひらの上に乗る、ラップに包まれた陽菜ちゃんの試作品のチョコレート。


「チョコ様いらっしゃい。お名前書いておきましょうねぇ〜」


 手のひらの上に鎮座しているチョコを笑顔で見つめていると、横から


「岩崎先生、ご機嫌ですね。何かいいことあったんですか?」


「あっ、藤堂先生!」


 手のひらの上のチョコ様を、藤堂先生に見せてあげるように、手を広げてチョコを見つめていると


「岩崎先生、そのラップに包まれたものなんですか?」


 後ろから鴻上先生の声が聞こえた。


「あっ、鴻上先生、聞いちゃいますか?これ、陽菜ちゃんが、くれたんですよ。さと君が陽菜ちゃんのチョコの確保に行っちゃってって言ったら、僕にもくれたんですよ。マジで天使ですよねぇ。癒しですよねぇ。陽菜ちゃん。試作品って言ってましたけど、ツンデレさんだからきっとこれ、本命チョコですよ」


 手のひらのチョコを眺め語っていたら、藤堂先生と鴻上先生が


「藤堂先生、もらえなかったんですか?本命チョコ」


「いや、お昼一緒に行ったときにもらいましたけど」


「ですよね」


「試作品を本命チョコとか言ってる岩崎先生大丈夫でしょうかね?」


「いや、もう放置しておいて良いんじゃないでしょうかね」


「そうですね。ちょっとロッカー行ってきます」


「陽菜ちゃんのチョコ神隠しにあったら大変ですもんね」


「鴻上先生、それは勘弁してください」


 ん?なんか、鴻上先生と藤堂先生が楽しそうだなぁ。話聞いてなかった。何盛り上がってたんだろう?  いや、その前にこのチョコ様が溶けたら大変だから冷蔵庫に入れておこう。


「岩崎先生、この指示書にサイン入ってないですよ!もう何回目ですか!良い加減にしてくださいよ」


 坂倉看護師が、凄い勢いで医局に来て、僕を怒っているではないか! チョコ様待っててね。


「ごめんなさい。今すぐに書きますから」


 そして坂倉看護師に、色々とあれもこれもついでのようにご指摘を受けてなかなか解放してもらえないでいる間に、事件が起こるなんて思ってもいなかった。



 産科の片岡医師が、疲労困憊で医局に入ってきて冷蔵庫を開けて中を物色していると、ラップに包まれたチョコが、何やら書いてある紙の上に置いてあった。その紙の文字を読むと【良かったらどうぞ happy Valentine 陽菜】あぁNICUの子からだぁ。ふふっ、いただきます。疲れた時には甘いものだよなぁ。気がきく子だなぁ。今度お礼の差し入れしようかな。


 片岡先生は、ラップの包みを解いてでできたチョコをパクッと口に入れ味わった。その時、片岡先生を呼び出す内線が鳴り産科へ戻る。



「岩崎先生、今度サイン忘れあったら、先生だけ差し入れあげませんからね」


「えぇ〜、坂倉さまぁ。気をつけますからそんな意地悪言っちゃダメです」


「気をつけてくださいね」


 そう言って坂倉看護師は病棟へ戻っていった。癒しの陽菜ちゃんチョコ様を食べて元気をもらおう。冷蔵庫を開けてチョコを探す。


「あれ? 陽菜ちゃ〜ん」


「岩崎先生、冷蔵庫の中に陽菜ちゃんは居ないでしょ。大丈夫ですか?」


「鴻上先生、僕の陽菜ちゃんからの本命チョコが無くなってるんですけど」


「医局に伝わる神隠しか?気の毒にな。まぁ、諦めろ」


 鴻上先生は笑いながら自分のデスクに戻っていった。


「あっ、これは?どこにあるんですかねぇ」


【良かったどうぞ happy Valentine 陽菜】のメモを見せながら聞いた。一斉にみんな仕事をし始めた。なんでぇ〜!


 やっぱり医局には、神隠しが巻き起こる。


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