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本命チョコ×義理チョコ

「陽菜せんぱ〜い、おっはようございま〜す」


「悟、おはよう。朝から元気だねぇ」


「いつも通りですよぉ〜」


 いやいや、背中に羽が生えてふわふわ飛んで浮かれてるように見えるよ。今日はバレンタインだからきっとチョコレートを期待しているんじゃないだろうか? 悟、浮かれすぎ。


「真智先輩、おっはようございま〜す。あっ、弥生先輩、おっはようございま〜す。瑠璃せんぱ〜い、おっはようございま〜す」


「悟、休憩室にチョコあるから食べていいよ」


「うわぁ、真智先輩、神ぃぃ〜。ありがとうございますぅぅ。チョコちゃん、レート君、待っててねぇ。悟君がもうすぐいくよぉ〜」


 始まった。朝から疲れた気持ちになるのは気のせいだろうか?


「おはようございます」


 悟のテンション爆上がりの様子を見て後からこっそりと入って先輩達に挨拶をする。


「陽菜ちゃん、おはよう。ねね、もちろんあるよね?せ・ん・せ・いの本命陽菜の愛情込み込みの手作りチョコ。当然だけど渡すよね!」


 真智先輩、この脅迫めいたこの質問。って言うか決定事項になってるの気づいてますか?


「…………ハイ」


「陽菜、声が小さいけど? チョコ失敗しちゃったの?」


「いいえ、失敗してませんけど」


「じゃあ、なに?」


「真智先輩、なんか楽しそうですけど」


「そりゃあ、そうでしょうよ。見守らなくちゃいけないし、先行きにワクワクするし先生と陽菜のもどかしさにソワソワするし、今日は素敵な名目があるから色々と進展期待してるわけよ」


 真智先輩、心の声全部ダダ漏れですけど。病棟にはまだ藤堂先生との事は伝えていない。発表は藤堂先生に任せているから。今は内緒にしている。


「いやいや、ご期待に添えるかどうか」


「えぇ〜陽菜!添えるように努力しなさい」


「善処します」


 業務していても話題なったいるのはバレンタインの話題ばかり。先輩達のニヤニヤした視線を感じるのは気のせいだろうか?


 先輩達、何か企んでないでしょうねぇ? 私の横を通る時に、「頑張って〜」とか「ふふっ、幸せ者ぉ〜」とか「期待してるからね」と、声をかけてくる。その時ナースステーションに藤堂先生が顔を出した。


「陽菜ちゃん、おはよう」


「おはようございます」


 近くにいた先輩達が一斉に休憩室に入るのが見えた。どういう状況!? しかし、視線を感じる。さりげなく振り返ると、休憩室から先輩達がこっちを見ているのが見えた。


「藤堂先生、渡したいものあるんですけど、お昼休憩の時に医局へ行っても大丈夫ですか?」


「陽菜ちゃん、お昼ご飯一緒に行こうか」


「はい」


 タイミング悪くそこに岩崎先生がナースステーションへやってきた。


「えぇ〜、藤堂先生!陽菜ちゃんとご飯行くんですか?僕もご一緒させていただきます」


 尻尾がこれ以上のスピード出ないってくらい振ってるのが見える気がする。


「岩崎先生、医局にここのナースさん達からのバレンタインチョコレート頂いてるからお礼を忘れずにね!」


 あっ、藤堂先生、話を逸らした!それに気づいてクスクス笑っていると、脱兎の如くナースステーションを出ていく岩崎先生。


「それじゃあ、お昼にね。陽菜ちゃん」


 そう言ってナースステーションを後にする藤堂先生。そして休憩室から一気に私の横まで駆け寄ってきた先輩達。


「どうなったの?」


「陽菜、本命チョコの受け渡し方法は?」


 先輩達からの質問攻撃。ってか、弥生先輩、本命チョコの受け渡しって……。先輩達に解放され、休憩室にみんな用にタッパーにコロコロと練習で作ったチョコを入れて置いておく。【良かったら召し上がってください。happy Valentine 陽菜】って書いた紙を添えて置いておいた。


「陽菜、そろそろお昼行っても良いよ。午後から退院カンファ入ってるでしょ。先に行っておいで」


「真智先輩ありがとうございます。それじゃあお先にお昼いただきます」


「あっ、陽菜。ゆ〜っくり行ってきても良いからね。ふふっ。その後は、私とお話ししましょうね」


「ってか、午後から退院カンファなんですけど」


「陽菜ちゃん。待ってるだろうから、行ってあげなさい。ちゃんとチョコ持っていくのよ。そしてちゃんと渡すんだよ」


 この圧に勝てる人がいるのだろうか?


「わかりました。しっかり渡してきます」


「はいは〜い。やっとよねぇ。ふふっ」


 真智先輩のニヤニヤした顔を背に荷物を持ちナースステーションを出て医局へと向かった。



「失礼します。ナース矢崎です」


 そう声をかけて医局に入ると鴻上先生に声をかけられた。


「陽菜ちゃん、いらっしゃい」


「これ、お口に合うか分かりませんが良かったら、皆さんでどうぞ」


 そう言って、藤堂先生のチョコを作る時に、ナースステーション用と医局用に作った[皆様でどうぞチョコ]を手渡した。


「陽菜ちゃんの手作りチョコ? 俺もらっていっちゃおうかな」


「ふふっ、鴻上先生に任せます」


 鴻上先生と話し込んでたら


「楽しそうだね? お待たせお昼行こうか」


 藤堂先生が声をかけてくれた。


「はい」


 そう返事して藤堂先生と医局を出ようと扉に向かって歩き出すと


「陽菜ちゃん、ごちそうさま。みんなでいただくね」


 笑顔で見送ってくれる鴻上先生の声が背中から追いかけてきた。キッチンカーで買い物して社員食堂へ戻って奥の窓側の席に腰を下ろす。先に渡しちゃおうと決意して


「藤堂先生、これ……バレンタインのチョコもらってもらえますか?」


「ありがとう。陽菜」


「先生、病院ですよ」


「そうだったね。嬉しいよ。ありがとう。陽菜。俺はコレ以外のチョコはもらわないから安心して」


 そこまで考えてなかった。藤堂先生はNICU以外でも人気の先生だったって事、忘れていた。


「信じてますから大丈夫です」


 藤堂先生は笑顔で頷き、


「お昼ご飯食べようか。休憩時間無くなっちゃうから」


 藤堂先生は、私の渡したチョコの入った紙袋を大切そうに自分の傍に置き一緒にお昼ご飯を食べ始めた。


 休憩後、あれこれと先輩達からの質問攻撃が待っているとは思いもせず、藤堂先生とのんびりお昼を過ごしていた。



【休憩後のミニ物語】藤堂side



陽菜からのチョコレートをもらい医局へ戻ると


「藤堂先生、それ、誰からですか?」


 きっとわかっているはずなのに、わざわざ聞いてくる鴻上先生。


「ご想像にお任せします」


「はいはい。陽菜ちゃんからだよね。良かったね藤堂先生」


 そんな会話をしていると医局の扉が開き、産科のナースが入ってきた。


「あのぉ、藤堂先生、良かったらこれもらって欲しいんですけど」


 そう言ってどこかで買ってきたであろう包装された包みを差し出してきた。


「悪いんだけどそういうものは受け取れない。俺は好きな子からしか受け取らない。好きな子を不安にさせたくないし、俺も好きな子からのものしか欲しいと思わないから」


 下手に期待されても困るし、こう言うことははっきり言うことにしている。それが、お互いのためだと思っているから。それを見ていた鴻上先生が


「藤堂先生男前でしたよ。陽菜ちゃんも喜びますね」


「まだ秘密にしてくださいね。様子を見て発表しますから」


「ってか、俺にくらい報告してくれても良くないか?」


「近いうちに病棟発表前に、ふたり揃って鴻上先生にご報告させてください」



 医局で内緒話が繰り広げられていた。


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